5. マリン、またべらちゃんの家へ
マリンは風のグランドビュー公園にいて、身体からくさいにおいがすっかり抜けるのを待ちました。そして、2週間たった時、またべらの家をたずねました。
それは、青いビニールをぴっと広げて、空にはったみたいなぴかぴかの朝でした。
マリンは、
この間は、うまくいかなかったけど、きょうはゆっくりと話すんだ、と心に
「ごめんくだちゃい」
マリンはそう言ってから、少しそわそわしました。
「はーい」
べらがにこにこして出てきました。
「いらっしゃい。また来てくれたのね」
べらの目がきらきらしています。
べらの後ろから、この間のオットセイと、ライオン、それから、なぜかハチのコスチュームをきたシロクマが顔を出しました。
「こちらがオットセイのトット、ライオンがモッヒ、シロクマのクマハチよ」
とべらが
さあ、こんどはぼくのばんだ。きちんとあいさつするんだぞ、とマリンは自分に言いました。ぼくだって男のスカンクなんだ。がんばろう。
マリンは右足を一歩前に出し、右の手のひらを上に向けました。
「てまえ
みんなは口をほかんとあけていましたが、マリンは「よくあいさつのしかたを知っているね」、と
「マリンヘッドランズといっても、広うござんちゅ。生まれはポイント・ボニータの近くでござんちゅ。
その時のべらの顔ときたら、これはどういうことかという答えをさがして、目の玉がきょろきょろしていました。
「あのう、はい。マリンくん、じょうずにできました」
べらはほめてくれましたが、後ろにいたみんなが、空気をいれすぎた風せんがばくはつしたみたいに、どっと笑いました。
ええっ。ぼく、ものすごい間ちがいをしてしまったのかな。変なことを言ってしまったのかな。たくさんのクエスチョンマークがマリンの頭に浮かびました。
このあいさつはブルーノというしば犬から習いました。
マリンがにおいがなくなるのをまっていた時、ブルーノに出会ったのです。そのブルーノの話では、べらのことは昔から知っていて、今では家の
べらは半分日本人だから、日本の正式なあいさつをしたほうがいいよ、とそのやり方を教えてくれたのです。
日本の犬はとてもしんせつだとマリンはと
マリンがなんども
ジェフの前でやってみると、
「クール、クール。サイコー。べらちゃんもよろこぶよ」
ジェフはグーとおや指を立てて、ほめてくれました。
だから、マリンは自信をもっていたのです。
みんなに笑われて、マリンは身体中の血が頭にのぼって、
また、ストレスがたまってきたようです。急がなくてはにおいシャワーが出そうです。
「べらちゃん、
「わたしがマリンヘッドランズに行かなかったのは、大きなお
「ツアーガイドなんでちゅか」
「そう。いつもは市内の案内だけれど、あれは特別で、長かったの」
「べらちゃんはしょうせつも書いているんだぜ
とライオンのモッヒが言いました。
「でも、コンテストに、うかったことはないんだ」
とオットセイのトットです。
べらがふたりをにらんで、「しっ」と言いました。
「べらちゃんが元気なら、ぼくはいいんでちゅ。さよなら」
もう
「マリンくん、てがみを書いて」
べらがはだしでドライブウェイまで出てきて、大声で叫びました。
「てがみを、書いてね」
マリンは走りながら、ジェフとブルーノのコンビにだまされたのだとわかりました。なぜ、気がつかなかったのだろう。からかわれていたのに、ばかだったなぁ。
世の中は冷たいなぁ。ぽろぽろと
ゴールデンハイツ公園に行くと、ジェフとブルーノがへらへらと笑ってまっていました。
「べらはよろこんでくれたかい」
「ぼくをだましたんでちゅか。ブルーノさんはしんせつな犬だと信じていたのに」
「おまえがあまりに
「シバ犬だというのも、うそでちゅね」
「おれはシバ犬だとは言っていない。シバ
「べらちゃんとしたしいなんて、うそでちゅよね。おかげで、ぼくは大切な人の前で、はじをかいてしまいました。ぼくはすごくかなしい」
「ふうん。あのパッションフルーツみたいなちゃらんぽらん姉ちゃんが、そんなに大切なのかい」
とジェフが言いました。
「べらちゃんのことをそんなふうに言うなんて、ゆるちぇない」
「怒ったか。決とうでもするのか、ちびスカンク」
ブルーノがたたかうポーズをしました。
ジェフが「やれ、やれ」とはやし立てました。
マリンはけんかはいやです。急いでにげました。
「おまえはチキンか。おくびょうのこしぬけスカンク」
ジェフが
「おれ、けんかでは負けなしでちゅ」
と、ブルーノがマリンの口まねをして、人と犬のコンビが笑いました。
マリンは5メートル先まで行き、そこでするどい目をしてふり返り、ブルーノの顔をめがけて、「イエーッ」、ジェフの顔をめがけて「イエーッ」、全力で、くさいシャワーをふきかけました。
ヒューッ、パシン。ヒューッ。バシン。
くさいシャワーはブルーノとジェフの顔にストレートに
マリンはにおいからにげて、ずうっと下のゴールデンゲート公園までかけて行きました。なんか、少したたかい方がわかったような気がしました。
考えてみたら、
ぼくはいつも
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