16. みんなのリクエスト

 べらが「ファミリー・ルール」の作文を書くことになったので、みんなの意見いけんをきくことにしました。

「まず、いえでこういうことはやってほしくない。やってほしいをいてください」

 それを参考さんこうにして、べらが新しい「家の規則きそく」を作ろうというのです。

 2日後、みんなから、そのこたえを書いたかみとどきました。


〇トット・・・・自分じぶんオンリーのバスタブがほしい。にわにプールがほしい。

〇クマハチ・・・・ハチみつは食べないようにしよう。

〇モッヒ・・・・ぼくのシャンプーを使つかわないでほしい。

〇マリン・・・・ぼくのものまねをしないでほしい。

〇ゴーちゃん・・・・人間にんげんとゴーストの差別さべつをするな。ゴーストの自由じゆう権利けんりまもろう。


 べらがみんなを集めて、それぞれに答えました。

 ますは、トットから。トットはバスタブでおよ練習れんしゅうをしていますが、

「このリクエストは、むりよ。予算よさんがないから、ロッテリー〈たからくじ〉にでもあたったらね」


 クマハチはハチにとても同情的どうじょうてきというか、自分がハチだと思いっているので、ハチミツを食べられたくないのはわかります。

「でも、わたしははちみつをいれたティーが大好きだし、トーストにぬるのも好きだから、これもノーです」


 モッヒのかみの毛はうすいので、ボリュームが出る特別とくべつのシャンプーを使つかっているのです。

「みなさん、これはまもりましょう」

 みんなはふつうのシャンプーを使うようにと言ったので、モッヒが「やったぜ」とよろこびました。


 それから、マリンのことですが、

「マリンくんの口真似くちまねはぜったいに、してはいけませんよ」

 ときびしく言いました。


 ゴーちゃんのリクエストには「ええっ」、とおどろきました。

「だれもゴーストを差別さべつなんか、していないでしょ」

「ゴーストにも、選挙権せんきょけんを」

 とゴ―ちゃんがさけんで、部屋中へやじゅうをとびまわりました。

「ゴーちゃん、本気ほんきで言ってる?」

 とべらがゴ―ちゃんを見上げます。

「言ってなーい」

 ゴーちゃんがけけけと笑って下りてきました。

「ゴーちゃん、どうしてそんなこと、言うの?」

「だって、べらちゃんをおこらすの、おもしろいんだもん」

 まったく、ゴ―ちゃんはやんちゃなんだから。


 「では、ほかになにかありませんか」

「はい」

 とマリンが手をあげました。

「何ですか」

「ぼくも、モッヒのシャンプーを使つかってもいいでちゅか」

 マリンにはおでこの上に、白い毛の部分があるので、そこをふわふわにしたいのです。

「しっぽにはふつうのを使つかいまちゅから、あたまだけ、モッヒくんのシャンプーを使って、いいでちゅうか」

「それは、もちろん、いいわよね」

 ねっ、とべらがモッヒを見ました。

 

 モッヒの目になみだがたまってうるうるしていましたが、ついにあふれ出て、どっとちました。そして、わーんという大声を出して、き始めました。

 べらはショックです。わたしが、かせた?

 何が何なのか、べらにはわかりません。

「べらちゃんはマリンのおねがいばかりきいて、ぼくのことなんか思ってくれない」

 とモッヒが言いました。 

 べらがマリンのねがいにはストレートにオッケーを出しましたが、モッヒの願いだって聞いて、シャンプーは、他の人は使わないように言ったはずです。

 でも、よく見てみると、みんなあたまにはがなくて、シャンプーが必要ひつようなのはモッヒとマリンだけなのでした。

 モッヒが洞窟どうくつの風みたいに、あまりかなしい声に泣くので、みんな、べらにどうにかしてというような目で見ています。


「みんな、冷静れいせいになれよ」

 と、トットが言いました。

「このハッピー・ファミリー・コンテストはどんなコンテストなのか考えてみよう。もっとハッピーになるための、コンテストだろう。だから、こんなことで、もめてはだめだ。優勝ゆうしょうすると、何がもらえるか、知っているだろ」

旅行りょこうける」

 とクマハチです。

「行きたいか?」

「行きたいでちゅ」

「行きたい」

 モッヒもしゃくりあげながら、「行きたいっす」と答えました。

「それじゃ、やるっきゃ、ないだろ」


 べらはトットがきゅうに大きくなったと思いました。

 大きくなったのは姿すがたではなくて、心のことですよ。

          

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る