第39話 操り人形
応接室にはサーラさんとミューさんがすでに戻っていた。
「如何でしたか?」
ミューさんが私達に聞いた。
「はい、マッパーで屋敷の隠し部屋を把握しました。何物か?が潜んでいます。」
「そうですか。ユーリ様がおっしゃっていた食堂の地下ですが私の見立てではオートマター的な物が置かれていたのではないかと思います。」
サーラさんが頷いた。
「この子は魔術士なのに魔力を使った物体操作が得意なのよ。」
「はい。あの部屋からは物体操作に特有な魔力の流れがありました。人形?みたいな物が置かれており、魔力で操作されていたのではないかと…」
古びた屋敷に人形!!怖すぎる!!
「うーん。どうしようか?壁をぶち破って隠れているやつらをやっつけちゃう?」
「ふん!いつもユーリは短絡的ね。」
「何おーー。」
「まあまあ。二人とも。一度、グレイ様に相談してみましょう。ね?」
ユーリとサーラさんはしぶしぶ頷いた。
「それじゃあ、早速。グレイ様にお話を聞きに行きましょう。」
ミューさんは立ち上がると皆を即した。
「わかったわ、ミュー。ユーリ達も行くわよ。」
サーラさんはドアに向かった。と、ドアが急に開かれた。そこにはマムが立っていた。
「グレイ様とお話がしたいので取り次いでもらえるかしら?」
「グレイ様はもう就寝されました。今日はもう取り次ぎはできませんにゃ。」
サーラさんはニヤッと笑うとユーリにマッパーを見るように言った。
「うん、グレイ様はまだ寝てないようだね。」
「聞いての通りよ。そこを退きなさい。」
ブワッとマムの後から殺気が込められた。そっとドアの後を覗いてみると…。たくさんの目が不気味に光っていた。サーラさんはロングソードを抜いた。
「ユーリにサーラか!わたしでは勝ち目はないにゃ。」
マムはそう言うとドアを閉め、気配を消した。
「ユーリ、たくさんの目が光ってた!お、お化けじゃないですよね…」
「ああ、あれは猫型の獣人だね。マッパーに反応してたのはあいつらだね。どういうことかな。まあ、先ずはグレイ様に話を聞くのが先かな?」
ユーリはそう言うとドアを開けようとした。
「あれ?開かないなあ。」
「本当ですね?」
「はあ、この程度で閉じ込めたとは思わないでよ。」
サーラさんはロングソードを扉に叩きつけた。魔法によって強化された扉はロングソードを弾いた。
「くっ。ならば!」
サーラさんは再びロングソードを今度は右手に持って気合い一閃、扉に叩きつけた。
バコン!
サーラさんは魔法によって強化された扉を物理的な力によって粉砕してしまった。お、恐ろしい…
「こ、これはお化けよりも怖いかも…」
ミューさんが隣でコクコクと頷く。ユーリが扉に近づいた。
「!」
私にはユーリの動きが神技に見えた。扉の外からユーリを狙った鋭い剣撃を顔を背けただけで避けたのだ。そしてユーリはカウンターを放った。ユーリが鞘から抜き放ち、敵に放った刀による一撃は敵の身体を真っ二つにしていた。
『カシャン』
敵は軽い音を立てて崩れ落ちた。
「に、人形?」
「魔糸による操り人形です!古い魔法です。気をつけて!」
ミューさんが警告した。地下にあったのはこれか…
1mくらいの大きさの人形が不意に現れて剣を振るった。こいつら力が強い。私は一旦間合いを取るとクロスガンを構えて人形に斉射した。
「ふえー。魔法障壁!」
クロスガンから発射された光弾は人形に届く前に見えない壁に阻まれて消えた。
「ならば!」
私はクロスガンにより多くの魔力を注ぎ、大きな光弾を人形へ叩きこんだ。
『ガツン』
人形の胸な大きな穴が空き、人形は後ろに弾け飛ぶ。後ろで魔糸を操っていた猫獣人が驚いた顔をした。しかし、人形は直ぐに立ち上がった。猫獣人がほくそ笑む。
「皆さん、この人形は動かなくなるまで破壊するか、魔糸を切断しないと動き続けます。」
ミューさん、よくそんな事を知ってるなあ。
ユーリとサーラさんはそれを聞くと人形につながっている魔糸を切断はじめた。人形を操れなくなった猫獣人が慌てていた。はあ、あの二人はすごいな。ユーリの踊るような体捌き。サーラさんの的確で鋭い剣撃。いかんいかん。見惚れている場合じゃない。
「朧流円舞。」
私は魔刀を抜くと流れるように人形の剣をいなしながら途切れる事のない流れるような攻撃で魔糸を切断していく。
朧流の極意は"円"にある。途切れる事のない連続性のある攻撃と同時に敵の攻撃を"流す"ことによる防御だ。私は朧流の免許皆伝を受けている。朧流では王都で10番目くらいには強いだろう。
とは言っても、あの二人には遠く及ばない。本当にどうなっているんだろ?
ユーリは3体の人形を相手にしていた。3体の人形から繰り出される剣撃を見切り、紙一重でかわし、返す刀で魔糸を切断する。
「ふう。」
ユーリが一息つき、身体を起こすと3体の人形はバタっとその場に倒れ伏した。
「どう?まだやる?」
カサカサカサ。気配は相変わらずわからないが、猫獣人がこの場を離れていった。その代わりに嫌な雰囲気を纏った物が近づいて来たのがわかった。
その嫌な雰囲気の物はサーラさんに破壊された扉をさらに吹き飛ばし、部屋の中に入ってきた。
▪️▪️▪️▪️▪️▪️▪️
お読みいただきありがとうございます!これからもよろしくお願いします。
★や『フォロー』をいただけるととても嬉しいです。
気に入っていただけましたら是非、評価の程をよろしくお願いします。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます