第35話 宴会
夕方。ゾロゾロと村人が食べ物と酒を持って我が家に集まって来た。と言っても小さな村だ。40人くらい。あれ?村長だけで良かったのに…
「まあ、大変!」
母ちゃんは集まって来た村人に指示をして我が家の庭に村の集会所からテーブルを持って来て、設置していた。
庭には大きな鍋が用意され、村人が持って来た食材がどんどんと放り込まれている。む、む、これはユーリに言った方が良いかな…
ユーリはと言うと父ちゃんとビールを飲んで良い具合に酔っ払っていた。
「お、ナルミ!ナルミの父ちゃんは面白いね。一緒にたくさん飲んじゃったよー。」
「えーと。ユーリ、庭でドルク村名物の『何でも鍋」が始まっちゃいました。皆さん、極級騎士様を歓迎したいと…」
「ほう!よし!お父さん!鍋を食べに行きましょう!」
ユーリと父ちゃんは千鳥足で庭へと向かう。二人で肩を組んで楽しそうだ。
「へへへ。皆さん、初めまして…ナルミのバディ、えーと相棒のユーリ・ミコシバです!今日はナルミの生まれた村にお邪魔できてとても嬉しい!!今日の食事のお代は私が持ちます!ナルミの未来のために皆さん、多いに飲んで食べましょう!」
ユーリはそう言うとバッグからお金を取り出すとユーリの周りでオロオロしていた村長に押し付けた。ふぉ!ユーリ多すぎじゃない??
「おおーー、ユーリ様!万歳!村長、酒をジャンジャン持って来い!!」
こうして、ドルク村での1日目は村を上げての大宴会が行われた。
◇
宴会の間、私は村人からの質問攻めにあっていた。
恋人はできたか?隣町で働いている息子の嫁に来ないか?ユーリ様の相棒ということは出世しているのか?すごくきれいになったな。家の息子の嫁にならないか?王都は楽しいか?仕事は忙しいのか?孫が独身なんだが嫁にならないか?
むむ、嫁に来ないかというお誘いが多いぞ。私はたまらなくなって母ちゃんの所へ逃げて来た。ユーリは?と見て見ると村のおっちゃん達と一緒に楽しそうに酒を飲んでいた。ユーリはたくましいなぁ…
「ナルミが元気そうで安心したよ。特殊作戦室から異動になったって聞いた時は心配したけど楽しくやってるみたいだね。ユーリさんも良い人みたいだね。」
「うん。母ちゃん達も元気そうでよかったよ。そうそう。メルさんっていうエルフのお姉さんと旅をしたんだよ。」
「え!メル姉さんと!本当?」
「何何?メル姉さんとナルミちゃんは旅をしてたのかい?」
村のおばちゃん達も話に加わってくる。
「うん、楽しいお姉さんでさ…」
この日は夜遅くまで皆での話は尽きなかった。
◇
次の日。父ちゃんは二日酔いで起きて来なかった。なのにユーリはとても元気だ。今は母ちゃんが作った朝ごはんをもしゃもしゃと食べている。
「お母さんはお料理が上手ですね!このじゃがいものスープがすごく美味しい!」
ユーリはとても幸せそうな顔でニコニコしていた。
「自慢できるものがお芋しかなくてね。」
「そんな事ないですよ。昨日のお鍋もとても美味しかった!」
「ナルミ、今日はどうするの?」
「うーん、湖に行ってみようかな?あのきれいな景色をユーリに見せてあげたいんだ。」
「ああ、湖なんだけど1カ月くらい前から変な魔物が住み着いていて皆んな近寄んないようにしてるんだ。」
え?魔物?大変じゃない…
「それはどんな魔物なんですか?」
もっしゃもっしゃとサラダを食べながらユーリが聞いた。
「蛇みたいなやつなんだけど、背中に羽があって空を飛ぶんだよ。しかも毒があるみたいで熊が噛まれてすぐに死んじゃったらしいの。」
「サーペントドラゴンだ!ナルミ、湖って村の近くなの?」
「ええ。近くです。魚をとったり農業用のお水をいただいたりしています。」
うーんと唸りながらユーリは考えこんでいた。
「今は湖に餌の魚がいるからこちらに手を出して来ないと思うんだけど、村の存在に気づかれたら厄介だね。ナルミ、湖を見学がてら退治しちゃおうか!」
母ちゃんが驚いた顔をした。
「そんなゴン太の散歩ついでみたいな言い方して…。大丈夫なの?」
「うん、大丈夫だと思うよ。ちょっと様子を見てくるよ。」
父ちゃんも何か言いたそうだったが、口を開くと吐いてしまうらしく、青い顔をして唸っていた。父ちゃん…
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