第2話

「健ちゃん、ケーキ買ってきたよ、七夕ケーキ」

「七夕ケーキ?」

「うん。彦星と乙姫の」


 いや、それ織姫だろ。


 と心の中でツッコミつつ、健は琴子からケーキの入った袋を受け取る。

 琴子と健は、つい数ヶ月前にアルバイト先の居酒屋で出会った。出会ってすぐに意気投合し、付き合うことになったのだ。


「健ちゃん、どっち食べたい?」

「じゃあ……乙姫?」


 何故かプゥッと頬を膨らませる琴子。


「ん? どした?」

「もうっ、いつまで間違えてるのっ!」

「え?」

「そんなに乙ちゃんが好きなら、地上じゃなくて海に行けば良かったのに」


 いやいや、間違ったの、琴ちゃんでしょ。つーか、なにその文句。


 というツッコミも心の中で流し、健はヨシヨシと琴子の頭を撫でる。

 その時ふと、健の脳裏に子供の頃の不思議な体験が蘇った。

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