教科書とあなたの名前

プロローグ

キャラクター

堀越　満（ほりこし　みちる）15歳

名家堀越家の次期当主。少し自己中心的な性格をしている。弟の呼是に嫉妬する素振りも度々見受けられる。

堀越　呼是（ほりこし　こぜ）14歳

満が遅生まれ、呼是が早生まれなので同じ学年になった満の弟。

静咲　陽奈（しずさき　ひな）

類稀な美貌と才能の持ち主だが、簡単に心を開かない。実はただの人見知り。

波倒　凛菜（なみさか　りんな）

運命の人を探しているというロマンチストだが、普段は極端な程の実利主義者。

遠波　証紀（とおなみ　しょうき）

面倒見が良く誰にでも世話を焼く。だが、怒ると怖い。

瀬川　美佳（せがわ　みか）

小さなころ主婦に憧れてから今も家事やヘアメイクなどを嗜む。ショートカットにしているので、学校に来ると陽奈や凛菜の髪をいじっている。

小日見　天音（こひみ　あまね）

今回の被害者。呼是に想いを寄せていたようだ。

　私たちは、いつも一緒、とまでいかなくても、いつでも一緒にいようとした。小さい頃は、それで良かった。でもだんだんと離れて行くのは必然だったのかもしれない。満がフルートのレッスンで来れない日が多くなっても、面倒見の良い証紀が妹に勉強を教えに早く帰っても、陽奈がインフルになってしばらく来なくても。詩で賞を獲った凛菜が全国大会に行っても、バレー部の私が練習試合に行っても、いつでも。

そんな私たちの関係は、このままで良かったはずだった。私が壊しさえしなければ。

「呼是。あなたが好き。ずっと、好きだったの。」

教室で、呼是に想いを打ち明けた私の頬を、恐怖に近い冷たさの雫が伝った。

少しまごまごした呼是は辛そうな、でも嬉しそうな顔を私に向けて。

私は彼の手を取って。

ゆっくりと、二人が近づいていく。

呼是が幸せかはわからない。けど、私のエゴで押し切ったこの状況なら、私は幸せになったって良いじゃない。

ガンッ

途端に、頭に強い衝撃が走った。

「？・・・呼是？」

ほんの少しで触れそうな距離の呼是の顔が揺らぐ。地面が不意に近づいて、ハエ叩きのように私の身体を容赦なく打った。

「・・・天音。天音！」

呼是の声が耳に届いた。それで、終いだった。