空気さん

天川裕司

空気さん

タイトル:空気さん


僕は、人一倍デリケート。

人から邪険にされたくない。

注目を浴びるのも苦手なところがある。

何かを指摘されるのもときには嫌。

褒められることでさえも、

余計に人から注目されて何かよからぬ

トラブルにでも巻き込まれないか…?

なんて、普通、人が思わないような事で悩んでしまう。


「はぁ。こんなんでこの先やってけるのかな…」


人知れず、悩んでしまう。


そんな時、或る友達からこんな事を聞かされた。


友達「空気のような存在になれる人って、一見、存在感がないように見えるけど、あれって結構重要なポジションだよね?」


友達「だって人は空気がなきゃ生きていけないし、かと言って特別注目されることも普段はないし、その空気のような存在の人にとっては、日頃、結構、生活しやすいんじゃないかなぁなんて時々思うんだ」


確かに一理あると思った。

あまり普段、そんなことを考えなかった。

だから余計に灯台もと暗しの感覚で、

新しい発見でもしたかのように思ったのかも。


それから僕は、その空気のような存在について考えた。


していると、そんなある日の夜。


空気さん「空気のような存在が好きだって?じゃあ君、僕のテリトリーへ来るかい?」


「え?誰…?」


ディスクに向かって椅子に座っていると

ふと、どこかからそんな声が聞こえたんだ。

でもこの部屋に僕1人。

他に誰かなんていない。


すると空気の中から、まるで空気が集まって人の形を作り上げたのか?

その人の形が僕にはっきり見える形で言ってきた。


空気さん「僕だよ。ずっと君の周りにいたんだけどキミ気づかなかったからさ。こうやって出てみた」


「うわあ!」


驚いたけど、とりわけ何か危害を加えてくるような様子もなく、

どちらかと言うと落ち着いた表情をしていたのでどこかで安心し、

それに加え空気のような存在について考えていたからか、

僕はそいつに「空気さん」と名づけ、

空気さんとの関係を近しいものにした。


そして…


「……本当に僕でも空気のような存在になれるかなぁ?誰かにとりわけ注目されないで、それでもいつも必要とされて、大事にしてもらえるような」


空気さん「じゃあ僕の手をとってこちらへおいで」


差し出した空気さんの手をとると、

空気さんの横にぼーっとした形で空気が広がり、

そこに空間が見えて、向こうの世界が見え、

そこに僕は足を踏み入れた。


それから僕は変わった。

生活が変わったのだ。


日常、生活していて危険かな?と思った状況にめぐり合えば、

ポッとした感じで空気に溶け込み、周りの人には見えなくなったようだ。


でも周りの人はとりわけそれに注目せず、

消えてまた出てきた僕を温かく迎えてくれて、

その後もずっと大事にしてくれる。


なんか前より大事にしてくれて、

どこへ行っても歓待されていたようだ。


つまり僕はこの世で生活していく上で、

姿を消したり現したりする事が出来るようになった。

これって幸せなことなのかどうなのか?

本来、人が求めるべきだった幸せなのか、そのあり方なのか?


それについては今後、

また空気さんと一緒に相談して

決めてみたいと思う。


動画はこちら(^^♪

https://www.youtube.com/watch?v=bgpczr72Ces

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空気さん 天川裕司 @tenkawayuji

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