第8話 レイラ監禁事件

  


 陸が愛する本命の彼女を想像するとき、妹でアイドルHINATAの友達上原美幸が言っていた言葉「私みたいな子供相手にしないと思いますよ」と言っていたように陸は大人の女性が好みであることが分かる。


 ……となると早川葵か、富田監督の妻で富田レイラという事になる。だが、葵は既にこの世にいないと、いう事はやはり富田レイラと長きに渡り交際が続いていたという事なのか?


 酷い話である「マリンモンスター」が映画化されて、それは長きに渡りシリーズ化されていた。そんな中2人は富田監督の目を盗み愛を育み、延々と長きに渡り交際を続けて来たのだろうか?


 ★☆

 それでは……レイラとはどのような環境で育った女性なのか、その生い立ちを辿って行こう。

 

 横浜育ちの彼女は横浜中華街や赤レンガ倉庫も徒歩圏内にある、そんな昔ながらの住宅が立ち並ぶ一角に両親と兄の4人家族の中ですくすく育った。


 そして……両親は横浜中華街で人気の中華料理店「四川王朝」を経営していた。


 

 横浜中華街の歴史は、1859年の横浜港開港から始まった。


 この時、日本と諸外国の「通訳」を行ったのが中国人だったレイラの先祖が通訳を行っていた。だから……先祖は中国人だったが、日本人と結婚した事でレイラはハーフ、クオーター、ワンエイス(八分の一)と薄れて、どの程度中国の血が混じっているか分からないが中国の血も交じっている事は確かだ。


 この様に代が変わり中国、台湾、日本と色んな血が混じっているのでレイラは、異国情緒あふれるエキゾチックな美人となった。

 


 やがて高校生になり中華店の手伝いに駆り立てられ手伝うようになった。

 そんなある夏の日、横浜中華街の両親の店「四川王朝」で、高校1年の夏休みに家の手伝いをしていたところ、大手芸能事務所の目に留まりスカウトされて「木下エイジェンシー」でモデルとして働くようになった。


 一方の富田は丁度その頃、次回作の幸薄い美少女を必死で探していた。その時にたまたま撮影所の近くの食堂に数人の取り巻き達と入った時に、コマーシャルに出演していたレイラにクギ付けになった。


「嗚呼……この子!この子!」


 富田監督はまだ若いながらヒーローものやバトル・アクションもの、更にミステリー作品など多岐に渡り手掛ける映画監督。


 どの作品も外れがない事でも知られ、日本の若き新鋭と持て囃されている監督だった。


 そんな時に次回作日本の有名作家三島康成のミステリー作品「宿命の塔」が映画化される事になった。


 劇中の薄幸の少女雪乃役が中々見つからずに苦労していた富田だったが、お昼の休憩時間に食堂のCMで見かけたモデルのレイラにクギ付けになってしまった。


 こうして……レイラおいて他に居ないと直感した富田は猛プッシュでレイラを口説いた。


 それからというもの富田作品の常連となっていたレイラは、どこか怪しげで異国情緒溢れるミステリアスなレイラに惚れ込んで、富田作品には欠かせない存在となって行った。


 この様な経緯から自然と結婚となって行った。


 ★☆

 それでも……そんな富田作品には欠かせない名女優が、何故富田作品に出演しなくなったのか?


 それは丁度レイラが28歳の時だ。恐ろしい事件が起きた

 レイラも徐々に大人の女性に脱皮したいと必死にもがいていた時期だったのだが、丁度その時他の監督からの映画依頼が来た。


 それは30前後の人妻役で濡れ場も少しある役だった。


 実は……この作品に出演した事が後々とんでもない事件に繋がって行く事となった。


 それが……人妻役で濡れ場を演じたのだが、レイラは元々モデルでスリムな体系かと思いきや、スリムな体系にたがわず何と胸だけはグラマラスだった。


 それが観客を刺激したのか一見するとスリムなのだが、濡れ場を演じた時にイメージと違うグラマラスな美しい姿態にクギ付けとなり、映画を見た観客の1人50代の独身男性がレイラのマンションに忍び込み監禁事件を起こした。


 仕事を終えて夜中にマネージャーに送ってもらい帰宅すると、疲れ切っていたので化粧も落とさず眠り込んでしまった。


 夜中にトイレがしたくなり目を開けると、激しい息遣いが耳元に聞こえて来た。起きてトイレに行かなければと思い目をこすり薄っすらと目を開けると、ギラついた中年が、顔擦れ擦れに近づいてギラギラ脂ぎった目でレイラを覗き込んでいた。


