猫人族
第37話 お化け…怖い、
「この依頼は断れないですよ!!」
やけに強気なヨームさん。嫌そうな顔で宙を睨んでいるユーリ。
「う、だってサーラに会いたくない…」
「それはユーリさん達が悪いでしょ!心配して無かったのは室長だけですからね!」
カガリさんとアカネが横でそうだそうだと頷いていた。う、多勢に無勢…。
「室長は『ユーリ達が死ぬわけないじゃん。ははは』と言ってました。」
「お、室長はわかっているねー。」
「そう言う事じゃありません。絶対にこの依頼は受けてもらいます!」
ユーリは私の方を力なく見た。まあ、仕方ないのではない?私はユーリに頷いた。
「わかった。わかったよ。やるよ。」
ヨームさんの勝ち誇った顔、対してユーリは情け無い顔をしていた。
「おほん。今回は親衛隊のサーラ殿と共同で貴族の屋敷の警護に当たってもらいます。」
話はこうだ。ある貴族がある屋敷を購入した。その屋敷は築200年。石造の堅牢な建物だった。
貴族は屋敷に引っ越したのだが、1週間もした頃から奇妙な事が起こりはじめた。誰もいないはずの地下の部屋から物音が聞こえたり、淡い光が廊下を漂っていたり…。話声が聞こえたり…。
そして護衛の任務に就いた騎士が突然に消え失せるという事件が起こり、貴族もこの問題に向きあわざるを得なくなった。
「何でサーラと私達に護衛任務の話が来るのよ?」
「貴族がアルバルトン公爵家の継承権3位のお方だからです。ある程度身分が高く、この案件に取り組めそうなのがミシマ分室と親衛隊だったということなのでしょう。あと、護衛には女性がご希望だそうです。」
うーー、ますますやりたくない。貴族様は苦手なんだよなあ。というユーリの心の声が聞こえて来た。
私は別の意味でこの任務はやりたく無かった。お、お化けじゃないよね…。私、お化けと酸っぱいピクルスだけは苦手なんだよね。お化けは恐怖の対象と言ってもよい。
「まあ、わかったよ。犯人はお化けだな!私が刀でぶった斬ってやろう。」
お、お化け?違うよね!ユーリ!
「ね!ナルミ!」
「ひーー!」
「び、びっくりした。どうしたの?」
「な、何でもありません。」
「それでは任務は明日から。こちらが地図です。夕方にはこちらに出向いてください。」
◇
その日の夜。私達はそれぞれのベッドへと入る。
「じゃあ、おやすみ。ナルミ。」
「はい、おやすみなさい。」
私は目を瞑ったが先程のヨームさんの話が頭の中を駆け巡った。
「お化けなんていない、お化けなんていない。」
考えれば考える程に怖くなる。天井の模様が人の顔に見えて来た。う、う、怖い…
「ユーリ。起きてますか?」
「うん?何?」
「一緒に寝ても良いですか?」
「良いけど…。どうしたの?」
私は枕を抱えるとユーリのベッドへと潜り込んだ。
「私、お化けが苦手なんです…こ、怖くて…」
「何だ。そんな事か。よし、私がギュッてしてあげよう。」
ユーリに身体を抱きしめられた。あれ?何だかとっても安心感。
「ふふふ、ナルミって子供みたいね?あれ?ナルミ?」
私はユーリの問いに答えられなかった。なぜなら私は安心感からすでに爆睡していたからだ…
「ふふふ、ナルミはしょうがないねえ。」
◇
「こ、こ、この屋敷ですか…?帰りましょうか、ユーリ。」
夕方、ユーリと私は貴族様の屋敷に来ていた。うー、何だか不気味な屋敷だなあ。
「よし、ナルミ。行くよ。」
ユーリは屋敷の門番に話しかけた。
「あの、ミシマ分室の者ですが…。」
「はい、お待ちしてました。こちらにどうぞ。」
覇気のない門番に屋敷の応接室へと案内された。
「サーラさん。どうも、こんばんは…」
応接室にはすでにサーラさんと小柄な女性騎士が待っていた。
「この間はご心配をおかけしました。」
私はぺこりと頭を下げた。
「ふん、バーサクデーモンからは謝罪がないようだけど…。」
「サーラ、あなたは私の事が心配だったの?」
「はん!心配なんてしてないわよ!」
「じゃあ、謝る理由が無いな。」
サーラさんはすごい顔をしてユーリを見ていた。それに対して勝ち誇ったユーリの顔。お願いだから仲良くして…
「あ、あの。私はミシマ分室のナルミ・ジェイド中級騎士です。そちらの方とは初めてですので、自己紹介いただけると嬉しいです。」
この小柄な女性もユーリとサーラさんのやり取りを見てオロオロしていた。そして、私の言葉に突破口を見出したのか、元気に答えた。
「私は近衛騎士団親衛隊のミュー・モリナ中級騎士です。今回はよろしくお願いします。」
「こちらこそ、よろしくお願いします。サーラさんもよろしくお願いします。」
サーラさんはユーリから目線を外すと私に話かけて来た。
「ナルミさん。ミットフィルがあなたの話ばかりするのよ。親衛隊に必要な人材だって!私もあなたの力量は認めているのよ。どう?ミシマ分室でユーリの相手するのも疲れるでしょ?この仕事が終わったらうちに来ない?」
「何言ってんだ!サーラ!ナルミは私のモンだ!誰にもやらん!」
「ふん!あなたに付き合っていたら身体が持たないわよ!」
ぐぎぎぎぎ!
ユーリとサーラさんが睨みあう。その時、ドアがノックされ、一人の女性が応接室に入って来た。
「皆さん、お揃いかしら?」
「「はい!」」
ユーリとサーラさんは一瞬にしてよそ行きの顔になるときれいな敬礼をしてみせた。なんだかんだ言ってこの二人って息ぴったりじゃないか??
「私はこの屋敷の管理者グレイ・アルバルトンです。親衛隊のサーラさん、ミシマ分室のユーリさん。お噂は予々お聞きしてます。今回、あなた方に来ていただいた理由は聞いていると思います。警備の方法などは一切をお任せします。必要な物や事がありましたら、こちらのマムにお申し付けください。」
私はびっくりした。グレイ様の影に小さな猫の獣人が控えていたからだ。気配を感じなかった!
「それではお願いしますわね。」
グレイ様はそう言うと部屋を出て行った。マムもその後に続いた。
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