冒険者ギルド
第9話 ユーリとの生活
その日の夕方。やっとミシマ分室に戻ってきた。夕方。もう一度言おう。夕方。ミシマ分室には誰もいなかった。いつもこんな感じらしい。特殊作戦室は24時間、365日誰かいたけどなぁ…。
私はユーリに2階へ案内された。これから住む部屋を見せてくれるらしい。ユーリと相部屋。
「ここだよ。ようこそ、我が家へ!!」
内装はとてもきれい。ベッドが二つ用意されている。二人で住むには広すぎるくらい。素敵なソファもある。キッチンやトイレ、バスはミシマ分室と共通。
「うわあ、とても素敵な部屋…」
「でしょ。あ、後で家事の分担をしようね。」
この建物の2階にはもう一部屋あって、そこはカガリさんの部屋。アカネが一緒に住む予定だが、あと数日後かな…。
私の荷物も運ばれて来ていたが、着替えが少しと本が数冊くらいだ。それを見たユーリが話かけて来た。
「ナルミ。荷物ってそれだけ?」
「はい、これだけです。」
「えー、部屋着とか、食器とか、スリッパとかは?」
私はちょっと考えたが、うーん。必要かな?
「必要ですか?」
「必要でしょ!ねえ、せっかくだからお揃いで買おうよ。」
うーん、お揃いか…。ちょっと恥ずかしいなあ…
「うーん、お揃いじゃなくて良いです…」
あ!なんかユーリ、すごくしょんぼりとしている。これはお揃いにしましょうと言った方が良いのか??
私が葛藤しているとユーリが唐突に言った。
「ナルミ!私と勝負だ!私が勝ったらお揃い、そして明日、私と買い物に行く事!私が負けたらお揃いじゃなくても良いよ…」
あれ?これって私にあまり得がないような。
「わかりました。でもひとつ条件があります。私が勝ったら明日、豪華な昼ごはんを奢ってください!」
「うん、わかった。勝負はコイントスだ!ナルミが受け止めてよ。いくよ。」
ユーリはそう言うと10ペニーコインを指で弾いた。私はそれを手の甲で受け止めた。
「表だ!」
「じゃあ、私は裏で。」
そおっと手を退けると私の手の甲でコインは表を向いていた。ユーリがニヤッと笑いかける。
「ふふん、ナルミ。明日は朝から出かけるからね。」
◇
次の日の朝。早くからユーリに起こされた。
「ナルミ、朝ごはんを食べて出かけるよ。」
「朝ごはんですか?ユーリが作ったの?」
「違うよ。カガリが作ってくれるの。」
二人で食堂に降りると美味しそうな朝ごはんが用意されていた。新鮮な野菜のサラダ、キツネ色に焼かれたパン、厚切りベーコンに目玉焼き。ああ、幸せだー。
「ユーリ様、ナルミ様。おはようございます。」
「おはよう。」
「おはようございます。」
「ユーリ様、今日のご予定は?」
「今日は特に仕事は入ってないから、ナルミと備品を揃えてくるよ。」
「かしこまりました。何かありましたら通信機でご連絡いたします。」
ユーリはサラダをもしゃもしゃ食べながら頷いている。それにしても美味しい朝ごはんだなあ。
「ナルミ様は食後は何をお飲みになりますか?」
「あー、嫌いじゃなかったらコーヒーにするといいよ。カガリのコーヒーは絶品なんだ!」
コーヒー!何て優雅な朝なんだろう。
「はい、コーヒーをお願いします。」
カガリさんのコーヒーは絶品だった。なんと香り高い!!朝から頭がスッキリする。
「ナルミ、コーヒーを飲み終わったら出かけるよ。」
◇
「えー、特殊作戦室の隊服しか持ってないの?」
「いえ、ミシマ分室の隊服も持ってます。」
「…出かける時はどうしてたの?」
「隊服ですよ。」
「…それじゃあ、私の服を貸してあげるよ。着れるかな?」
ユーリと私は背格好が似ている。違いは…、胸の大きさ…。ああ、ダメージを受けた…。
でもユーリの貸してくれた空色のシャツも白いスカートもピッタリだった。スカート。着慣れてないから落ち着かないなあ。
「ナルミ!」
「は、はい!」
「かわいいじゃん。いやー、役得だわ。おほほほ。」
ユーリは不気味な笑い声をあげながら私のことを舐め回すように眺めていた。
「うん、良き良き。それじゃあ出発しようか。」
「先ずは服を見ようよ。部屋着もお揃いで欲しいしさ。」
「はあ。良いですけど、あの…」
「何?」
「私、田舎者なのでセンスに自信がなくて…その…ユーリが選んでもらえますか?」
ユーリはすごくうれしそうな顔をすると私の手を引いて一軒のお店に入った。
「へへへ、ここから見ようか!」
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