21. 海を見ながら
べらはラスベガスから帰ったら、モッヒとふたりでお出かけしようと決めていました。ふたりだけで出かけるとみんながうらやましがるかなと心配していたのですが、それはなかったです。というか、あまりにあっさりしすぎているくらい。
みんな、モッヒが悩んでいるのを知っていて、
「ハバナイスデイ」
いい日をね、なんて言うと、みんなはすぐ家の中にはいってしまいました。
コンテストに向けて、毎日、はりきっているのです。
ひとつの
「べらちゃんとデート、楽しいな」
歩きながらモッヒが言いました。
「うん、楽しいね」
今年の冬はあたたかくて、空は真っ青にはりつめていて、
メトロ駅まで歩く途中の家々に庭には、ピンクの花が咲いて、まだ1月なのに、春が近い感じです。
「春になったら、うれしいな」
べらがけんけんをしました。
「春になったら、何がうれしいんだい」
「うれしいことはいろいろあるけど、おばやが
ふたりの行先はオーシャンビーチです。
オーシャンビーチでおやつを食べて、お話をし、それからゴールデンゲート・パークをお
「べらちゃん、あれ」
モッヒが
「いったい、にんげんに、何がおきたんだ。みんな、ふくをきていない」
あっ、そうだったわ。べらにはその意味がわかりました。
1月のこの日は「ノーパンツの日」でした。パンツとはズボンのことで、ズボンをはかない日です。でも、
「
「べらちゃん、どうして、にんげんがズボンをはかないの?」
とモッヒがわからないという顔をしています。
べらが「ノーパンツディ」の
これは、「みんなを楽しくおどろかせて、
「べらちやん、
べらが写真をとりながら気づいたことは、みんな、あまりスタイルを気にしていないということです。パンツからお肉がはみでた人もいますし、おなかが出ている人もいます。かくしたほうがいいんじゃない、という人もいました。
でも、そんなことは気にせず、冬の1日を楽しくやろうよ、ここはサンフランシスコだもんね。
Only in San Francisco
なんでも
オーシャンビーチに着きました。べらが
だれもいない
「わたしにはノベンバーという大好きな人がいたの」
とべらが海を見たまま、言いました。
「ノベンバーって、11月?」
「そう。11月生まれなのよ。でも、ノベンバーは、3年前に亡くなってしまったの。彼はその時、お仕事でスウェーデンに行っていて、わたしがオーロラを見たいと言ったので、ノルウェーのオスロ
そうなんだ、とモッヒがうなずきました。
「ノベンバーは大学のせんぱいで、バイト先で知り合ったのよ。わたしは自分で
その夜中のバイトで、ノベンバーと知り合ったのです。それはレストランが
その頃のノベンバーは先のことを心配して、いもつ暗い顔をしていました。だから、べらは何かしてなぐさめてあげよたいと思ったのです。でも何もできないので、
べらは立ち上がって、砂の上で、くるりと
「もうあのスマイルは見られないってこと」
と手に砂をつかんで、ぱらばらと下に落としました。
「前に、モッヒくんと、言われると心にぐさりと突きささって。すごくきずつくことがあるって話したわよね」
「おぼえている。思い出すと、泣きたくなるって言ってた」
「ノベンバーのお姉さんがね、彼が死んだのはわたしのせいだって言ったの。わたしがオーロラが見たいなんて言わなかったら、死ななかったって。わたしと出会わなかったら、彼は生きていたって。そのことを思い出すとつらすぎて、今までだれにも言っていないの」
べらがくちびるをかみしめて、
「ぼくに話してくれてありがとう。
「モッヒくんがアフリカにもどることについては、自分がしたいとようにするといいと思うわ。
「ふうせん?」
「そう。ヘリウムガスをいれすぎてわれてしまったら、またあたらしいふうせんをふくらませればいいのよ。いつかはふくらんで、空にとんでいける、とだれかが言っていた・・・・・・」
「うん。ぼくがアフリカにいってうまくいかなかったら、また別のことを考えればいいということだよね」
「そうよ」
「わかったよ、べらちゃん」
べらとモッヒがうちに帰ってきた時、みんなが集まってきて、どんな日だったのかとききました。
モッヒがノーパンツの人のことを言うと、
「みんながパンツをはかないのでちゅか」
とマリンがあわてて家から
そういう話を聞く
でも、子供のゴーちゃんがいるので、しげき的な話はよやめようね、とべらが目でサインを出しました。
「気にすることないよ」
とゴーちゃんです。
「ぼくはいつだって、ノーパンだい」
えっ、
べらのほうがおどろきました。
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