第11話 三者三様
クッソォ…………あぁー負けたー!
自分としては、こんなに悔しい気持ちになるなんて思っていなかった。龍ヶ崎と土宇陀のバトルを見ていると、悔しさがドンドン出てくる。
まぁ、三強と呼ばれている俺としてはベスト4でも全然良いのだが、肉体的に若返ってるからなのか、少し感情的になりやすい。メリットでもありデメリットだな。
あ、龍ヶ崎が勝った。……あいつ、前より格段に強くなったな。トラップを使うタイミングがめっちゃ上手くなってる。
土宇陀もいい線いってたが、ジャミーの妨害にうまく対処出来なかったのが敗因だな。
俺もシャイガールの好感度を………あれ?土宇陀と戦う前とイラストが変わらない。空気を読んでくれたのかな?
これからもよろしくな~。
ー龍ヶ崎翼斗ー
「勝った………?」
さっきまで気付かなかった歓声が俺の耳に入ってくる。
「っっっっ勝ったぞおぉぉ!!!」
嬉しさで手を掲げて声を張り上げる。恥ずかしさは……ちょっとあるけど、今はこの場所を噛み締めたい。それくらいは許されるだろう!
俺は歓声を背に受けながら友達が待つところまで戻った。
そういえば、最後にガンヤと話したかったけど、いつの間にかいなくなっていた。後で探すかな。
「ヨクト!」
会場を出てすぐに、イザナが飛び付いてきた。
「危ないぞ?怪我したら……」
「嬉しいんだからしょうがないじゃない!」
イザナの後ろから他の友達が近付いてきた。
「お前らいっつも熱々だな。」
「あのバトルは白熱だったね!」
「はしたないわよイザナ。」
上から動物デッキの野原風魔、洋服デッキの纏身着衣、宝石デッキの星葉笑魅。
「皆、俺の、どうだったかな?」
「バッチリだろ。」
「僕ももっと勝ち上がりたかったなぁ!」
「流石と言えるわ。」
「最高だったよ!ヨクト!」
仲の良い友人とこうして喋れるのは嬉しいな。
………レイキとも、もっと話したいんだけどな。
どうしてかタイミングが悪かったり、見失ってしまう。諦めたりはしないけどね。
「そういえば、受賞はまだなの?ヨクトの晴れ姿が早く見たいわ!」
「晴れ姿………www」
イザナの何にツボったのか、フウマが抑えるように笑っている。
「まだよ。二年生の決着がまだついてないみたいね。それまでは、アナウンスがあるまで自由よ。」
エミの補足に俺は安堵する。
「連戦だったし、ちょっと休みたいな。あっちのテラス行かないか?」
「そうだな。」
俺の提案にフウマが肯定し、皆が頷いた。
「良い眺めだねー。」
学校の四階にあるテラス席はまばらに生徒はいたものの、いつもは生徒で埋まってることもあって、何か得した気分だ。
「そういや、キイだけ一回戦敗退なんだよな?」
「うっ…!そ、そういうフウマだって二回戦敗けじゃん!」
「ザーンネーン!俺の二回戦の相手はあの土宇陀だぞ?勝てるわけないだろ。」
「うくくくくく……………」
手をヒラヒラさせてキイを煽る。
「もう終わったことよ。二人とも落ち着きなさい。
良いわね?」
「「………はい。」」
俺達のグループの保護者役であるエミの一言に二人は素直に返事をする。
ちなみにイザナが三回戦敗退で、エミはベスト8である。
「皆で反省会がてら、デッキの調整でもしましょうか。」
「賛成!」
「やるか!」
イザナ、キイ、フウマがデッキを取り出して、あーでもないこーでもないと論争している。エミはそれを楽しそうに眺めていた。
………ここにレイキがいたら、皆はもっと強くなれるだろうなぁ。
っ!
思考しながら何気なく後ろを向いた時、テラス席に設置されている自販機で飲み物を買っているレイキを見つけた。
「レイキ!」
俺はすぐに立ち上がり、レイキの所に走っていった。
「レイキ!俺の戦い、見ててくれた!?」
「ん?…あぁ、龍ヶ崎か。優勝おめでと。」
買った飲み物を一口飲んで答える。
「あ、ありがとう。それで?どうかな?」
「まぁ、見てたぞ。俺が前に言ったトラップの活用、覚えてたんだな?すごく上手くなっててビックリしたよ。」
「本当か!?」
「お、おう。」
「やった!レイキ、お前のお陰で強くなれた!優勝を出来た!だから、ありがとう!」
「……ふ、こちらこそ。覚えてくれてて光栄だよ。」
「なぁ、もし良かったら今から俺の友達と……」
「あぁ悪い。今から野暮用があるんだ。また今度な。」
「あ……そうか。ごめん、引き止めて。」
「気にすんな、じゃ、また明日。」
「うん、また明日。」
手を振ってレイキと別れた。
ちょうど別れて席に戻ろうとした時、アナウンスが入る。
『それでは、各学年の優勝者を発表いたします。
三年一組 水野洋太
二年二組 富巻輝
一年二組 龍ヶ崎翼斗
この三名は十分以内に大会本部に来てください。
他の生徒の皆さん、今日のプログラムは終了しました。また明日、忘れずに登校しましょう。』
「あ……」
「十分!?ヤバイじゃない!ヨクト!早く早く!」
イザナが俺を急かす。
「あ、あぁ!皆またな!」
「おう、明日のバトル楽しみにしてるぜ。」
「応援するね!」
「睡眠はしっかりと、ね。」
「徹夜で横断幕作るわ!」
「あ、うん!とりあえず、無理はしないで!
それじゃ!」
俺は怒られないギリギリの速度で廊下を走った。
ー土宇陀岩刃ー
「クソ!」
壁がミシリと音をたてる。
「負けた……あいつに………!」
もう一度、さっきよりも強い力で壁を叩く。
「あの時のトラップ……攻撃のタイミング?……いや、今回は引きが悪かった。いつもなら、ここまで悪くはならないのに!……クソ!」
荒い息を整えるのも忘れ、悔しさで拳に力が入る。爪が食い込んで血が出ているのも感じない程に。
「不運だったね。」
「誰だ!…………っ!久我醒さん!?」
ゆっくりと前から歩いてきた久我醒さんは、俺の頬に手を当てて喋りかけてきた。
「可哀想に。たった一つの不運で自分よりも格下の相手に負けてしまうなんて。」
不思議と久我醒さんの声が透き通るように脳に入ってくる。
「っ!……そ、そうだ!あいつが俺より強いわけがねぇ!次戦えば、俺が勝つに決まってる!」
「………でも、そこでもまたあの不運が出たら?」
久我醒さんの言葉に、俺は寒気がした。
「っ!………それじゃあ、勝てない。またあんな…」
俺が頭を抱えてうずくまると、久我醒さんは俺の肩に優しく手を置いた。
「なら、君に力を与えよう。とっても、素晴らしい、力を。」
柔らかい、ずっと見ていたいと思える素晴らしい笑顔で俺の耳元で囁く。甘く脳が蕩けるような言葉を。
「あぁ……ありがとう、ございます。
アルデバラン様…………」
「良い子だ。」
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