第6話 陸の女性関係

 

 2024年7月初旬のある江ノ島・富士山が一望できる。 逗子の別荘で愛し合うカップルがある。


 逗子にある広々とした敷地内に琥珀色の古民家風別荘は、目の前に海が望める情緒漂う別荘だ。管理を任されている60代の夫婦はこのカップルの身を案じ心もとない。かといって……解決策など見付かろうはずもない。


 只々叶わぬ恋に身を投じる2人を見守る事しか出来ない。


「どんな事が有ろうと……絶対に離れたくない……私は例え……天罰が下ろうと……陸と離れることなど出来ない。…ゥウウッシクシク(´;ω;`)ウッ…危険な関係だという事は痛いほど分かっていても……それでも……この関係を終わらせることなんて出来ない。もっと……もっと……強く抱いて嗚呼💋💕💖……」


「俺もさ……沙織しか考えられない。愛している💕💓」


「嗚呼……どんな過ちであろうと……陸しか考えられない。もっと……もっと……強く抱いて陸……嗚呼……お願い……もっとよ💛💋ああああ」


 人目を忍んで愛し合うカップル。

 陸は結婚離婚を繰り返していたが、この沙織との関係は大学生の頃らずっと続いていた。


 陸と沙織は深い愛で結ばれていたが、両親の反対で交際すらまともに出来なかった。だが、陸は日本屈指の漫画家で長者番付にも名を連ねる超売れっ子漫画家。人目に付かないように、沙織との逢瀬の為にワザワザこの湘南の海が一望できる場所に別荘を建てた。


 この意味有り気なカップルは💑一目をはばかり隠れるように、この1分1秒も無駄に出来ない濃厚な時間を過ごしている。


 女中の多恵は長年に渡りこの陸に仕えているお手伝いだ。


「本当にお可哀そうに……ううっシクシク(´;ω;`)ウッ…それでも…どうする事も出来ない。ううっ(´;ω;`)ウッ…」


 ここでお分かりかと思うが?陸は長年に渡り1人の女性を愛していたことがお分かりだと思う。道ならぬ恋に苦しむ2人。


 家族の猛烈な反対でこのような関係が延々と続いていた。徐々に明らかになって行く真実。 

 


 ★☆

 それでは……15年前にシフトチェンジ。

 

 早川葵殺害事件には進展はあったのか?


 陸は6時から作家森田治との対談が、五重塔と満開の不二桜が並んで立つ東寺近くのレストランで対談があった。それなのに……5時頃嵐山のバーで陸は目撃されている。そして……対談ぎりぎりに陸が東寺近くのレストランにやって来た事も分かっている。東寺近くのレストランにやって来るまでの1時間の間に何があったのか?


 死亡時刻とされる2日前4月2日の夜6時から11時は陸は森田治との対談があったので無理だとは思うが、それでも…怪しい行動の数々に容疑が晴れない。

 

 陸が殺害して「野宮神社」の雑木林に置き去りにするには人通りも多いので至難の業だ。


 そう言えば……葵に以前彼氏がいて結婚目前の彼氏がいた事が分かったが、確か……名前が山下拓也という男で葵と同じ弱小劇団にいた男だが、今現在は舞台俳優をしながら運送会社で働いていた。

 

 こうして……その元彼氏の山下を当たる事にした山城と飯田だった。


 ★☆

 葵の元彼氏山下は現在30歳で、中野区のアパートに住んでいた。同じ中野区に弱小劇団「タンポポ」が有ったので中野区に腰を下ろしている。


 早速インターホンを押してみた。


 ”ピンポン“ ”ピンポン”


「ハ~イ」

 背のひょろりと高い男がにょっきりと顔を出した。


「警察の者だが……先日亡くなった早川葵さんの事で2~3聞きたくて……」


「嗚呼……聞きました。本当に残念でした」


「葵さんとは最近連絡取って居はりましたか?」


「嗚呼……「劇団タンポポ」を運営しているのが「芸能事務所タンポポ」ですから、同じ事務所という事で始終顔を合わせていました」


「以前、葵さんとお付き合いされて居はったんですよね?」


「はいそうです。中々売れないので僕の実家が福井でも有名な豆腐のお店なので、この際福井に帰って跡を継ぎ所帯を持とうという話までしていたのです。他にもお豆腐屋が経営している上品な豆腐懐石がいただける和食のお店も3件あるので、妹夫婦と力を合わせてやって行こうという話になったのですが、運良くマリンモンスターで準主役級の役をゲットして、葵が『もう少し待って』というので『1年だけ待とう』と僕は言いました。そんな矢先にあんな目に遭ってしまったのです。( ノД`)ウッウウウッ……」


