第9話 俺毎回ピンチやん。

 第四回戦も問題なく勝ち、遂に準々決勝に進んだ。他の四回戦では、惜しくも鉄峰が負けていた。相手に粘られて、デッキアウトだったな。

 因みに神里は三回戦で負けていた。龍ヶ崎が慰めていて、大変そうだと思ったぐらいだな。うん。



「俺の番か。」

 名前を呼ばれ、バトル台へと向かう。

 相手は……四組の水崎緑。

「よろしくネ?」

 語尾を上擦らせて、ウィンクしながら投げキッス。

 こいつ……陽キャだ!それも……ギャルだ!

「お…おう。」

 しかもあいつ、何かのアニメキャラらしきカードスリーブを着けてやがる。ガチ勢やん……

 



『それでは準々決勝、開始です!』

「「ビートを刻め!」」



レイキ一ターン目

「エレメント。コスト一でデクレイション、"掘り出しスコップ"。山札の上から五枚を見て、一枚手札に加えられる。

 ターンエンド。」



ミドリ一ターン目

「ドローしてエレメント。"プトマ"をクリエート。」

「まっ!」

 プチトマト?……野菜デッキ?

「ターンエンドだヨ。」



レイキ二ターン目

「ドロー、エレメント。影踏・トビマルをクリエート。」

「拝命つかまつる。」

「ターンエンド。」



ミドリ二ターン目

「ドローしてエレメント。

 フゥー残しといて良かった!コスト一で"ヤンコ"をクリエート。」

「やー。」

 ヤングコーン……やっぱ野菜か………失礼なのは分かった上で言わせて貰おう…この見た目でか…

 ……まぁそれはさておいて、少し対策されてんな。気を付けないと。

「ターンエンドだヨ。」



レイキ三ターン目

「ドロー、エレメント。トラップを設置して、団結する集団無意識をクリエート。ターンエンドだ。」

 かなり順調なプレイングではなかろうか。



ミドリ三ターン目

「おぉ、その子見たことあるよ~。

ドローしてエレメント。トラップを設置して、デクレイション、"腐葉土追加"。山札の上から三枚見て、青果を持つカードをエレメントに置けるんだよ!」

 三枚の内二枚がエレメントに行ったか。

「残りは山札の下に置く。で、この増やしたコストで"シシン"をクリエート。

 ターンエンドだヨ。」


レイキ四ターン目

 シシトウか?………それより殴ってこねぇな……リソースがヤベェ。

「ドロー、エレメント。墓荒らしのマーチをクリエート。」

「ザァクザァーク!」

「団結する集団無意識で攻撃。」

「ライフ。」

ミドリライフ六→五

「ターンエンド。」



ミドリ四ターン目

「ドローしてエレメント。"キューカ"をクリエート。」

「ンキュ!」

 今度はキュウリか。

「登場時効果で、相手のパワー二千以下のファミリアを破壊。選ぶのはトビマル!」

「無念………」

 もう遅延は無理か……

「んー……じゃあシシンで攻撃、の時にフィールドに青果を持つカードが三枚以上ある時、一枚ドロー出来る。」

「ライフ。」

「シシュ!」

レイキライフ六→五

 よし、なんとかリソースはゲットだな。

「ターンエンドで。」



レイキ五ターン目

「ドロー……エレメント、落武者ウエモンをクリエート。」

「参る!」

「登場時効果で相手の手札を破壊!さらにマーチの効果でワンドロー。」

「覚悟ォ!」

「きゃ!?」

「ザァクザァーク!」

「っし。」

 危ねー、ウエモンが来て助かった……

「レイっち、やっぱ強いね。」

「レ…はっ?」

「でも、私だって負けないよ!」

「お、おう。」

 これが、ギャルの距離感……!

