25. ノベンバーとデミアン
べらの部屋にはたくさんのドレスが届けられました。どれもハリウッドのスターが着るようなロングドレスなので、ちょっと困りました。どれを晩さん会に着ていけばよいのでしょうか。べらは大きな
ドレスやくつを決めなければならないのは、今度も、人間のべらだけです。
べらはヒールをはいて、歩いてみました。べらはスニーカーとブーツしかはいたみとがないのです。こんな高いヒールをはいて歩くなんて、つなわたりよりむずしいわ。どうして、こんな不自由なくつをはく必要があるの、とべらは
マリンもスカンクの
「マリンくん、これどう?」
とべらがドレスを見せると、マリンが
「ぼく、そういうの、わかんないでちゅ」
マリンはまだおそろしがっていて、スプレーをださないことに
「べらちゃん、ドレスは決まった?」
ゴーちゃんが
「来てくれて、うれしいわ。どれもすてきだけど、どのドレスがよいのか、決められないの」
「べらちゃんが、すぐに決められないなんて、めずらしいね」
「こういう
「だいじょうぶ。ぼくが手伝うよ」
「ありがとう。ゴーちゃんなら、どれにする?」
「そうだね、これがいいよ」
とブルーのドレスをえらびました。
「デミアンがべらちゃんのことばかりきいてくるんだよ。だから、サンフランシスコにはボーイフレンドが10人いて、お花が毎日とどくっておしえたんだ」
「ボーイフレンドはいないし、お花だってとどかないわよ」
「今にとどくよ」
ゴーちゃんがくくくと笑いました。
「デミアンはべらちゃんがすきみたいだよ。」
「どうして?」
「すきになるのに、りゆうはいらないんだよ」
ゴーちゃんは、また
「ゴーちゃんは、なぜそんなむずかしいことを知っているの?
「うん。ゴーストワールドで、そう言っていたお兄ちゃんがいたんだ」
「ゴーストトワールドのことを思い出したの?」
「うん。だんだん思い出してきたよ」
「思いだしたこと、何でもいいから
「ぼくはゴーストワールドに行って、まいにち、ママに会いたいってわんわん泣いていたんだ。そしたら、
「わたしを?わたしのこと、ほかに何か言っていた?」
「うん」
「おしえて」
「さかだちがうまいって」
「もっとほかにない?」
「あるよ」
「おしえて」
「水をのみながら、さかだちができるって」
「ほかには」
「オリンピックのしゅもくにさかだちがあったら、金メダルだって」
「そんなことかぁ」
「その人って、だれかわかる?」
「えーとね、ノベンバー・リードっていうんだよ」
ああっ。
べらはもう少しで、
「その人が、あのピアノのもちぬしよ」
「べらちゃんが好きだった人かい」
「そう。大学のせんぱいたった人」
「音楽のアプリを作ったんでしょ」
「そう。その人」
「でも、ノベンバーは、どうしてわたしに会いにきてくれないのかしら。ゴーちゃんは来れたのに」
べらが少しはずかしそうに言いました。ノベンバーは、わたしがどのくらい会いたがっているのか、知っているのかしら。
「
ああ。それはノベンバーらしいとべらは思いました。いつも、だれかのお
「お兄ちゃんは、そのさかだち金メダルの人に会いたいから、
そうなの?
べらは心が、パラの
その時、デミアンがはいってきました。ブルーのネクタイをして、大きな
「晩さん会までには少し時間がありますから、国王から庭をあんないしてさしあげなさいと言われましたので、やってきました。いかがでしょうか」
デミアンが少しおどおどしています。
「お兄ちゃん、ほんとうにパパがいったのかい」
とゴーちゃんがからかいました。
「お兄ちゃんが、べらちゃんと歩きたいんではないのかい」
「そ、それは」
デミアンが耳まで真っ赤になりました。
「ゴードン、ママが呼んでいるよ」
「わかったよ。ふたりで歩くチャンスをあげるから、チャンスはものにしろよ」
王宮の庭は広すぎるので、デミアンがゴルフカートのような車を
途中で、デミアンが車を止めました。目が一点を見つめています。
どうしたのかな、と思ったら、彼は車からおりて、林のはしにある小石のところに近づいていきました。
デミアンが
「小鳥がたおれているのです。息をしていません」
小鳥は3センチほどで、黒いワラのように見えます。
べらが近づいて
「これ、生まれたばかりの子どもの鳥です。気を失っているだけかもしれませんよ。わたし、
べらの家の窓に鳥がぶつかって、
デミアンが小皿に水を
そして、庭めぐりを続けたのですが、ふたりの気もちはすぐに子鳥のところにもどりました。
デミアンはべらがゴーストの弟の
「ぼくはこの国の
「はい」
「今度、いっしょにハイキングに出かけませんか。この国にも、世界にほこれる美しい山や
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