第13話 交流
結局、比較者・ユヴェインは俺が買った。店長さんが常連割してくれたからだ。それとまた出たらキープしておいてくれるとも言ってくれた。
それでも、デッキに入れるつもりはない。シナジーはもちろんあるし、入れることも出来るのだが、ちょっとバランスブレイカー過ぎるから、周りが強くなってきたら、新しい切り札さっ!って感じで使いたい。
大会が終わった次の日である今日に、俺達が見守る中、体育館で授賞式があった。久我醒さんがトロフィーを手渡している。
「龍ヶ崎翼斗、一学年の部優勝おめでとう。」
「ありがとうございます!」
龍ヶ崎がトロフィーと賞状を受け取って壇上を降りた。
「それと、この場を借りて報告があるんだけどいいかな?」
久我醒さんが舞台袖を見て、満足そうに頷く。
「あの大会を見て私は決めたんだ。後継者は土宇陀くんにしようと思ってね。これまで、学校に来れてなかったと思うけど、それは修行でのことだからあまり攻めないで欲しい。
以上だ。諸君のこの先の健闘を祈るよ。」
「ここは、こうだから………」
授業中、少し考えに耽る。
土宇陀の不思議な行動への疑問は溶けた。だけど、最初に見た羽澄先生との会話の時のあの感じはなんだったんだろうか?流石にプライベートなことっぽいから聞けないけど、あれはちょっとヤバイ人の片鱗だと思う。土宇陀が変な方向に走らないと良いが。
キーンコーンカーンコーン………
「はぁい!授業終わりでーす。また明日しっかりと来てくださいねー!」
羽澄先生が弾ける笑顔で帰りのホームルームを省く。
歴史という枠で、カード達の歴史を勉強しているのだが、意外と面白い。元々日本史は好きだったし、カードの裏設定とか大好物だから、俺にとってこの授業は娯楽に等しい。
「狭間、この後空いてるか?」
「ん?未踏か。空いてるが……?」
「ちょっと一緒にショップ行かねぇか?お前の意見を聞きたい。」
「あぁ、良いぞ。」
「そうか、悪いな。ちょっと帰りの支度してくる。」
「おう。」
未踏は自分の席に帰った。
「ねぇ、レイキ。」
「あ?龍ヶ崎か、どうした?」
「今日、俺の友達と一緒に……」
俺はこの先のセリフを察してしまった。
「あぁ!悪い!今未踏と約束しちまった。また今度な。」
「あ、うん………そっか、分かった。またね。」
あからさまに肩を落とす。
ちょっと申し訳無いな………
「…おう。」
龍ヶ崎はまた友人達の所に戻って、帰宅していった。
「お前すごいな。」
「おわ!?」
後ろから未踏が突然現れて裏返った声が出た。
「あの龍ヶ崎の誘いを断るなんて。」
「ん?そうなのか?」
「あぁ。あいつ、優勝しただろ?だから皆あいつと仲良くなりたがってる。しかも、あいつはさっきみたいにグループが出来てるから、あの輪の中に入ろうと躍起になってる奴らもいるぞ?それに龍ヶ崎から話しかける奴なんて、あのメンバーを除いたらお前くらいじゃないか?」
「そうか………?」
「そうだ。」
まぁ、人気になるとは思ってたが、あのメンバーとしかほとんど関わってないとは。コミュニティは広くないと。俺?自宅警備員の人が六人いるし、年齢もバラバラだからコミュニティとしては十分だと思うぜ。
「まぁ、今じゃ手が届かなくなっちまったしな。いる世界が違うさ。」
「へぇ?前は仲良かったのか?」
「いんや?言うてそこまでだと思うぞ?一回だけ一緒にカドショ行ったくらいだし。」
「ふーん?まぁ良いか。俺のホームで良いか?」
「おう。新しい店の開拓は楽しみだ。」
「言えてるな。」
未踏に連れられてやってきたのは、こじんまりした個人店だった。
「おー良い感じだな。」
「気に入ってくれて嬉しいよ。それと、ここに連れてきたのはもう一つあってさ。これなんかお前のデッキにどうだ?」
未踏がショーケースの一枚を指差す。
「"見果てぬ闇・ハッピースマイリー"?能力は……」
金髪の少女が満面の笑みで血まみれの人形を三体抱え持っている。ちょっと不気味だ。
登場時、相手と自分は手札が五枚になるようにカードをドロー出来る。
自分が三枚ドローした時、手札から種族レイスのファミリアをタダでクリエートしてもよい。
相手が三枚ドローした時、自分の山札の上から三枚エレメントに置いてもよい。
この能力で、お互いのプレイヤーが二枚以下のドローだった場合、お互いのプレイヤーに三のダメージ。
「へぇ!良いな!」
「あぁ。これで今日のデッキ調整をチャラにしてくれ。」
「別に気にしなくていいのに………まぁ、ちょっと待ってろ。買ってくる。」
「やっぱりな。俺はデッキを並べておく。」
「ん。」
俺は足早にレジに向かった。俺達以外に客はいないが、失くなってしまうのではないかと不安になって駆け足になってしまったのは許して欲しい。
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