第12話 新たなカード

 学年別トーナメント戦は滞りなく終わった。学年別の一位と久我醒さんとの勝負は全て久我醒プロのストレート勝ち。やっぱ強いと言われるだけあるね、あれは。

 そこから変わったことは……あ、そういえば、土宇陀が不登校になったらしい。学校に来てもバトル台を使って授業には参加しないとか。相当龍ヶ崎に負けたのが悔しかったのだろう。






 とまぁ、他人の事は置いといて。俺達健全な学生は一学期末に試験がある。これは二学期の中間テストと被るビート検定五級のためである。この学校は三年生に最低でもビート検定三級を取得しないと留年になってしまう。だからと言うべきか、テストや授業も検定テスト寄りの内容が多い。

 テスト内容は、カードの効果や名前、果ては今活躍しているプロ選手のデッキ詳細や戦法まで。結構タイムリーな問題が多い。まぁ、それは三級からで、五級四級の問題は過去問を元に作成される。

 まぁ、その過去問が難しいんだが。

 前世の記憶で言ってみると、三級より上のテストはテレビやネットで詳しく情報収集すればヒットする情報だとしよう。(野球で例えるなら選手のポジションや決め球、右投げや左投げ等)

 だが、四級五級は歴史の内容に近い。普通に千年前のビートプレイヤーの名前と戦法とパートナーを答えよ、とか出てくる。しかも昔のことだから調べても本当かあやふやで、テストの過去問の解答用紙以外正解は無いようなものだ。それなのに過去問でこの名前のプロ選手のパートナーを答えなさいと過去問で出ていたとしよう。その五年後、そのプロ選手のパートナーと相性の良いカードをそのプロ選手のデッキの中から選びなさい、って問題に変わる。その相性の良いカードが何か、テストを作っている所以外知らないのに。

(前世の歴史で例えるなら

Q本能寺の変はどうして起きましたか?

A三好家の企てです(テスト製作者の持論)

 みたいな感じだ。まぁ、これは極論だけど。)

 つまりほぼ勘と言っても良い。なんだこの制度、ふざけやがって!


 ……だからこそ、五級四級を想定した学校のテストが学生生活で一番大変だと言われている。

 だってテスト範囲が直近三十年分の過去問だからね!ちなみに言うと、これでも落ちる人が半数いるらしい。怖すぎるよ………






 


 俺は現実逃避のために家から一番近いカドショに向かった。

「おや?レイキくんじゃないか!久し振りだね。」

「泳司さん、お久し振りです。今日も皆で討論会ですか?」

 いつもの自宅警備員の皆さんと合流した。

「そうだよ、今回は今日出てきた完全新規のこのカードをね。」

 一人がカードを渡してきた。

「比較者・ユヴェイン?へー……あぁ!この種族!」

「気付いたかい?それの種族、ユニヴァース・クラウン。図鑑にも乗ってない新規さ。だから、この種族はどんな特徴で、どんな戦法なのか話し合ってたのさ。」

「なるほど、じっくり見ても?」

「構わないよ。」

 イラストはポニーテールの少女かな、赤い目と白い肌で気品ある感じが王族って感じがする。

 能力は登場時、自分の手札、エレメント、ライフが相手より劣っている場合、山札またはセメタリーから好きなように相手と同じ数になるように加えてよい……か、強くね?

 攻撃時、ファミリアの数が相手より劣っている場合、自分の手札から相手と同じ数になるようにコストを支払わずにクリエートしてもよい……よくなくね?

 ん?このカードはデッキに一枚しか入れられない、か。

「どうだった?」

 俺がカードを戻して椅子に座ったことで、討論に混ざると判断したようで、意見を聞いてきた。

「そうですね、まずは強すぎます。これがコスト五でしょう?しかもパートナーではないですし、もしかしたらユニヴァース・クラウンという種族は全てデッキに一枚しか入れられないハイランダーデッキだと推測します。」

「おぉー。」

「なるほど。」

「確かにその線はあるね!流石音練学校の学生だ!」

 泳司さんに背中をバシン!と叩かれた。

「ってて、………にしても、種族はこの一枚だけですか?他には?」

「んーそれが無いんだよ。」

「店長にも伝えて、お店のカードプール全部漁ったんだけど見つからなかったよ。」

「……よく探せましたね。」

「そこは……ほら。ね?」

「俺達、自宅警備員は自由なのさ!」

「君もならないか?」

「え、遠慮しときます。」

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ユニヴァース・クラウン。どうするか何も考えていません。もしかしたらもう出ないかも。

                    by作者

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