第2話 タッグバトル速すぎひん!?
勝負が決まったと同時に、周りからけたたましい程の歓声が上がる。
そりゃ、モブが主人公に勝ったようなもんだからな。
「お前、強いな!またやろうぜ!」
こっちはこっちで満面の笑みで握手を求めてきた。
「あ、あぁ。そうだな。」
そう言われてもなぁ……今回勝てたのは俺のコンボが上手くいったのと、龍ケ崎がトラップカードを使わなかったからなんよなぁ。
相棒、つまりパートナーカードという枠で存在しているのだが、シャイガールは正直微妙だ。能力は攻撃時、プロテクトされないと、さっきの攻撃能力しかないのだ。まぁ、元々レイスデッキは雑魚だし、一枚一枚は強くても、コンボというか、シナジーが薄いと思う。ちなみに、大いに活躍した"団結する集団無意識"は記憶が戻る前の俺がお年玉五年分を使って買ったカードである。
「いやぁ、まさか俺が二人いて負けるたぁな!」
龍ケ崎のカードから声が響き、一つの影が舞い降りた。それはジャミングドラゴンのデフォルメされた姿だ。パートナーカードは現世にも姿を現せる程の力を持ってるらしい。
聞いてるか?シャイガール………せめてイラストぐらい見せてくれよ………
「そういや、レイキの相棒は?出てこないの?」
ぐは!?その澄んだ目!俺には大ダメージだぜぇ。
「バトル中も言ったろ?恥ずかしがり屋なんだよ。」
「そっかー…残念。いつか見たいな!」
「そ、そだねー。」
自由散策の時間が終わり、放課後となる。
その時、龍ケ崎にカドショ行かん?と誘われたため、ホイホイ付いていった。前世ではそんな友達もいなかったし、試作デッキは己との戦いをしていた。
「らっしゃーい。」
やる気の無さそうな店員の声と共に、眼前にはたくさんのショーケースとデュエルスペースが。更にはかなりの金を積まないと手に入らない、ホログラム台もあった。
結構当たりだな。
「龍ヶ崎今日どうすんだ?」
「ハハッ、ヨクトで良いよ。」
「おう、そうか。」
距離感怖ぇ………
「今日はなぁ……お前に勝つためのパーツを探しに来た!」
「え?本人いるけど?」
俺が言うと、俺の肩に手を置いてウィンクをする。
「アドバイス頼んだぜ?」
「まぁ、良いけど。」
俺も、ヨクトを手伝いがてら、レイスカードを探すか。
そうして、二人で話しながらショーケースを見ていった。
「やっぱり、ヨクトはトラップを増やすべきだよ。」
「んーそうは思ってるんだけど、トラップってエレメントに置きがちじゃないか?」
まぁ、分からんくはないが。結局はファミリアを並べないと基本勝てないし。
「じゃあ、トラップともう一つ、サーチ効果のあるカードを探すか。」
「サーチ?」
「山札から指定したカードを持ってくるとか、俺の怨嗟の叫び声みたいなやつだよ。」
「あーなるほどな!」
………
「とりあえず、この二枚だな。」
「よし!ちょっと買ってくる!」
「うえ!?判断は……もうレジかよ。」
龍ヶ崎と俺で話し合って買ったカード。
トラップカード"溶岩渓谷"、イラストは山と山の間に溶岩が流れる川がある。まんまだな!
コストは六で能力は、このターンに自分が攻撃されていれば発動可能。
相手のパワー五千以下のファミリアを二体破壊する。
かなり強力だと思う。トラップはエレメントを使用しなくても使える便利なカードだ。まぁチート級になると、別の条件とかシビアになってくるが、このカードは扱いやすいと思う。
次。
スペルカード"産声"、なんかの動物の赤ちゃんが泣き出したイラスト。
コストは二、能力は山札の上から四枚見て、好きなカードを一枚、手札に加える。
これもなかなか強力で、俺が使いたいくらいだ。
え?なんで買わないのかって?カードにはそれぞれ色別されていて、俺は黒一色のデッキだからだ。龍ヶ崎は赤一色。ちなみに色は全部で八色あることが確認されてるそうだ。まだ増えそうだけどね。
「おぉ!こいつが新しいカードか!」
龍ヶ崎の相棒であるジャミングドラゴン、通称ジャミーも新しいカードにご満悦のようだ。
「お?まさかパートナーカードか!?」
ガラの悪そうな声………
「ちょうど良い!おい!ガキ!そのパートナーカードを俺に寄越せよ。ちょっと金がねぇーんだわ。」
どうみてもガラの悪い男が手で金のマークを作っていた。
「ハァ!?ふざけんな!ジャミーはぜってぇ渡せないからな!」
龍ヶ崎はジャミーを背中の後ろに隠すようにする。
「へ、良いぜ!なら勝負だ!」
周りもいきなりのことに、固まって動けていないでいた。
「お前一人で、二人を相手に出来ればなぁ?」
さっきのガラの悪い男よりも背の大きい二人目の男もデッキを取り出した。こういうのって普通、背が小さいと思ってたんだがなぁ。
「ハァ!?ありかよ!」
「ありなんだよなぁ!?これがな!」
「おら!どけどけ!ホログラム台は俺達が使う!」
マナーも悪いとか最悪かよ。
あの店員は関わりたくないのか、明後日の方向を向きながら口笛を吹いている。
ここは、前世含めてアラフォーの俺が助けてやるかな。
「ヨクト、手伝ってやるよ。」
「え!?良いのか!?」
ヨクトはとても嬉しそうに笑う。
「おいおい、ビンボーなガキはすっこんでろ!」
「へぇ…これを見ても、そう言えるか?」
俺はデッキから一枚を取り出す。もちろん、
「けっ!お前もパートナーカード持ちかよ!気分悪ぃぜ!」
