第14話 ギルドマスター
わたしはクロスガンに魔力を込めた。ユーリが頷く。私は大きめに石弾を生成すると扉に向けてぶっ放した。扉が弾け飛ぶ。
すかさずユーリが刀を抜いて部屋に飛び込んだ。中から針が飛んでくる。吹き矢か!
でも、ユーリは動じなかった。吹き矢を顔を傾けただけでかわすと刀に込めた魔力を光の刃にしてアサシンに飛ばした。光刃はアサシンの右肩を吹き飛ばした。アサシンは絶命する。
一人が短刀を抜いて私に迫ってきたが、あいつは強くない。冷静にクロスガンを構えると私はアサシンの額を打ち抜いた。
あと二人。私はそのまま左手で刀を抜くとパトリックの前で剣を構えていたアサシンに迫る。濃い紫色をした刀身。禍々しい!!毒の剣。私は刀に魔力を込め、気合いをいれて打ち込んだ。
「でやー」
アサシンは剣で私の斬撃を防いだが、その瞬間に紫色をした刀身は砕けていた。アサシンの目が驚愕のために見開かれる。私はそのままアサシンの首筋を切り下ろした。血飛沫を撒き散らしながらアサシンは床に倒れ込んだ。ミシマ分室でユーリにもらった刀。初めて使ったけど、とても良い刀だ。
あと一人。そう思ったが、最後の一人もすでに剣を弾き飛ばされてユーリに刀を突きつけられていた。
「投降しなさい。」
ユーリの声が静かに響いた。が、最後の一人はいきなり口から血を垂らし、力なくへたり込んだ。その目にはすでに生気はなかった。
毒を煽ったのか…。恐ろしい連中だ。
「お、俺に手を出すと大変なことになるぞ!」
放心状態から我に返ったパトリックが叫び出した。
「お、俺はジャン伯爵家のものだ。憲兵隊も俺には手を出せんのだぞ!引け!!」
「カガリ!」
『はい、魔法ネットワークは無効化しました。魔法士は魔法ネットワークを逆に利用して精神へ干渉しました。魔法士は昏睡しています。』
ユーリはゆっくりとパトリックを睨みつけた。
「魔法ネットワークは無効化した。憲兵隊や市政事務所に入り込んでいた魔法士も拘束している。」
「な、なんだと。」
パトリックは叫ぶと逃げ道を探すように辺りを見渡した。しかし、逃げ道などない。
「ふはははは!さすがはミシマ分室のユーリだ!だがな、ジャン伯爵家まで敵にまわすのは得策ではないな!引け!」
ユーリは黙って耳にかけてある通信機を操作した。ほどなく通話内容が外部に音が聞こえるようになった。
「ヨーム!首尾はどう?」
『はい、ユーリさん。ジャン伯爵家はパトリックを切り捨てました。まあ、ジャン伯爵家もパトリックの扱いに困っていたようでしたので…。いくつかの厄介事をパトリックの犯行ということにして勘当という形を取るという事です。』
「パトリック!お前は後ろ盾も無くした。観念しろ!」
パトリックは狂気に満ちた目でユーリを睨みつけると剣を抜き、切り掛かってきた。ユーリは冷静に刀をパトリックの手首に打ち込んだ。
「ぐあー。」
パトリックは剣を取り落とした。ユーリの刀に刃は付いていない。パトリックは手首を押さえてうずくまる。
「ヨーム、後片付けをお願い。」
ユーリは通信機に短く告げるとパトリックを縛り上げた。
しばらくして黒服の一団が現れてアサシンの遺体や書類などを運び出していった。パトリックも黒服に連行されていった。
ふうー。色々大事になった感じだな。
私は通信機でカガリさんと話ていた。
「魔法ネットワークとは何だったのでしょうね…?」
『はい、かなり大規模な組織が暗躍していると思われます。それに…』
カガリさんは大きく息を吸って言葉を続けた。
『拘束した魔法士は記憶が完全に消されていました。予め拘束されたら発動する魔法を仕込まれていたのでしょう。凄腕です…』
「そんな奴らが暗躍しているのか…。うん、カガリに頼っちゃう事が増えるかもしれないね。カガリ、頼りにしてるよ。」
ユーリの言葉にカガリさんはわかりやすく狼狽えていた。
『ゆ、ユーリ様の為なら私、何だってやりますわーー。でもでもユーリ様のお世話が私の一番の幸せということは忘れないでくださいませ!!』
「ありがと!カガリ!」
うーむ、それでいいのか?カガリさん。
「ところでパトリックに関しては他に情報は無いのですか?」
『はい、ございます。パトリックは組織と共謀して子供を売買していたようです。』
これを聞いた時のユーリの顔は怒りに満ちていた。
「またか!また、子供だ!この世界はどうなっている!カガリ、ヨームに伝えて!組織を探って!と。私が潰してやる!!」
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