舞空術

天川裕司

舞空術

タイトル:舞空術


僕はほんの幼少の頃からドラゴンボールに憧れ続けた。

中でも特に憧れたのは筋斗雲でもなくあの舞空術。

自分の力で空を飛べる…この魅力が僕の心を魅了し続け、

自分も絶対それをしたいと、出来るようになりたいと願い続けた。


そして僕らの小学校では、その舞空術遊びが本当に流行った。

でもまぁなんて事は無い。

階段から飛び降りたり、ちょっと高い所から飛び降りたりし、

その瞬間「自分が飛んでる」みたいな感覚を憶え、

それを友達に見せて満足している。


あるいは階段から足を投げ出して、

地面に足がつかないその感覚を舞空術の感覚に捉え、

その感覚をずっと友達と一緒に楽しむだけで遊び終える。


つまりそれだけ、みんなあの舞空術に憧れていたのだ。


でもそんなある日のことだった。


「お?…おお!?俺ほんとに飛んでる!?」


いつものように学校の階段から飛び降りた時、

体がふわっと宙に浮き、地面に着地するまでの時間が長かった。

他の友達はタンタンと地面に飛び降りているのに、

僕だけその着地するまでの時間がよほどに長い。

本当にふわふわ浮いていたのだ。


それを友達に改めて見せると…


友達「うわ…うわあぁあぁ!!!」

と言ってみんな逃げ出した。


先生に見せてもギョッとした顔で僕を見つめ、

やがて「あわわわ」といった感じに腰を抜かした。

親に見せても先生の反応と同じ。


「なんでそんなに怖がるんだろう?なんでみんな逃げるんだろう?」

と思っていたら、それから数日後。

友達や先生、親がみんな揃って僕の前に来て、

「どうやってあのとき僕が飛んでいたか?」

それを簡単に説明してくれた。


「え?!ウソ??そんな感覚全然なかったけど」


なんと「舞空術できた!」と思って空中にふわっと浮いていた時、

僕の背中にはかなり大きな翼が生えていたらしい。

それは天使の羽のようにも見えたらしく、

でもその大きさからみんなビビリ上がってしまったようで、

説明がつかないその現象を前に、逃げ出したり、

「あわわわ」と腰を抜かしてしまったりしたらしい。


そのことが分かった直後から、

僕はもうあの舞空術ができなくなった。


これはほんの子供の頃の話で、今は社会人。

今から思えばいろんなことを思わされる。


人は「空を飛びたい」「翼が欲しい」なんていろいろ夢を見たりするけど、

きっとその現象を目の当たりにすれば、

それに説明がつかない事の方を大きく捉え、

夢を捨てて逃げ出しちゃうんだ。


夢と現実は別物、この言葉も蘇ってきた。

「人は昔、鳥だったのかもしれないね。空がこんなにも恋しい」あの人の歌も蘇ってきた。


子供の時から願い続けてきたあの純粋が、

僕を本当に飛ばしてくれたのかもしれない。


人は生まれながらにして常識を持ち、

それを勉強をさせられ、同時に生まれ持った

夢のゲージをその常識が超えてしまうと、

もう夢を見ることができなくなるのか?


僕は今リアルで、ミスターチルドレンになりたいと願い続ける。

でもまだその境地に達していない。

植え込まれた常識、身に付けられた合理の数が、

よほどに厚い壁を仕上げているんだろう。


動画はこちら(^^♪

https://www.youtube.com/watch?v=LSFhzI21BmQ

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舞空術 天川裕司 @tenkawayuji

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