水の記憶

@nakamayu7

第1話 プロローグ

このお話の舞台は今よりも少し前の時代になります、

清美と里子が生まれたのは1951年。日本は第二次世界大戦からの復興期で、高度経済成長期の黎明期でもありました。


1960年代に入ると本格的な高度経済成長期に突入します。

1964年にはアジアで初めてのオリンピックが東京で開催されました。それに合わせて東京、大阪間に新幹線が開通しています。

1961年、東京オリンピックに先立ってスポーツ振興法が制定され、各学校にプールを建設するための費用を国が補助することが定められました。

東京オリンピックに触発され、日本国内ではスポーツ熱が高まっていきます。

水泳においても、元は救難訓練の意味合いが強かった『水練』から、スピードを競う『競泳』へと姿を変えていきます。

1965年には日本で初めて代々木にスイミングスクールが開校され、1970年代には年中泳げる温水プールが出現します。


このお話の舞台である和歌山でも、1971年に開催された和歌山国体、通称『黒潮国体』に先立って1966年、秋葉山に国体級の公式大会が開催できる本格的な競泳プールが作られました。


ただ、この時期は和歌山、特に和歌山市街の海岸線に広がっていた広大な砂浜が、工場建設のために埋め立てられていく時期でもありました。


さて、ときは1961年。清美、里子がまだ10歳、小学校4年生のときからお話は始まります。

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