7. オットセイのトット

 では、ここで べらの仲間なかま紹介しょうかいします。

 スカンクのマリンがくわわるまで、べらのうちのオットセイのトット、白クマのクマハチ、ライオンのモッヒが住んでいました。

 それに、てんとう虫のおしんがいます。おしんは小さいのでどこに住んでいるのかはわかりませんが、べらにずうっとよりそっていて、こまったことが起きると、すっとあらわれます。


 トット、クマハチ、ライオンの3人がベラの家にやって来たのは、2年前の雨の日でした。べらがこの家に引っこしてきて、すぐのことです。引っこしのダンボールをようやく片付けて、ソファに座ったら、部屋へやがさみしく見えました。そしたら、雨がふってきました。

 雨の日はくらくてものかなしいしいです。

 だれかとはなしたいなと思っても、だれもいません。いつもおしんが近くにいますが、てんとう虫なので、冬と夜とさむい日は、ねむっているのでだめなのです。

 べらは青いかさをさして外に出て、町まで行きました。して、ミッション通りのトリフトショップ、つまり中古品ちゅうこひんっている店のバスケットの中に、さんにんを見つけました。家にれて帰って、お風呂(ふろ)にいれてきれいにして、こわれたところをなおしてあげると、動物どうぶつが話しはじめました。


 では、トットの話からです。

「ようこそ、アシカさん」

 べらがあいさつをした時、

最初さいしょっからそうくるもんね。ぼく、アシカじゃない。オットセイだ」

 と彼がおこったように言いました。

「どうちがうの?」

「足を見てよ。オットセイの足のほうが、アシカより長くてきれいなんだ」

 トットはプライドをきずつけられたようでした。

「ごめんなさいね」

「しろうとには見分けがつかないから、しかたがないよ」

 トットがやさしくなりました。

 オットセイの本名は「オットット」ですが、りゃくして「トット」です。日本には有名なトットちゃんがいますけれど、こちらはトットはオットセイです。


 このトットにはひとつ問題もんだいがあります。ひとつというか、さい大の問題は、このトットはおよげないのです。だからいつもうきぶくろをもっています。

 泳げないオットセイが世の中にいるはずがないって?

 そんなことを言う人がいたら、べらならこう言うでしょう。

 You don’t know anything!

 あなたは何も知らないのね。

 飛べない鳥がいるように、泳げないオットセイだっているのです。

 世の中には、いろんな人がたくさんいるのです。

 

「うきぶくろになんてもっていて、おかしいだろ。みんなみたいに、笑っていいよ」

「おかしくなんかないわ。人とちがうのって、いいことじゃない?」

 べらがグーのサインを出しました。

 「それが個性こせいだっていうのかい。ぼくはそういうのはいらないんだ。ふつうがいいんだ。なんでも、みんなと同じがいい」

「ふつうはつまらないわよ。いいの?」

「ふくとかヘアなら、べらちゃんみたいに、人とちがうのがいいけど、オットセイがおよげるのは、ふつうのことなんだよ」

「じゃ、およぎのれんしゅうするしかないないわね。やってる?」

「これから、やることにする」

「そうだわ。およげないのなら、立って歩くれんしゅうをすればいいんだわ」

「べらちゃん、そっちのほうがもっとむずかしいんだよ。ぼく、足が短くて、からだが大きいんだから」

「あっ、そうかぁ。うちのバスタブ(おふろ)でれんしゅうすればいいわ」

 べらは人はいいけれど、時々天ねんなのです。

 

「わかった。れんしゅうする」

 トットがべらの家に住むことになって、ふたりはハイタッチをしましたが、トットの手は前足まえあしなのでつよすぎて、べらがすっんで、どしんとしりもちをつきました。

「ああ、ごめん。べらちゃんがにんげんだって、わすれてた」

 それから、トットは、時々バスタブでおよぐ練習れんしゅうをするようになりました。

 トットは、いつか、いつくものなみり、すいすいとおよいで、また波に乗り、べらが話してくれた日本という国に行ってみたいと思っているのです。

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