第3話 カエルのかえるとき
母さんカエルはニコニコと
みんなの様子を見て、待っていた
父さんカエルのところに行きました。
たまごを生んだ後のカエルは、
なんだかとてもキレイに見えます。
妻カエルから
母さんカエルになるって
本当にすごいことなんだな。
実は父さんカエル、
こわくてみていられなかったのです。
おなかの大きな妻を
自分が支えられるのか
自信がなかったものですから。
力がないと思われるのもイヤでした。
なのになんでも平気でやってみせた
母さんカエルが
とてもたくましく思えました。
「なんだか美人に見えてきたよ。」
父さんカエルが柄にもなく言うと
「なんにもかわってないのに?」
母さんカエルは笑いながら答えました。
そこへ2ひきの双子カエルが来ました。
クツガエルのキノハと
ウラガエルのコノハでした。
2ひきがそろうと
いつもよけいなことを言うのです。
楽しいことがあると
「でも、あきちゃうよね」
喜んでいると
「それで損することはないの?」
嬉しいことがあると
「いつかそのことも忘れちゃうよ」
そんな風にいつも一言多いのです。
だから聞いてしまったみんなはあまり
いいかおをしません。
そろそろ2ひきは旅立ちをする年頃でした。
2ひきはバラバラになるのが不安でした。
キノハは町へ行きたいし
コノハは里で暮らしていたいのです。
「町でいろんなことにチャレンジしようよ」
キノハが言うと
「葉っぱの上でその色になるまで過ごすのはチャレンジじゃないの?
キノハは色んな色を見たいだけでしょ」
コノハが言い返します。
双子なのに考え方が
まるでちがうのです。
それでいつも、いっしょうけんめいに
おたがいの気持ちを伝えようとして、
つい相手をせめる言い方に
なってしまうのです。
それで今日は
だんまり散歩に出かけたところでした。
2ひきをみつけた母さんカエルと
父さんカエルは口をそろえて言いました。
「今日は仲良くお散歩なのね?」
「今日は仲良くお散歩かい?」
2ひきは、だまっていると
仲良しに見えるんだなぁと思いました。
父さんカエルが聞きました。
「どっちがキノハちゃんで
どっちがコノハちゃんなんだっけ?」
だまっているとキノハとコノハは
そっくりです。
「やっぱりボクは町へ行くよ」
キノハが言うと
「じゃあボクは里で待ってるね」
コノハが言いました。
なんとなく今日はそれ以上言わなくても
お互いの気持ちは通じたようでした。
母さんカエルが言いました。
「うちの子たちもあんな風に
なるといいわね」
父さんカエルは、どっち?と思いましたが、どっちにしても
なんだか少し淋しい気がしました。
2ひきは大人になると
町ガエルか里ガエルになるかも知れません。
母さんカエルと父さんカエルも
きっとミチガエルよね。
そんなこんなん 高島よしえん @zenkai55
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます