14. 大切なオルゴール

 町に行っていたみんなが元気げんきかえってきたようです。

「かえってきたーっ」

 ゴーちゃんがそう叫んで、げんかんへんで行きました。

 外からうちのだれかが帰ってきた時って、なぜかとてもうれしいですよね。

 うちの中がきゅうににぎやかになりました。


 クリスマスを楽しんだみんなには、何やら秘密ひみつがあるようです。

 べらがやってくると、トット、クマハチ、モッヒがまわりをとりかこみました。

「べらちゃん、ユニオン・スクエアには大きなツリーがあったよ」

「スケートリンクがあって、クマハチがすべったんだぜ」

「モッヒのリクエストで、チャイナタウンにも、きました」

 今日きょう出来事できごとをあれこれ説明せつめいしている間に、マリンが後ろをそっと通り抜けて、何かをはこんでいきました。


 おやっ。

 これは何かある。あやしいぞ。

 ゴーちゃんが、そろりと後をついていきました。

 マリンが、戸だなに何かをかくそうとしています。

「何をかくそうとしているだい」

「きやっ。おどろかさないでね、シャワーがでちゃうとこまりまちゅから」

「ごめん。そういうつもりじゃなかったよ」

「だいじょうぶでちた」

「人には見せられないものをかったのかい」

わるいものなんか、かってないでちゅ。でも、べらちゃんには秘密ひみつでちゅよ」

 マリンがはこをあけて、中を見せました。

 それはべらちゃんへのクリスマスプレゼントのかわいいオルゴールです。


 スケートをはいた子供こどもたちがクリスマスの音楽にのって、すべります。

「たまには、いいことをするんだな」

「べらちゃんはきっと気にいりまちゅよね」

「そんなの、気にいるにまっているだろ。かしてみろ。ちゃんとかくしてやるから。ぼく、上のほうまでとべるんだから」

「ゴーストはいいでちゅ。いろんな所へ行けて」

 ゴーちゃんがマリンをじろりと見ました。

「生きているほうが、もっといいよ」

 ああ、そうでちゅね、とマリンは思いました。

 

 べらのベットのよこには、バラがついた木箱きばこのオルゴールがあって、それをきいているのをゴーちゃんも知っています。

 だから、オルゴール大好きなべらちゃんが、このプレゼントを見たら、うれしくなって、きゃっとびあがって、いちゃうかもしれません。

 みんなもそんなことを想像そうぞうして、自分じぶんたちのほうがうれしくなっているのです。


「マリン、それはなに?」

 ゴ―ちゃんは、マリンが大事だいじそうににぎりしめているものをゆびさしました。

「これはフォーチュンクッキーといって、未来みらいいてある小さなかみが、クッキーの中にはいっているんでちゅ」

「そんなこと、知っているよ。マリンは知らなかったのか」

「チャイナタウンの小路こうじにこれを作っているところがあって、無料ただでもらえまちゅ」

 ふうんとゴーちゃんがうでをくみました。ゴーちゃんはフォーチュンクッキーは中華料理ちゅうかりょうりべるともらえると思っていたのです。


「ぼくは田舎者いなかものだし、ずうっとひとりで住んでいて、スカンク学校がっこうにもけなかったから、知らないことがおおいんでちゅ」

「そんなことないよ。マリンはとてもあたまがいいとぼくは思っているんだ」

「ほんとでちゅか」

「しんじないのか」

「しんじるけど、今までそんなこと言われたことないから、おどろいちゃたでちゅ。うれしいでちゅ。これ、おれいでちゅ」

 マリンがふたつのうちのひとつのフォーチュンクッキーをくれました。

「いいの?」

「うん。ひとつはお母さんにとっておくけど、ぼくの分はあげまちゅ」

「ありがとう」

 ゴ―ちゃんがクッキーをわって中からかみり出すと、それには

「さがしものがみつかる」と書いてありました。

 ゴ―ちゃんが、さいこうにうれしそうなかおをしました。


「マリンはずうっとママとはなれてくらしているんだろ。さみしくないのかい」

「ううん、さみしくない」

 とマリンがくびをふりました。

「さみしい時もあったけど、生きていくためには仕方しかたがなかったし、今はべらちゃんのうちで、みんなといっしょにくらして、ぼく、ものすごくハッピーなんでちゅ」

「そうか。それは、よかったじゃないか」

 とゴ―ちゃんが言いました。どっちが年上なんでしょうね。


 リビングでは、トット、クマハチ、モッヒがべらに、あれを見た、これを見たとエキサイトに話しています。ダウンタウンって、ふしぎなエネルギーをくれますよね。

「べらちゃん、これを見てくれ」

 モッヒが、1まいのチラシを見せました。

「Happy Family Contest」

「ハッピー・ファミリー・コンテスト」と書いてあります。

「ぼくたち、ハッピー・ファミリーだから、ぴったりだ」

 とトットはきげんがよいです。

「ぼくたちはきっと優勝ゆうしょうします」

 とクマハチです。

「このコンテストに出ていい?」

 みんなの目がべらを見つめています。

「何のコンテスト?」

「かぞくそろってやることなら、何でもいいんだよ。うちにはラッパーのモッヒがいるから、ぼくたちはうたでいこうとはなしあったんです」

 とクマハチです。

「みんなが出たいのから、わたしはオッケーよ」

 わーい、とみんなが手をたたきました。


「コンテストに優勝ゆうしょうしたら飛行機ひこうきのきっぷとか、もえちゃうんだぜ」

 とモッヒです。

「そしたら、みんなでどこへ行こうか。ぼく、アラスカがいいです」

 とクマハチです。彼はシロクマなので、さむいところに行きたいのです。

「ぼくはアフリカがいい」とモッヒ、「ぼくは、ハワイだ」とトットです。

 

 その時、「タイヘンでちゅ」とマリンがかけてきました。

「ゴーちゃんのママはにんげんで、ちきゅうで生きているでちゅ。べらちゃんがママをさがしてくれるんでちゅ」

「なんのことだい。ゴーちゃんのママを、べらちゃんがさがすということかい」

 とモッヒです。

 みんながまた、べらを注目ちゅうもくしました。

「そうなのよ。さっきから、それをつたえようとしていたのよ。だから、みなさん、ゴーちゃんママさがしのアイデアと協力きょうりょくをおねがいしますね」



 


 

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