 おっと、いかんいかん。気を取り直して、と。

「マーチで攻撃。」

「ライフ。」

ミドリ五→四

「ターンエンド。」



ミドリ五ターン目

「ドローしてエレメント。コスト三で"キャチー"、コスト四で"ナジュ"をクリエート。」

「キャ~。」

 気だるい感じのキャチーがキャベツ。

「ナッナ!」

 ナジュがナスか。

「ナジュの登場時効果で相手のパワー三千以下のファミリアを破壊。選ぶのは団結する集団無意識!」

「そっちこそやうな。」

 俺はお返しとばかりに話しかけた。緊張で少し噛んだが気にしないようにする。

「ふっふっふー。レイっち、こんなもんじゃない。私はまだまだ"伸びる"女だよ。」

「?」

「ここでトラップ発動!発動条件は青果を持つカードがフィールドに六枚以上ある時!」

 カードがオープンされると、青果を持つファミリア達が光りだした。

「デクレイション!"アイドルな聖歌隊"!」

 水崎の声と共に、水崎のカード達が一斉にスリーブから飛び出し、反対向きに収まる。

 ……そういうことかぁ!!だからスリーブ着けてたんだな!納得ぅ。まぁ、ピンチなのは変わらんがな。

「さぁ、レイっち。私達のライブ、楽しんでね?」

 さっきまでデフォルメ野菜だったファミリアが、人型の女性ファミリアへと変化していた。

「まずは、"最高音・ナジュ"で攻撃。その時、パワー四千以下のファミリアを破壊できる。マーチを選択!」

「耐えられる?アァー!」

「ザァー……」

「ライフ。」

レイキライフ五→四

「次は…」

「トラップ発動!デクレイション!"慢心の落とし穴!"相手のパワー五千以下のファミリアを二体破壊。俺は"お眠り・ヤンコ"と"元気娘・プトマ"を選ぶ。」

「うわー………」

「やられちゃったよぉー!」

「う…なら"オーバーローリアクション・キャチー"で攻撃。その時、山札からツードロー!」

「行っくよぉ~。」

「ライフ。」

レイキライフ四→三

「"辛口アイドル・シシン"で攻撃。」

「くたばりなさい!」

「ライフ。」

レイキライフ三→二

「"ツンデレアイドル・キューカ"で攻撃。その時相手は自分のファミリアを選んで破壊する。効果でウエモンを破壊!」

「このトゲ、痛いわよ?」

「面目無い………」

 これで俺のフィールドはゼロか。

「ライフ。」

レイキライフ二→一

「ターンエンドだヨ?」




レイキ六ターン目

「ドロー、エレメント。」

 大ピン……いや、来たな。

「トラップを四枚設置して、群がる者・シデムシをクリエート。」

 あ、野菜アイドル達がシデムシが出た瞬間、顔が強張った。……あぁ、ミミズを食べるからかな?俺はそんなことを考えながら、セメタリーから四枚のファミリアを下に置く。

「ここでトラップ、強者の進軍。山札の上から三枚をセメタリーに置くことで、対象を即行動出来るようにさせる。対象はシデムシ。」

「それだけじゃ、私には勝てないよ!」

「ふ、どうかな?シデムシで攻撃!」

「ライフ。」

ミドリライフ四→三

「ここでトラップ発動、クリエーティングビルド!

"傲慢なる王者の城"!」

 地面から、禍々しい城が俺のフィールドに現れる。これは神里が使っていた、威厳放つ獣の塔と同等の物だ。

「発動条件はこのターンにファミリアが攻撃かつ、このターンフィールドにそのファミリアしかいなかった時だ。効果は、俺の山札の上から一枚をセメタリーに送る。それがファミリアであれば、シデムシはもう一度攻撃できる!」

「へ、へぇ~。面白いね~。」

 明らかに動揺しているな。

「一枚目!……成功だ。」

「くぅ!」

ミドリライフ三→二

「二枚目!………成功だ。」

「うぅ…」

ミドリライフ二→一

「三枚目!……………………成功だ。」

 俺が最後に見せたのは、シャイガールだった。

「そん…な………」

ミドリライフ一→0



「フゥー。」

 試合が終わり、自分のデッキを片付けてる時に、ふと気になって山札の一番上を捲る。

怨嗟の叫び声

 危なかった……ライフ削っといて良かったぁ!



 因みに、最後に美味しい所を持っていって、俺も滅茶苦茶感謝していたのだが、シャイガールのカードはまた白い靄に戻ってしまった。

 また振り出しかぁ……そこは活躍したんだからせめて現状維持が良かったなぁ………

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