第2話 私、クビですか?!
それから後のことは思い出したくない。気がつくと司令部の医務室にいた。
ロシナロスが付き添ってくれていたが、その顔は酷く腫れていた。私を庇って殴られたらしい。カンネのやつ!!許せん!
だが私の威勢もここまでだった。私が意識を取り戻した事を知った特殊作戦室長のアダルマン特級騎士がカンネを伴って現れたのだ!そして私は糾弾される。
曰く、味方を撃つとはどういうつもりか。魔物の魔石を砕けなかったらどう責任を取るつもりだったのか。お前は特殊作戦室の多くのメンバーを危機に陥れたのだ!
私の反論は許されなかった。言いたいことはたくさんあった。私がカンネを打たなかったらあのエルフの女の子は死んでいた。
しかも魔物の爆発を止められていたかも怪しい。あの手の魔物は魔石を壊さないと死なない。死なないということは爆発する可能性があるということだ。
あの状況判断はダメだ。ダメダメだ!でも私の言い分は全て封殺された。私の顔は青くなっていただろう。
「ナルミ中級騎士には特殊作戦室から離れてもらう。」
アダルマンの言葉が理解できるまでしばらく時間がかかった。
え、え、え。クビということ?お父ちゃんとお母ちゃんになんて言おう。最初に考えたのはそんな事だった。
「転属先は追って通達する。」
それだけ言うとアダルマンはカンネを伴って医務室から出て行った。カンネは部屋から出て行く時にこちらを見ると本当にいやらしい顔でニタっと笑った。
ち、ちくしょう!カンネ!私は必ずここへ戻ってくるぞ!!
◇
「カンネ…」
執務室に戻ったアダルマンから冷たい声が紡ぎ出され、カンネは背筋に悪寒が走った。
「は!」
「あのエルフの女の子はエルマ精霊国女王のお嬢様だ。」
カンネは冷や汗が噴き出る。
「あの捜索への協力要請が来ていた件ですか?」
「ああ、そうだ…」
「あの子を切るとかなりの問題になっていただろう。結果的にはエルマにも恩を売る事ができた。しかし、な。」
アダルマンは不機嫌さを隠さずに言葉を繋げた。
「特殊作戦室の最強の所以である魔法士が出し抜かれたためにお嬢様を危険に晒したなどと、そのまま報告する訳にはいかない。
だから一番階級が低いナルミを人身御供とした。報告書には一騎士のスタンドプレーによって負傷者が出たが、その負傷者の機転でお嬢様を救出した。
しかし、誘拐犯に気取られて逃げられたということにしてある。だから、君は不問だ。 だがな、これは君の行動如何ではおおいに結果が変わった事だと思う。私はナルミに期待していたのだ。カンネ、その事を忘れぬように…」
カンネは直立不動のままアダルマンの話を聞いていた。
「そうそう、ナルミは情報部のミシマ分室に行ってもらうことにした。」
カンネはアダルマンの言葉に心底驚いた。
「あのユーリのところにですか!!」
「ああ、そうだ。私はナルミに期待しているのだよ…」
◇
それから2日間、私は謹慎していた。α班のメンバーに会うことも禁じられた。どうしてこうなった?あの時の私の行動は正しかったはずだ!なのに…
『コンコンコン』
唐突にドアがノックされた。
「はい、どうぞ。」
私は訝しがりながらも返事をした。入ってきたのは30歳半ばくらいの男性だった。
「失礼。はじめまして、ナルミ・ジェイドさん。」
男は右手を差し出して、握手を求めてきた。
「俺は情報部ミシマ分室のマサノ・ミシマといいます。ようこそ、ミシマ分室へ!」
私はマサノの言っていることがわからなかった。いや、わかったのだが納得したくなかった。
「どういうことでしょうか?」
「おや、聞いてない?ナルミは明日付けで俺の所へ配属だ。」
マサノは急にくだけた口調で話だした。
「これが配属通知。そしてこれが分室への地図。部屋は相部屋になっちまうが気の良い奴なんで気にするな。
この部屋は明日までしか使えないそうなんで荷物をまとめておいてくれ。後で分室へ運んでもらうように手配しておく。
よし!質問がないようなら明日からよろしくな!」
「あ、あの…」
「おう、じゃあ昼前には来てくれ!じゃあな。」
私の言う事を全然聞かないで、マサノと名乗った男は嵐のように去っていった。
「はあ」
私はため息をついてベッドへ腰掛けた。ミシマ分室?分室という事は情報部の出張所だろう。出張所なのに王都の中央にあるんだな…。
私は地図を見ながらぼんやりとそんな事を考えていた。まあ腐っていてもしょうがない。早く実績をあげて特殊作戦室に戻ってカンネを見返してやる!
私は勢いよく立ち上がると少ししかない自分の持ち物をまとめ出した。
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