第19話 休職命令 3
東亜共和国首都
連合軍本部人事局人事局長室。
そこに1人の男が
「どういうことだねフォスター君!」
男は局長室で座ったままのフォスター大佐を
「どうしましたか?レイガー閣下。突然怒鳴られましても一体なんのことか…」
フォスターは、困ったように海軍幕僚のレイガー大将に顔を向ける。フォスターの表情はまるで何が起きたのか分かっていないように見えるが…。
「とぼけるのも大概にしたまえ!ティルエール・クロアベルの休暇を認めただろう!」
レイガーは執務室の机をドンと叩いた。
「休暇?失礼ですが閣下、私が出したのはあくまで休職命令です」
「
レイガーはティルをブルックヤードに閉じ込めようとしている勢力の1人であり、彼女が短期間でもブルックヤードから離れることを良しとは思わない人物だった。
「キサマ…。あまり
「そこまでにしてあげてください。クロアベル大尉への休職命令を依頼したのは私ですから」
声の主に振り返ると1人のハイエルフの女性が扉を開けて立っていた。
「…エレーナ・ノルマン」
「ごきげんよう大将閣下」
ノルマン大佐は許可を得ずにそのままレイガーの前へと歩み寄った。
「実は情報部の方に垂れ込みがあったようでしてね。ブルックヤード泊地に不審な点アリ…と」
「不審な点だと?一体なんだ」
「さあ?詳しくは教えてもらえませんでした。たださわりを聞く限りだと確かに無視できない事情のよう。我々が動かざるを得ない事情がね」
その言葉にレイガーは苦虫を噛んだような顔を見せる。
「キサマが動くのか?」
「私自身は動きません。あくまでさわりの話ですから。ただ……」
ノルマンは小さく微笑みながら答えた。
「どうもあの泊地にはちょうどオオカミがいるようなので」
その言葉を聞いた瞬間にレイガーの表情はスンとなくなった。
「何をする気だ?」
「何もしませんよ、私は。ただ泊地の人員を空っぽにしてしまえば彼も調査しやすいのではないかと気を利かせただけです」
ノルマンは細い目と小さな微笑みを向けながらレイガーの顔を見上げる。
「今回の件、何か問題がございますか?」
レイガーは何も言わずにそのまま部屋を出て行った。すると椅子に座ったままのフォスターが「ふぅ」とため息を吐いた。
「助かりましたぞ。あのご老人を1人で相手するのは正直酷なもので」
「頼んだのはこちらだ。助け舟ぐらい遠慮なく出すさ。それよりも
「貸し一つですぞ?」
「分かってるさ」
ノルマンはそう言ってそのまま人事局長室を出た。
「舞台は整えた。いい仕事を期待するぞ、シンイチ」
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