オープンワールド死にゲー、クレプスクルム・モナルカからの参列者

AO

 もし、あなたやHARUTOハルトさんに出会わなかったら、ぼくは今ごろどうなっていたか。

 考えると背筋がぞっとする。

 きっと、誰の目にも留まらないようコソコソ生き続けた挙げ句、腐り果てて死んでいたのは間違いない。

 

 自己肯定感って、車で言えばガソリンのようなもの。

 尽きれば、ホントに身体が動かなくなる。

 否定されたから、認められなかったから、不貞腐れてるだとかではない。

 身体が、どうせ報われない無気力を“正しく”学習してしまった状態。

 本来、楽勝に繰り出せた必殺技だとか、出すのにとんでもない労力を要してしまう。

 そのうち、朝、寝床から起きることすら困難になり――あなたたちに拾われた頃のぼくは、まさにその状態だった。

 

 あなたもHARUTOハルトさんも、それはぼくをこき使ってくれたものだ。

 ぼくが正しく動かないと、自分達が死んでしまうようなタイトさで。

 それが……ぼくという人間をいつの間にか生き返らせてくれたんだ。


 ――おねがいします、AOアオさん!

 

 即死級の巨人に隙をさらしながら、ぼくの追撃がなければ容易に圧殺されるような状況の中、あなたは当たり前のようにぼくにそう振った。

 それが、ぼくにとってどれだけの救いとなったか。

 きっとあなたは、そのことに微塵も気づいていなかっただろうけれど。

 きっと、そういうところが――あなたがこれだけ多くの人々に愛された所以なのでしょう。

 

 虫の知らせだろうか?

 体感時間が遅くなるスローモーションのエリア“現在進行形のほろび”を攻略したあの時、ぼくはあなたが、そこに残りたがるのではないかと予感していた。

 結果、杞憂だったわけだけど……この結末を鑑みるに、全くの的外れでもなかったらしい。

 あなたは、きっとあったであろう生への執着との葛藤のすえ、余命から逃げなかった。

 こういうと、ピンとこないかもしれないが……それは同時に「自分がもうすぐ死ぬリアル」への直視をやめなかったことも意味するはずだ。

 ぼくには、到底耐えられそうにない。

 

 あなたは、綺麗な人だった。

 現実の容姿を忠実に再現したうえとはいえ、レベルアップ機能でいくらでも盛れるという前提にあってでさえ――ほかのどんな女性とも一線を画していた。

 ぼくの視覚にうつったあなたは、あくまでもVRで間接的に投影されたものだったけれど。

 それでも。

 あなたほど、綺麗な女性に出会ったことはなかった。

 きっと、これから先も、ずっと。

 

 光とは、暗闇の中にあってこそ一等輝くもの。

 あらゆる意味で、ぼくにとってのMALIAマリアさんとは、暗闇を照らす一条の光でした。

 あなたが天国に旅立った今も、それに変わりはない。

 

 あのゲームで、あなたは成り行き上、天使の翼を得たけれど。

 ぼくにとっては、あながち比喩でもなかった。

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