第3話 ヒロイン参戦?

「はぁーい、授業は終わりで~す。」

 羽澄先生の言葉と共に、教室にいた元気組が併設されたホログラム台へと駆け込んでいく。

 中学生活から一週間経過し、一学年では相棒カードを所有する、一年一組の土宇陀岩刃、一年二組龍ヶ崎翼斗、そして俺こと狭間霊生の三強と呼ばれているらしい。

 まぁそんなことより、どうやら一年三組に龍ヶ崎の幼馴染みがいたらしく、最近仲良く話している。ヒロインは必須だし良いけどね。おじさん、友達は君しかいないからちょい寂しいよ。みんなとはそれなりに話すけど、三強って言葉のせいで敬遠されてんだわ。


 今日も龍ヶ崎は件の幼馴染みとバトってるだろうし、図書館でも行くか。あの幼馴染み、俺になんか思うところがあるのか、龍ヶ崎が俺といると露骨に気を引こうとしたり、間に割ってはいったり、成功すると俺に向かって鼻をならしたり、あんま感じはよくないからなるべく会いたくないんだよなぁ。




「……あった。」

 これこれ、世界中の珍しいカードや、数が少ない希少かつ高額なカードがまとめられている、貴重ビート大全集の最新版だ。

 この本は毎年更新されていて、ページ数が毎年五十は必ず追加されている。つまり、単純計算だと最低でも毎年五十人がパートナーカードを入手し、かつ公開しているということだ。

