魔眼の少女は最強のバディでした!〜左遷された私は異能者ばかりの部署で"世界"を守るために奮闘してます〜
相上圭司
プロローグ
第1話 私のお仕事
王都の季節はもうすぐ秋になろうとしていたが、まだまだ暑い。
もうすぐ夜が明ける時間だというのに、この暑さはなんなのだろう。
しかも、私達が密んでいる場所は王都の外れにある巨大な倉庫なのだ。風の通りが悪く、余計に蒸暑く感じる。
「α班、配置に着きました。」
私は遠く離れていても通信のできる魔道具を使って司令部と連絡していた。
司令部からの指示は待機。私は他の班員へ司令部からの指示を伝えた。この現場に投入されたα班のメンバーは5人。
私以外は全員が男性だ。はじめは女の私がリーダーであることに不満を持つ者もいたが今は皆、私を慕ってくれている(と信じている…)
今日の私達の任務は亜人を狙った大規模な人身売買組織の急襲だ。事前の情報では組織の構成員は30名ほど。
この現場には同様に8班が作戦行動中だ。本来であれば失敗しようがない任務だ。だが、
「ナルミさん、おかしくないですか?」
副長のロシナロスが話しかけてくる。
「ん。そうだね。」
私も気づいていた。
人身売買組織を強襲して構成メンバーの確保、または殲滅。そして人質の救出。
これが私達の任務だ。内定も情報部のメンバーが充分に行っている。しかし、この倉庫には人の気配がないのだ。
「司令部にいる魔法士達がこの倉庫をモニタリングしているでしょ?何かあったら司令部から指示があると思うよ。」
私はロシナロスに当たり障りのない返答をしたが、この違和感は拭えなかった。
事実、魔法士達によってこの倉庫は空間認識魔法によるモニタリングがなされ、この場で起こっているあらゆる情報が司令部へと集まっているはずだ。それでも…
私はハンドサインでα班のメンバーへ散開するように指示を出した。
とにかく、嫌な予感がするのだ。一塊りになっているところに攻撃魔法をぶち込まれたら目も当てられない。
私はメンバーがお互いに距離を取るのを横目に見ながら、この現場の異様な雰囲気に不安を感じていた。
◇
私の名前はナルミ・ジェイド。19歳。
王都の近郊の村で農家の娘として育った私は15歳の時に王都にある軍の仕官学校を受験して合格した。大層な志しがあった訳ではない。学費が無料だったから受験したのだ。
だが、私には剣技や魔法の才能があったらしい。もちろん努力もした。そのかいもあり私は去年、仕官学校を主席で卒業した。
仕官学校を卒業した後、見習い騎士を経て今年から王立軍情報部特殊作戦室という部署で班長を勤めている。
はっきり言ってエリート部隊だ。全部で10班あるうちの一班を任されている。ここへの配属が決まった時、お父ちゃんとお母ちゃんはとっても喜んでくれた。村一番の出世頭だとさ。
部下は私より年上の男性がほとんどだが、剣技でも魔法でも今のところ遅れをとったことは無い。班の統率もうまくこなしていると思う。
剣技は朧流の免許皆伝を受けているが、実際は魔法による精密な狙撃が得意だ。超長距離からの光矢による狙撃で私に勝てる者はいないだろう。
身長は167cm、49kg。体型はスレンダーかな?(胸が小さいのが悩み…)長く艶やかな黒髪が私の自慢だ。
そんな私は今、不安と戦いながら剣を握りしめていた。
◇
『ザーザー、α…扉の向こうに多数…ザーザー、他班と……突入せよ。』
司令部からの通信が入ったのは待機の指示が出てから5分後だった。
「?」
私は隣にいたロシナロスと顔を見合わせた。今まで通信に雑音が入ることなどなかったからだ。
「司令部。今一度、指示を請う。」
私は司令部に指示の確認を試みたがそれ以降、司令部と通信がつながることはなかった。
そしてすぐに扉の向こうから怒号が聞こえて来た。
「α班!突入します!」
指示は不明瞭だったが仕方がない。私はα班に突入を命令した。班員のマッシマーが地の魔法を練り上げて石の弾丸を作り出すと扉をぶち抜いた。
扉がひしゃげて吹き飛び、私とロシナロスは剣を手に扉の奥へ飛び込んだ。
そこには、
上級騎士であるカンネが率いるΖ班がエルフの女の子を囲っていた。
「誘拐組織は…、いない?」
ロシナロスがぼそっと呟く。私は一瞬で悟った。これは…、司令部の魔法士がモニタリング中に幻覚を見せられたな。
しかも、空間全体が強力な魔法によってジャミングされている!だから通信が途絶したのか!ということはこれは罠だ!もう誘拐犯はこの倉庫にはいないだろう。
私は慌ててエルフの女の子に視線を移した。
罠が仕掛けられているとしたら、あの子だ! その子の小さな身体には禍々しい生物が張り付いていた。体の中に強力な魔石を内包した魔物。しかも女の子から魔力を吸い取り、膨れて爆発寸前だ。
「あれが爆発したらこの倉庫が吹き飛ぶぞ!」
カンネ上級騎士が叫び、剣を振り上げた。
女の子を切って魔力の供給を断つつもりだ! 女の子が死んでしまう!
私は急いで右手にロッドを持つと光矢を作り出す。
「ナルミさん、ダメだ!」
ロシナロスが制止する声が聞こえたが構うものか!私は狙いを定めると光矢を放った。
ロッドから放たれた光矢は剣をまさに振り下ろそうとしていたカンネ上級騎士の腕を貫いた。カンネが剣を取り落とす。
光矢はそのまま魔物の魔石をも貫いた。もちろん、女の子には当てない! 魔石が砕かれた魔物は空気が抜けた風船のように魔力を発散して萎んで消えた。
私は急いで女の子を確認した。良かった。無事だ。そう思った時、
「ふざけるなあ!!」
怒鳴り声とともに左の頬に痛みが走った。そのまま私は意識が遠のき、暗闇に沈んでいった。
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