 だから……レイラは深夜に帰って来たのでその中年男も、強姦しようと侵入したが深夜だったので眠りこけてしまい、きっとレイラがトイレに行こうと目を覚ました少し前に起きてレイラを強姦しようとギラついていたのだった。


「キャ――――――――――――――――――――ッ!」


「お嬢さん静かにして下さい。さもないと刃物で美しい顔に傷を付けてもいいのですか?」


「何を…何を…するつもりなの?こんな事……こんな事……只で済む訳ないから……一体どこから入ったの?」


「ふっふっふ……ベランダが開いていたので……それでも……あの濡れ場シーンには興奮した。ふっふっふっふ僕にも……僕にも……拝ませてください😍🤪💛」


「イイ……イヤよ!大きい声出すから」


「そんな事言って良いのですか?折角の綺麗な女優さんの命顔に傷付けても良いのですか?早く早く僕の言い成りになりなさい。服を脱いで……」


「ゥウウシクシク(´;ω;`)ウッ…もうこんな事( ノД`)シクシク…止めてウウウッ」


「早く早くボタンを外しなさい。そうすれば手荒な真似はしない!」


「ウウウッわあ~~~ん😭わあ~~~ん😭」

 泣きながらワンピースを脱いだ。するとその50代の中年の男が一気にレイラに飛びついて来た。


 そこで……レイラはワンピースを力一杯振り回して目元目掛けてビュンビュン回して目に当てて相手の男から逃げようとした。


 運が良い事に……そのワンピースの布が目に命中した。

「今だ!」

 

 一気に部屋から逃げて玄関のドアを開けようとしたと、その時ギラギラした中年男に物凄い力で引きずり込まれ下着をはぎ取られ絶体絶命となってしまった。


「ギャギャ――――――――――――――――――――ッ!」


 その時こんな気持ち悪い男に最後まで行ってオモチャにされてはと考えて、考え抜いて出た最後の言葉。

「私のおじさん警察官だから……言うからね!」

 

 もうレイラは抵抗むなしく全裸にされて、中年男の一物がレイラに挿入寸前だったが、男は正気に戻り逃げて行った。

 こうして……レイラは改めて男の怖さとは、とてつもなく恐ろしいものだと痛感した。


 今回の一件でも分かるように、幾らセキュリテイ―が万全でも変質者や熱狂的なファンというものは堪えきれずに、どんな違法な真似をしてでも欲望を果たそうとする者もいるという事だ。



 レイラはこの事件以来精神的に大打撃を受けてノイローゼ状態が続き不眠症に悩まされている。

 たまたま富田監督にプロポーズされていたので、どんな事あっても夢を取るか、それとも……こんな危険な真似を犯してまで芸能界に居たくないので富田との結婚を取るかの、二社選択を行った結果後者を選んだ。


 こうして第一線から退き富田監督と結婚した。



 ★☆

 この事件は早速芸能界を揺るがす大事件となって新聞週刊誌が書き立てた。


「レイラさん監禁された時の状況を教えて下さい?」

「…………」

「部屋の中の状況はどのようなものだったんですか?」

「…………」

「危害は加えられたのですか?」

「いえ!何もありません。その男は……直ぐ帰りましたから……」

 余りしつこいのでレイラはハッキリと言ってやった。

(結局強姦されたか?聞きたいだけなんだろう!)レイラは怒りで一杯だった。


 ★☆

 事件を知った富田はレイラを心配して芸能界を引退する事を進めた。


 そして……あの事件以来富田はレイラをを起用しなくなった。


 それはそうだろう。大切な妻となる女性が、どんな凶暴な男とも知れない男と夜を無理矢理一緒に過ごさざるを得なくなるとは、ひょっとしたら無理矢理強姦されたかも知れないという事だ。


 でもレイラはハッキリ言った。


「絶対に最後まで行かなかった!」でもそれは事実。


 それでも……一時は精神に異常をきたすほどまで追い詰められていた。


 ★☆

 一方のHINATAは17歳でスカウトされて「マリンモンスター」でデビューしたが、既に20歳となっていた。最近は女優業が本業となりつつあるHINATA。


 そして……犯人が捕まらないまま早川葵が亡くなり既に3年が経過していた。


 HINATAにも彼氏と呼べる男性が出来た。イケメン俳優の島崎健斗だ。交際が始まって早1年、兄陸と陸の彼女も一緒で4人での行動が主だ。


 4人は軽井沢に出掛けた。だが、こんな時またしても陸の交際相手が殺害されてしまった。


「ええええ……エエエエエエエエェェエエエエエエッ!」


 犯人は一体誰なのか?


 陸の彼女を次から次に殺害する相手とは……。




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