「それは……お気の毒でしたね。ところで水を差すようで悪いんですが……葵さんが漫画家田宮氏と出来て居はったんは存知ですか?」


「嗚呼……あいつはそう言う女なんです。負けず嫌いって言うんですかね。どんな事をしても上に上がりたいみたいで……それでそんな関係になったんだと思います」


「最後に質問ですが、葵さんは誰かに恨まれているような事は有りませんでしたか?」


「……そうですね。葵は勝ち気で役を奪う為だったらどんな事でもするような子でした。例えば僕と付き合う前、事務所の社長とも関係があったと聞きます。だから事務所のタレントから非難されていました。折角自分が役をゲットしたのに社長とそんな関係になり無理矢理役をむしり取った事がありましたから……」


「最後に……もう1つだけ……犯人に見当が付きますか?」


「……そうですねぇ?例えば……こんな事がありました。それは……『マリンモンスター』の原作者の田宮氏の彼女らしき女性から凄い勢いで脅されていた事は聞いています。結局田宮氏とも男女の関係になり、それがバレて田宮氏の彼女が暴れて電話して来たのだと思います」


「電話の相手は誰だったのですか?」


「それが……分からないのです」


「相手が分からなかったら対処できませんよね?誰でしょうか。田宮氏の本命彼女は?」


「そうなんですよね?聞いた所によりますと、どうも……人妻らしいのです。相手というのが、マリンモンスターの監督夫人だというのです。あの田宮氏色男なので打ち合わせで監督宅に入り浸っている内に、深い関係になったのだと葵が言っていました」


「ありがとうございました!それでは……」

 こうして……山下宅を後にした2人は今度はその足で監督邸に向かった。

 新進気鋭の若干40歳の富田監督だが、奥様はモデル出身の超美人と聞いている。


 世田谷区の閑静な住宅街に到着した山城と飯田は早速インターホンを押した。


 ”ピンポン” ”ピンポン”

 すると……島屋のコマーシャルに出ていたモデルレイラが姿を現した。

(嗚呼……富田監督の奥様になっていたのだ)

「嗚呼……警察の者だが……先日殺害された早川葵さん殺害事件の事で話を伺いたくてやって来ました」


「はい!どうぞお入り下さい」


「それでは……単刀直入に質問させてもらいます。レイラさんは漫画家田宮氏とお付き合いされて居はったんですか?」


「それは……マリンモンスターの映画化で家に顔を出されていたのは事実です。だから家族ぐるみの交際はもちろん御座います」


「イヤイヤ……あなた……生前の早川葵さんに凄い剣幕で電話なさったのではありませんか?」


「いいえ!全くその様な事は御座いません」


「噓はいけません噓は……偽証罪に問われますよ。正直に答えてください」


「それは誰かの間違いだと思います。確かに……田宮さんは素敵な方ですが、私とはそんな関係なんて全くありません」


 じゃあ葵の携帯に嫉妬で暴れて電話をして来た相手は一体誰だったのか?2人は困り果てて顔を見合わせて不審に暮れている。


「ご主人様と田宮氏とは何でも話せる間と聞いておりますが、それでは……田宮氏の本命彼女は一体誰だとお思いですか?」


「……主人からチラッと聞いた話ですが、妹さんのお友達と深い関係にあると聞いた事は有ります」


「その妹さんのお友達の名前は誰ですか?」


「そこまでは……」


「嗚呼……そうですか。分かりました。失礼します」

 こうして……富田邸を後にした。山城と飯田だった。


「それにしても……田宮氏の女性関係は派手ですね。でも……あのレイラさん絶対に本心を話していませんね。な~んか……隠し事をしている感がぬぐい切れません。あの……怪しい目つき絶対に何かありますって?」


「…………」

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