第42話 過去の亡霊

ユーリと一緒にミシマ分室の外に出るとミットフィルさんとミューさんが待っていた。私は笑顔でミットフィルさんへ会釈をした。


「何何、ミットフィル。副隊長が連絡員なんかしてて良いの?それとも違う目的があるのかな?」


 ミューさんがミットフィルさんのことを軽く睨みつけた。


「副隊長!そうなんですか?」


 ミューさんはキッと私のことを睨んだ。おお、ミューさんはミットフィルさんのことが好きなのか…?


「いえ、今回の強襲は極々少人数で行うとの事で私はサポートに回るので万全を喫してお迎えにあがりました。」


 なーんだ。ちょっと残念…


「少人数って?何人?」

「はい、サーラ隊長、ユーリさん。あとマムという猫人族の3名と聞いています。」

「ミットフィル、ダメだ。ナルミも入るよ。」


 ミットフィルさんは大きく頷いた。


「わかりました。ではナルミさんにも加わっていただきます。あと私も参加します。サポートにはミューが当たります。これでよろしいでしょうか?」

「お、おう。話が早いね…」

「はい、サーラ隊長からは『ユーリがミーシャとどう向き合うのか?でメンバーを変える』と言われています。ちょっと意味がわからないのですが…」


 ユーリが私をちゃんと相棒として頼ってくれているとの実感が私の心を満たしていた。


「うん、サーラの意図はわかった。ナルミは一緒だ。」


 ユーリはもう一度言うとミットフィルさんを即した。


「よし、早く行こう。クラッシャーデビルが怒り出しちゃうからね。」

 



 

「思ったより早かったわね。」


 ミットフィルさんに案内されたのは王都の外れにある商館だった。そんなに大きな館ではない。


「サーラ。何人いるの?」

「報告だと5人。」

「まあ、そのくらいか…」

「二手に分かれようと思う。私とミットフィル、マムは正面から。あなたとナルミさんは裏手から。今から半刻後、太陽がのぼり始めると同時に突入。この5人で抑えてしまうわよ。」

「わかった。仮面の男をどう攻略するか?がポイントだな。あまり無理しないで会敵したら皆が合流するのを待つ。」


 ユーリはサーラさん達に人数分の通信機を渡す。


「マッパーも揃えたかったんだが…」


 ユーリは一台のマッパーをサーラさんに渡した。


「いえ、充分よ。」


 サーラさんはマッパーを受け取りながら答えた。そしてサーラさんはユーリを見つめた。


「ユーリ、気をつけて。ミーシャ…。いえ、何でもないわ…」


 私はユーリとサーラさんの思いを測ることはできない。けど…


「うん、サーラも。」


 私達はこうして強襲のために配置についた。



 

 

 通信機からサーラさんの声が聞こえて来た。突入、1分前。カガリさんがすでに空間認識魔法を妨害している。マッパーによると敵は5人。3人が2階の一つの部屋で、2人が1階の正面玄関付近に固まっている。

 サーラさんから通信が入る。


「ユーリ、ナルミさん。2階は任せる。では行くわよ。」


 私はクロスガンに魔力を込めて石弾を作り出すと裏口の扉に叩き込んだ。扉が弾けとぶ。すかさずユーリが中に飛び込み、安全を確認した。


「ナルミ。クリアだよ。このまま、2階へ走るよ。」


 ユーリは刀を抜いて階段を駆け上がった。私はユーリの後ろに続く。


「あの部屋だ!」


 私は再びクロスガンに魔力を込めて部屋のドアにぶち込んだ。ドアが吹き飛ぶ。ユーリが飛び込もうとしたが躊躇して一旦退く。ユーリは刀に魔力を込め直した。凄まじい魔力量。刀が鈍く発光した。ユーリのただならぬ気配に私も気を引き締め直す。それは突然だった。


「!」


 ユーリに向かって振り下ろされた剣撃は凄まじい威力をひめていた。その攻撃をユーリは避けきれない。刀で受け止めていた。ユーリは受け止めた剣を魔力で弾き飛ばそうと刀に力を込めたが、それを『仮面の男』は受け流した。ユーリが力を逸らされて体勢を崩した。危ない!仮面の男の剣撃がユーリに迫る。


「ユーリ!」


 私はクロスガンのトリガーを引き、光弾を乱射した。


「あ、当たらない…」


 私の攻撃はクロスガンによる無数の光弾の乱射だ。威力は弱いが絶え間のない連続攻撃だ。仮面の男は私の攻撃をことごとくかわす。だが、その間にユーリは体勢を整えていた。私も一旦ユーリの側へと寄った。クロスガンを構え直す。


「ほほほ、ユーリじゃありませんか?お久しぶりですね。」


 仮面の男の後ろから小太りの男が声を掛けてきた。


「ニュークロップ!!」


 ユーリは叫ぶと刀をニュークロップに向けて構え直した。


「やれやれ、あなた達が無茶をするから猫人族を任せようとしていた人材が死んでしまいました。」


 ニュークロップが指差した先には私の光弾を受けた男が死んでいた。


「はあ、アルバルトン家へ入り込みたかったのですが、どうやら計画が露呈したようですね。」

「魔道具はどこ?」

「そこの棚にあります。計画がダメになりましたので、もう私には必要ありません。差し上げますよ。でも、ユーリ。あなたの命もここで貰い受ける。」


 ニュークロップはそう言うと仮面の男の後ろへと下がった。


「ミーシャ。ユーリを殺してしまいなさい。」


 ニュークロップは窓に近寄ると風魔法を放って窓を破壊して外へと飛び出した。


▪️▪️▪️▪️▪️▪️▪️


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