ナルミの帰郷
第33話 ドルク村
「明日にはドルク村に着きます!楽しみだなあ。」
「ナルミ、せっかく久しぶりに村に帰るんだから、服をきれいにしようよ。」
「そうですね。替えの服も汚れているし…。川沿いで野宿して洗濯とお風呂にしましょう。」
ユーリはまじまじと私の事を見つめる。
「ど、どうしました?」
「うーん。色気がない!こんなんじゃ、お父さんとお母さんが心配する!」
「しませんよ!それにどうせ私は色気はありません!」
プリプリと怒る私を見て、ユーリが慌て出す。
「違うよ。ナルミはとっても美人だよ。ただ、化粧っ気がないなあと思って…。明日、化粧してもいい?」
うーん。あまり得意じゃないけど、きれいにして村に帰るのも悪くないか…
「まあ、良いですよ。」
「やったー!じゃあ、今日は洗濯とお風呂ね!」
私達はこの日、早々に川縁にテントを貼り、きれいな水辺で洗濯をした。
よし!気分が良い。その後、二人で身体も洗った。うん、さっぱりした!
その夜。焚き火で川で捕まえた魚(ユーリが雷魔法を川に落とすと魚が浮いてくるの!すごくない??)を炙りながらちょっとだけワインを飲む(これはユーリが国境警備隊の一室からこっそり持って来たものだ。ユーリは悪いやつだ!)
「二人でお酒を飲むのは久しぶりだね。」
「ええ。」
「ナルミが育った村ってどんなところ?」
「えーとですね…」
私はユーリに村の良いところをたくさん喋った。小さな村だがとても暮らしやすいこと。村人はお年寄りが多いが皆んな親切で暖かいこと。酪農が盛んで乳製品が美味しいこと。うちで採れたジャガイモと一緒に食べるとほっぺたが落ちてしまうこと。夕日がきれいなこと。山がきれいなこと。川がきれいなこと。ユーリに教えたいことはいっぱいあった。
「ナルミは村が好きなんだね。」
「はい、ユーリにも好きになってもらいたいです。」
ユーリはニカッと笑うとグイッとワインを飲み干した。
「いきなりナルミが帰ってきたらきっと皆んな、びっくりするね。」
「そうですね!明日が楽しみです。」
その日の夜は二人で話の尽きる事がなかった。
◇
次の日の朝。私はユーリにお化粧されていた。
「いいねいいね。ナルミはかわいいね。私のお部屋に飾りたいなあ。」
「ユーリは私と一緒に住んでいるじゃないですか。」
「おーー、そうだった。よし!出来上がり!うーん、もうちょっと飾り気がほしいなあ。そうだ!ナルミ、『遮蔽の石』を起動させてよ。」
「はい…。こうですか?」
魔力を込めると遮蔽の石は赤く神秘的に輝きだした。
「いいね!貴族のお嬢様みたいだ。これでお父さんとお母さんに驚きを持って魅せられる。」
「何ですか、それ?」
私達はテントをたたむと村に向けて歩き出した。
「昼には村に着けると思います。」
◇
昼にはドルク村に着いた。あー、全然変わってない。牧場ではのんびりと牛が草を食んでいた。
「おや?ナルミかい?あまりにきれいでわからなかったよ。」
「あ!牛のおばさん!」
「久しぶりだねー。元気だったかい?」
「はい!元気でした。今、ちょうど村に着いたところなの!」
「はー。それじゃあ、牛乳を飲んで行きなよ!後でナミさんにチーズも届けてあげる!」
「ありがとう!おばさん。」
「ところでこちらは?えらく美人なお姉さんだね。」
ユーリはかしこまって答えた。
「私は極級騎士ユーリ・ミコシバと申します。ナルミさんのバディです。2、3日こちらに滞在しますがよろしくお願いします。」
ユーリは私を見るとニヤッと笑った。
「ひぇーー、極級騎士様!しかもナルミのバディ??」
牛のおばさんは感嘆の声を上げるとユーリと握手していた。なぜに握手?
「何とぞ何とぞナルミをよろしくお願いします。この子はがんばり屋の優しいとても良い子なんです。」
「はい、わかっています。それに私の方がナルミにお世話になっています。」
「まあまあ、これは村長に報告しなければ!ナルミ、後でチーズを持って行くからね!こうしちゃいられない。あんた!あんた!ちょっと、村長のところに行ってくるよ!」
そう言うと牛のおばさんは駆け出して行ってしまった。お、ちょっと嫌な予感…。私はジトっとした目でユーリを見つめた。
「いや、だって、その、ナルミがすごい事を教えたくて…。」
「ユーリはたまに忘れていると思いますが、極級騎士はとっても偉いんですよ。私もたまに忘れてますが…。
しかもこの村はエルマ精霊国に近い。エルフも多く滞在してます。竜殺しの英雄だってわかったらスッゴイ事になりますよ。」
「いやいや、そんな事は…、大丈夫かな?ナルミ…」
「と、とにかく、私の家に行きましょう!」
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