現実ってなんでこうも・・・

「はぁ・・・。」

突然の奇行を少し恥ずかしいと思い返し恰好がつかない自分への戒め半分のため息をついた。俺はカッとなると見境がつかなくなる人間だ。そんなことは親も重々承知しているはず。なのになんだあのメモは。何であんな嫌がらせのメモを付けるのか?黙って飯を提供していればいいのに何を考えているのか本当に不思議になる。


 ワン・・・ワン・・・

外で犬が吠えている・・・。我が家で飼っているシルカというメスのシェパードだ。きっと俺の投げた食器の音に驚いたのだろう。物音に吠えるとか本当にバカ犬だ!


 元々は室内犬だったのだか、俺がSWをプレイするたびに散歩をせがむので室外犬に帰るように親に言いつけたのだ。あいつも大人しくしていれば家の中で冷房三昧だったのにな、とどこか他人事のように考えていた。


 ワン・・・ワン・・・ワン・・・

うるさい!


 ワン・・・ワン・・・ワン・・・

うるさい!!!!


 ワン・・・ワン・・・ワン・・・

うるさあああああいい!!!!!


 そうか、シルカは家を追い出した俺を恨んでいるんだな?だからこんな夜中遅くに吠えるのだな?そうだしつけが必要だ!飼い主に逆らっちゃいけないし、飼い主に恥をかかせる犬なんて生きている資格がないんだ!


 そう考えると、俺は引き出しを開けて中学校の木工の事業で使っていたハンマーを取り出した。そうだよね・・・・。そうなんだよね・・・・。やっぱりしつけが大事だよね・・・。大丈夫・・・。大丈夫だよ・・・。痛い思いはさせないから・・・。すべては一瞬のことだよ・・・。


 俺は部屋のドアを開けて玄関に向かう。この時、何を考えていたのか後々思い出しても全く理解できない。ただ、犬の吠える声が俺を責め立てる罵声のようにしか思えなかったのだ。飼い犬の分際で俺に歯向かうなんて正しくない。すべてを正しくすることが俺の正義だ!そう考えていたのだろう。


 ガチャッ

玄関のドアを開けると変な感覚にとらわれた。部屋で時計を見たときにはまだ深夜2時だったはずだ。どんなに時間がたっていても2時半だろう。まだまだ真っ暗な時間だ。しかし、外は真昼のように明るいのである。空は青く、空気は熱気を帯びていた。


 妙な視線を感じて後ろを振り返ると、そこにはお袋が立っていた。

手には・・・血に濡れた包丁が握られていた・・・。目には涙を浮かべて・・・そのまま崩れ落ちるように座り込んだ。慌てて駆け寄る親父・・・。親父は何かを叫んでいるが俺にはなにも理解できない。ただ、一つ理解できたのは・・・「あー俺はこいつに殺されたのか・・・」ということだけだ。親とは本当に勝手な生き物だ。勝手に生んで、役に立たないと感じたら勝手に殺して・・・。


 ワン・・・ワン・・・ワン・・・

相変わらずシルカがけたたましく吠えている。


 ワン・・・ワン・・・ワン・・・

シルカの鳴き声に交じってパトカーのサイレンが聞こえてきた・・・。親父よ、こういう時は先に救急車をよんでほしかtt・・・

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