KANON
オルタナティブ・コンバットを辞めた後、君からあの告白を受けてから、覚悟は固めて来たつもりだが。
いざこの時が来ると、堪えるものだな。
当分、何もする気が起きそうに無い。
何があっても沈む暇など与えられなかった――生きたくても生きられなかった君に対して出て来た第一の言葉がこれとは。
私は、本当に身勝手だ。
君の分までひた向きに生きる、と誓えない。
今すぐには。
思えば、君には甘え通しだった。
こうして、死んだ後ですら。
私は、生まれついて人を愛せない。
オルタナティブ・コンバットで、君にだけ打ち明けたと思う。
人は、人を愛してこそ、ヒトの中で生きていられる。
そうでは無い私の事も、君なら何も言わずに“居る事”を赦してくれる。
そんな予感があったから、カミングアウトした。
結果、その予感は正しかった。
これもまた、社会から弾かれまいとした、身勝手な生存本能だったのだろうか。
駄目だな。
君について思うと、どうしても自分語りばかりだ。
よし!
ここは私らしく、武器開発者目線で話そう。
何と言うか、ロボットものでもファンタジーでも、君が使う武器は考え甲斐が無かった。
高度な機構や付帯魔法を伴うよりも、シンプルな性能の物の方が、君の場合は上手く使ってくれるからだ。
例えば、オルタナティブ・コンバットで二種の
君に渡したのは脳波コントロールタイプ。
君に渡さなかったのは完全オートタイプ。
作るのが難しかったのは、オートの方。
高機動兵器同士の戦いで、自分の身体を動かしつつオービットも操作しなければならない負荷とは、君が思っていた以上の無茶だったのだよ。
したがって“軍隊”にとって有益なのは、簡単な命令で的確に動いてくれるオートタイプになる訳だ。
だが、君個人がより成果を挙げられるのは、構造が単純な脳波コントロールタイプの方だった。
君の戦力が増強された結果、トップランカー“キング”との対決と言う“局地的な戦術”で勝利出来た。
君と
一つ、学んだよ。
武器の強さが、必ずしもユーザーの最適解と比例しないと言う事を。
設計は、使う相手の事を考えて行うべきである事を、
この気付きは、私の中で生き続けるだろう。
月並みだが、君が生きた事で生まれたものを、私が生きる限り受け継ぎ続ける。
願わくば、その私の武器を通して、また別のユーザーに何かが残らん事を。
そうすれば、君と言う存在はある意味でずっと生き続ける。
そうなるよう、なるべく善処させて貰うよ。
担い手が私と言うのも頼りないだろうが――
それじゃあ。
また会おう、
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます