【※読む前に紹介文を熟読してください】ある女性のVR告別式

聖竜の介

世界をまたいで共に在った参列者

LUNA

 何のゲームにもログインせず休眠していた私の意識に、一つの通知が割り込んだ。

 送信元は……HARUTOハルト

 私がその気になるまで会わないと言ったはずだけど、と憤慨しかけて――それは胸騒ぎに上書きされた。

 VR休眠者を強制的に起こすダイレクトメッセージとなると、余程のコトだ。

 そして。

 私は心のどこかで。

 その可能性を、浮かべていたのではないか。

 

 MALIAマリアが、現実で亡くなった。

 

 私と2つの世界ゲームを共に生きた、戦友が。

 世界の枠を出て、一緒に歩んできた、私のトモダチが。

 あいつは、HARUTOハルトは、事実の一文のみを寄越してきた。

 そして。

 

 HARUTOハルトは、VR世界に接続しつつも何のゲームにもログインしていない、真っ黒の世界“フォルム”に、私達を集めた。

 生前、MALIAマリアとパーティやチームを組んだプレイヤー全員を、だ。

 その数、10を超える。

 私からすれば、知らない顔もいくつかあった。

 私自身、HARUTOハルトのパーティ全てに参加していたワケではない。

 

 この座標に私達を呼びつけたホスト――HARUTOハルトが、黒一色の世界でただ棒立ちになっていた。

 色んな感情が胸の中でぐちゃぐちゃになる。

 私は、あの男に早足で詰め寄る。

 あの男は、私をただ真っ直ぐに見据えるだけ。

 

 どうして、

 どうして教えてくれなかった!?

 私が抜けたあの日、MALIAマリアの余命が残り少ないってコト、教えてくれていたら!

 私は、彼女の死に目に、会えた!

 一言、さよならとかありがとうくらい、言いたかったよ!

 ……。

 …………。

 分かっている。

 個人的な感情を清算するために私は一方的にパーティを抜けて休眠に入った、HARUTOハルトは元よりMALIAマリアが私を宙ぶらりんな状態で引き止めるようなコト望むハズはない、あのは自分のコトに頓着なくて他人ヒト様の幸せばかり望んでて、私の自業自得だ、彼を責めるのは全くの逆恨み・お門違いだ。

 

 とうとうあの男との距離が1歩を切って。

 私は、あの男の横っ面を張り倒すハズだった手を力なく下げて。

 ただ、あの男の前で俯くコトしかできない。

 

 ねえ、MALIAマリア

 あんたって、いつもニコニコ顔しかしてなかったから、分かりづらかったんだけど。

 あんた、幸せだった?

 私は、あんたといた時間、幸せだったって断言するよ。

 何で?

 どうして、あんただったの?

 私も含めて、いくらでもいたよ、あんたの代わりに死んでいいヤツなんて。

 あんた、一番死んだらダメな人だったよ。

 これからだったじゃない。

 その、お人好しな笑顔で、なんとなーく救われる人ってのを量産してくの。

 でも、あぁ、そうだ。

 あんた、肝心な時にはきっちり厳しい人だった。

 ヘタすれば、一番えげつないくらいに。

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