INA
ショッピングに行った。
ご飯を食べに行った。
カラオケもした。……ダークファンタジーの死にゲー世界で魔法的に無理矢理作った環境で、だけど。
何これ。
まるで、普通の女の子同士の思い出ばかりじゃない。
このあたしが。
力に溺れて、無法者のボスを気取っていたイタい女が。
ゲームを跨いで
こんなあたしにも、人間らしい思い出が、沢山出来た。
感謝しても、し足りない。
殺し・殺されても、何事も無く生き返る。
そんなVRMMOの世界で長く生活すれば、人間性が失われる。
そんな中で、あんたはあたしが出会った誰よりも優れた戦闘力を持っていた。
魔法戦士としても、クトゥルフ探索者としても、高機動兵器のパイロットとしても。
そして、人間で在り続けた。
あたしの事も、ヒトで居続けさせてくれた。
なのに、酷いよ。
現実で死ぬなんて。
今更、あたしを置いて行かないでよ。
勿論、自分の中にある、あんたから貰ったものは何より大切にして生きていくつもりだけど。
それでも。
心細いよ。
あんたに、会いたいよ、
今だけは。
気付けば、あたしは、よりにもよって、あの男の胸にすがり付いていた。
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