第7話 ブルックヤード泊地 4
夜の司令官執務室に「司令官」ではない将校服を着た少女が居座っていた。名前はティルエール・ロワ・クロアベル、種族はハーフエルフ、所属は連合海軍第118哨戒隊、階級は大尉。司令官が任命されていないこのブルックヤード海軍泊地において彼女こそが主人である。耳を除けばヒト族の16歳の少女と同様の姿見をしている彼女だが、泊地の主人らしく堂々とした貫禄で椅子に座っていた。
そんな彼女が連合軍本部向けの書類や上層部宛の嘆願書を書いていたところでコンコンと扉が叩かれた。
「入りなさい」
「失礼します」
すると2人の男が入ってきた。そのうちの1人はこの泊地の整備員である桑田だ。
「お客さんの様子はどうだったかしら?」
「
「シェールで色々あったらしいからね。まあ、本当に何かあったのか怪しいのだけれど」
それから一拍置いて桑田に改めて向き直った。
「アンタから見てアレはどう見えた?」
「そうですね……。正直怪しいと思えば怪しそうですが、怪しくないと思えば特に気にならないって感じでしょうか?俺からは判断できないです」
「そう。リラック、アンタから見てどう?」
リラックと呼ばれた男は「そうですね」と一拍置いてから続けた。
「私も同様の見解です。数日仕事ぶりを見てからでないと判断が難しいです」
それを聞いたティルは「そう」とだけ言って窓の外を見た。連合軍の勢力圏の中で南方にある無人島の泊地。石油石炭などを扱えるほど規模がデカくないため比較的運搬性にも熱効率性にも
「お偉いさんがた、大尉のこと、本当に飼い殺す気でしょうか?」
桑田の疑問の言葉に「どうでしょうね」と返す。
「今まで見向きもしなかったくせに、ここに来て突然職員派遣ときた。どういうやつが来るのかと思って人事局に問い合わせたら何が返って来たと思う?黒塗りの履歴書よ。あまりにもあからさま過ぎて逆にツッコむのを忘れたほどだわ」
呆れたように、しかし同時に疲れたようにティルは失笑する。
「優秀な事務員であれば、まあいいんだけども、いったいどこの誰の息がかかった奴なのか判断できないのは辛いわね……。余計なことしてこなければいいのだけど……」
リラックが「どうしますか?」と尋ねると「しばらくは仕事ぶりを見るしかないでしょ」と笑って答えた。
「何もなければそれでいいのよ。何もなければ。そう、今までと違って人手が1人増えただけよ……」
そう呟くティルの表情はどこか
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