第3話 かみさまのいうとおり?

私の声に振り向いた美女は「あっ!お邪魔します!!」とペコリと頭を下げた後、マシロとクロガネを抱え込んで話始めた。


「もう、もう、貴方たちのことずっとずっとずぅっと探していたんですよ?どこかにシルシでも残しておいてくれたらよかったのにっ」

「にゃう。んななう、にゃんにゃ」

「え?やり方がわからない?魔力を固めてペイッと投げるだけで…はっ!こちらには魔力が無いんでした!」

「に~…」

「そ、それはともかく!貴方たちが生き延びてくれて良かったです。共にオリジナルに迷い込んでしまった他の子たちはすぐに見つかったのに、貴方たちだけ見つけられなくてとっても焦りましたが…」

「なう、ななう。んに~、にゃ!にゃにゃんにゃん」

「んにゃ」

「ふんふん、ええ?襲われそうになって逃げた?それは大変でしたねぇ……そして途方に暮れていたところで、彼女に助けてもらったと」

「なう」


美女はふんふんと頷いては問いかけを繰り返し、2匹はそれに答えるように鳴いている。

私もよく2匹に話しかけて会話をしている気分でいたが、目の前で繰り広げられているものはそういう一方通行ではなく、しっかりと会話ができているように見えた。

美女と子猫2匹でも、こう見るとシュールに見えてくるのは何故だろうか…

電気をつけてしばらく眺めていると一通り話し終えたのか、2匹は解放されてすぐさま私の足元に走り寄ってくる。美女も一緒にこちらに歩いてきたかと思うと、私の手を取って話始めた。


「この子たちから、貴方が良くしてくださったと聞きました。この子たちを助けてくださって本当に本当にありがとうございました。

貴方のおかげで、この子たちを無事に連れて帰ることができます」


にこりと微笑まれ、ドキッと胸が弾む。先ほどはどちらかというとお転婆のような印象を受ける方だったが、今は落ち着いて大人っぽいような、穏やか抱擁系なような…そんな雰囲気の美女に微笑まれて頬の熱が上がってしまうのは仕方のないことではないだろうか。


「いえ、そんな……って、え?連れて帰る、ですか?」


美女の雰囲気に気を取られていたが、聞き捨てならない言葉が聞こえた気がする。


「はい、この子たちの…いえ、私たちの世界へ」

「すみません、何を言っているのかちょっとわからなくって。マシロとクロガネはうちの子で…というか、貴方はどこからこの部屋に?貴方は何者でしょうか?」


頭が混乱しているせいで、上手く状況が読み込めない。

そんな私に美女は「ええ、1からご説明させていただきますね」と、再びニッコリ笑ってゴホンと喉の調子を整えた。


「貴方は神を信じますか?」

「そういう勧誘はお断りしています」

「に"っ!!」

「なうっ」

「ちょ、ちょっとした神様ジョークじゃないですか!いったーい!」


どうやら2匹が美女の両足を攻撃したようで、うずくまって足元を抑えている。よくやった。


「もう、せっかくしっかりこちらの神様っぽくできてたのに!」

「シャーッ!」

「うっ…そんなに怒らなくていいじゃないですかあ…」

「にゃう、んなうなう、にゃ」

「はい、ちゃんとします…」


説教されているような雰囲気で、2匹に責められている美女。どうやらおかしい人っぽいが、悪い人でもなさそうだ。美女は立ち上がり、1回目よりも強めにゴホンと喉を整えた。


「仕切り直しまして…灰祢 瑠衣さん、初めまして。私はクティノシレスタの第三の管理者です。個体名はないので、そのまま第三の管理者と呼んでください」

「私の名前…えっと、第三の管理者さん?」

「はい。第一から第七までいますが、上から3番目という意味で第三の管理者です。そして、クティノシレスタというのは、わかりやすく言えば異世界ですかね」

「異世界…え、異世界ですか?最近流行りの?」

「ふふ、そうですね。最近流行りの」

「あれ、でも管理者…神様ではないんですか?」

「そうですね。先ほど神を信じますかと問いましたが、実はクティノシレスタには神様という存在はいません。いえ、いないというか…ええと、少し複雑なんですが、聞きたいですか?」

「できれば」

「承知しました。では、お話しますね」


第三の管理者さんが深呼吸の為に目を閉じたとき、重要なことに気づいてつい声を上げてしまう。


「あっ!っと、その前にお茶を!入れてきます!お客様に何も出さずにすみません。あまり客が来ないもんで、すっかり忘れていました…

それにずっと立ちっぱなしだとつらいですよね?そのソファにでも座ってもらって…あ、マシロとクロガネは登るなら爪でソファ引っ掻いちゃダメだからね!」

「あらあら、ありがとうございます。おかまいなく~でしたっけ?ふふふ」

「にっ」

「にゃう」


少し良い茶葉を使って緑茶を淹れ、机に並べる。マシロとクロガネは私の膝の上に乗りたかったのか、私が座った後に膝の上に乗って丸まった。


「お待たせしました」

「ふふ、お茶いただきますね。…あら、とっても美味しい」

「お口に合ったようでよかったです」

「では、お話を続けますね?」

「はい、よろしくお願いします」

「にゃっ」




「クティノシレスタは、元はこちらの世界の物語でした」

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