 ちなみに俺のシャイガールは入っていない。一学生のコミュニティでしか使ってないからな。いつかは収録されるだろうが、その頃にはイラストを見たいものだ。

「ほんと、お前はいつになっ…たら?」

 俺が愚痴るためにシャイガールを取り出して見ていると、ほんのうっすらと、真っ黒だったカードに、白っぽいもやが見れた。

「……少しは認めてくれたのか………?」

 俺が呟くと、足音が俺の後ろで止まった。

「その本…見ていないなら…………そのカード、もしや狭間霊生ですね?」

「………だれ?」

 それは前世の俺なら絶対に関われないであろう程の女の子だった。……ていうか待って?今の発言聞かれた?めっちゃ恥ずいんすけど。

「私は一年三組の鉄峰冷音。」

 思ったけど、表情変わんねぇな……

「で、この本だっけ?俺まだ見てんだけど。」

「嘘。これ見よがしにパートナーカードを見てた。私への当て付けかしら?」

 う…それを言われるとなにも言い返せない。パートナーカードをいらないって言うやつなんて、この世界の住民じゃないからな。

「それはすまない。」

 ここはとりあえず謝っとくか。

「なんかムカつくわね。」

「え?」

 無表情で腕を組む鉄峰。

「狭間くん、勝負しましょう。あなたの力見たいと思っていたの。」

「……分かった。」

 こういう時、断れないのがこの世界の欠点だな。

「えぇ、私は先に予約しているから、あなたはその本を借りなさい。勝った方が読むということで。」

「………」

 スタスタと行ってしまった。なんか条件をつけられたが、まぁいいか。










「遅い。」

 ホログラム台の前で仁王立ちをしながら俺を待っていたらしい。

「すみませんね。んじゃやるか。」

「えぇ。」

「「ビートを刻め。」」




 レイネ、ライフ五、手札二枚、バトルフィールドにはマシン・ブロー、トラップ二枚。

 レイキ、ライフ六、手札三枚、バトルフィールドには、トビマル、トラップ一枚。


レイネ四ターン目

「私のターンドロー、エレメントにカードを置く。

 コスト三でデクレイション、"白の一撃"。三千以下のディフェンス値のファミリアを破壊、選ぶのはトビマルよ。」

「無念………」

 十分活躍してくれたな。

「コストが低いくせに厄介なカードだったわ。」

「お褒めいただきどうも。」

「ターンエンド。」


レイキ四ターン目

「ドロー、エレメント。トラップを設置して、コスト四で落武者ウエモンをクリエート。」

「参る!」

「登場時効果で、相手の手札を一枚セメタリーへ。」

「やるわね。」

 これで、鉄峰の手札はゼロ。

「ターンエンド。」


レイネ五ターン目

「私のターンドロー、コスト四を支払ってデクレイション、"起動要請"。山札の上一枚目を見て、コストが六以下であればコストを支払わずにクリエート出来るわ。

 コスト五の"撃墜要塞・ホーゲンルをクリエート"。」

 現れたのはたくさんの砲台がついた鋼鉄の城だった。

「このカードは山札の上から二枚セメタリーに送ることでスピード状態へと移行する。」

 そう宣言すると、城の形をしていたホーゲンルが人型へと変形した。

「攻撃時に能力発動。トラップ一枚をセメタリーに送ることで、山札の上から三枚ドロー。」

 つんよ。

「ライフだ。」

レイキライフ六→五

「ターンエンドよ。」


レイキ五ターン目

「ドロー、エレメント。コスト五を支払って、"宵を生きるもの・首吊り男"をクリエート!」

「う……」

 姿を見てレイネが口を抑える。まぁ、中学生が見るようなもんじゃないからな。前世ならがっつりアール15だろう。

 見た目は文字のまんま。自殺して地縛霊になった感じだ。

「落武者ウエモンで攻撃。」

「ライフ。」

レイネライフ五→四

「首吊り男の能力発動。自分のファミリアが攻撃終了後に場にいれば、そのファミリアを破壊して、セメタリーから破壊したファミリアを再度クリエートする。」

 俺は落武者ウエモンを破壊して、また場に出した。

「くらえぇい!」

 ウエモンの怨念がましい声と共に、鉄峰の手札が一枚破壊される。

「本当に、面倒ね。」

「フッ、ターンエンド。」


レイネ六ターン目

「私のターンドロー、エレメントにカードを置く。コスト六を支払って、"スナイプシューター"をクリエート。その時トラップ発動、"魔改造"。スナイプシューターをスピード状態に。

 手札からトラップにカードを置いて、スナイプシューターで攻撃時に、攻撃を中止することで、代わりに相手のトラップカードを破壊。」

 俺の最後のトラップカードがなくなったか。

「ホーゲンルで攻撃。トラップカードをセメタリーに置いて三ドロー。」

「ライフ。」

レイキ五→四

「ターンエンド。」


レイキ六ターン目

「ドロー、エレメント。トラップにカードを置く。

 コスト六を支払って、アンダーカレント・叫ぶ女をクリエート。」

「Aaaaaa!!!」

「登場時に相手のトラップカードを全て破壊する。」

 破壊したのは二枚。

「くっ…」

「そのカードの効果がファミリアの破壊効果を持っていたら、そのカード枚数分相手のライフを削る。

 ……二枚とも破壊効果によって、お前のライフを二減らす!」

レイネライフ四→二

「ウエモンで攻撃。」

「マシン・ブローでプロテクト。」

 ウエモンが破壊される。

「首吊り男で攻撃。」

「ライフよ。」

 レイネライフ二→一

「ターンエンドだ。」


レイネ七ターン目

「私のターンドロー、エレメントにカードを置く。

 デクレイション、コスト四を支払って"強化計画"。ホーゲンルの攻撃時にライフが一の代わりに二削れる。」

 ……マジか。

「まだ終わってないわ。コストを三使用してマシン・ブローをクリエート。

 最初のマシン・ブローで攻撃。」

「叫ぶ女でプロテクト。」

「マシン・ブローが破壊された時、戦闘した相手のファミリアが残っていれば、ライフを一削る。」

レイキ四→三

「スナイプシューターで攻撃。」

「トラップ発動!"妖艶な誘惑"。パワー五千以下のファミリアを破壊!」

 スナイプシューターを破壊。

「ホーゲンルで攻撃。」

「ライフ…!」

レイキ三→一

「………ターンエンド…の時にホーゲンルの効果発動。セメタリーにあるカードを五枚、山札の下に置くことで、このカードを要塞モードに移行する。」

 最初に出てきた状態に戻る。しかも、戻ったことでスタンバイ状態になり、プロテクト可能…か。



レイキ七ターン目

「ドロー、…………っ!」

 こいつ……!

「どうかしたのかしら?」

「いや、エレメント。スゥー…ハァー………。

 コスト七を支払って、クリエート!首吊り男から"全てを飲み込む者・ハーデンこんにゃく"に進化!」

 それは、一昨日カドショで一人寂しくパックを向いていたら手に入れた一枚である。

「効果により、相手のファミリア全てをアクション状態に!」

「そ、そんな!」

 今日初めて、鉄峰の顔が歪んだ。

「そのまま、ハーデンこんにゃくでとどめだ!」

「……流石、三強と呼ばれるだけあるわ………」

 そう言って、鉄峰は敗けを認め、貴重ビート大全集の最新版は俺が読むことになった。



 ちなみに、後でカードを確認したら、シャイガールの白いもやが消えていた。

 あの時のは見間違いだったのかな?

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