「俺達が勝ったら、お前ら二人のパートナーカード渡してもらうぞ!」
「なら俺達が勝ったら!………えっと……」
「二度とこの店に来ない。」
「良いだろう!いざ!」
「「「「ビートを刻め!」」」」
事が動いたのは四ターン目
状況
ヨクト&レイキ
ライフ十、バトルフィールドにはハート・バードとトビマル。
トラップ一枚。
ワルエモン&ヨイゾウ
ライフ十一、バトルフィールドにはファミリア無し、トラップ三枚。
ヨクトの四ターン
「俺のターンドロー!来た!エレメントにカードを置いて、クリエート!音速の叫び・ジャミングドラゴン!」
「っしゃぁ!!やってやるぞ!ヨクト、レイキ!」
「ここでトラップカード、"神速術"を発動!コストが五以上のファミリアが登場した時、スピード状態を与える!それにより、攻撃時の効果発動!ハート・バードとトビマルで二枚分だ!」
ヨクトは相手のトラップを二枚セメタリーへ。
「そのままライフだ!」
「俺が受ける。」
ワルエモンが宣言して、ライフが十になり、ワルエモンはワンドロー。
「ハート・バードでも攻撃!」
「それも俺だ。」
ワルエモンワンドロー。
ワルエモン&ヨイゾウ、ライフ九
「ターンエンドだ!」
「その時、トラップ発動!"光合成"!相手がターンエンドした時、発動可能となる!このターンにセメタリーに置かれたカードは持ち主のエレメントに置かれる。」
一気にエレメントを二も増やしたか。
ヨイゾウの四ターン
「ドロー!エレメントにカードを置いて…」
これでエレメントは六枚か。
「クリエート、"迫る恐怖・ツタ怪人"!」
それは、ツタで出来た人型の植物だった。
「登場時効果で、エレメントにあるトラップカードを好きな数、トラップフィールドに置くことが出来る。」
その宣言により、エレメントから四枚のカードがトラップに置かれた。
「ターンエンドだ。」
ニヤリとした顔で、俺とヨクトを見る。
確かに厄介だが、そこは俺が対処すれば良いだけだ。
レイキの四ターン
「ドロー、エレメント。トラップを設置して、舐めるなよ?デクレイション、"自衛反転"。
この効果により、相手のトラップの数だけ、自分のライフを増やす。」
このカードは四ターン以内でなければ使えないカードなのだが、入れておいて正解だったな。
「な!?」
「んな、バカな!」
「増えるライフは五だ。さぁ、楽しもうぜ?ターンエンド。」
ヨクト&レイキ、ライフ十五
俺は知らず知らずのうちに、獰猛な笑みを浮かべていた。
ワルエモンの四ターン
「チッ!俺のターンドロー!エレメントにカードを置いて、クリエート!ガオラ・ウルフェン!」
狼男のようなファミリア。
「登場時効果により、味方一体のファミリアを破壊する!」
選ばれたのはツタ怪人。
「その破壊したファミリアのコスト分、相手のファミリアを破壊!ハート・バードとトビマルを破壊だ!」
「あぁ!」
「ターンエンド。」
ヨクト五ターン
「俺のターンドロー!エレメントにカードを置いて、トラップカードを設置。"スピーディードラグーン"をクリエート!」
ジェット機のような形をしたドラゴン。
「ジャミングドラゴンで攻撃!トラップ一枚を破壊だ!」
「チッ!」
「ライフだ。」
「スピーディードラグーンで攻撃!」
「く、ライフだ。」
「ターンエンドだ。」
ワルエモン&ヨイゾウ、ライフ七
ヨイゾウ五ターン
「俺のターンドロー、エレメントにカードを置いて、ジュモックを二体クリエート。ターンエンドだ。」
レイキ五ターン
「ドロー、エレメント。"エスケイプレイス・シャイガール"をクリエート!」
派手な演出が何だったのかと不思議に思うほど、その場に見えないシャイガールが登場した。
「「?いないぞ?」」
「これがデフォだ!」
「そんな馬鹿な……」
おい!龍ヶ崎!うんうん頷くな!
「ハァ…ターンエンド。」
ワルエモン五ターン
「ドロー!きたか!肩透かしを食らったが、俺はそうは行かないぜ?エレメントにカードを置いて、クリエート!ガオラ・ウルフェンから"アルティメットウルフェンに進化!」
体長は三メートルを越えるであろう狼男が獰猛にこちらを睨んできた。
「進化ファミリアはそのターンに行動できる!ジャミングドラゴンを攻撃だ!」
ジャミングドラゴンは六千、一方アルティメットウルフェンは八千。勝負は分かりきってるだろう。
「トラップカード!"落とし穴"アルティメットウルフェンを行動不能に!」
「ハッハー!無駄無駄!アルティメットウルフェンの効果で攻撃中、アルティメットウルフェンは全ての効果を受けない!」
「そ、そんな!」
「ぐあ!?すまねぇ!ヨクトォ……」
アルティメットウルフェンに切り刻まれ、ジャミングドラゴンがセメタリーに送られる。
「アルティメットウルフェンの追加効果!相手のファミリアに勝利した時、パワーをプラス三千し、スタンバイ状態に!」
「なっ……!」
「スピーディードラグーンを攻撃!」
スピーディードラグーンも破壊し、プレイヤーへと攻撃する。
「ライフ!……っ!?」
ヨクトがワンドローをしたら驚いてる?一体どうしたんだ?
ヨクト&レイキ、ライフ十四
ヨクト六ターン
「ドロー…エレメントにカードを置いて………
なぁレイキ。」
ヨクトが神妙な顔で尋ねてきた。
「どうした?」
「こいつ、使って良いかな?」
「っ!…それは!」
「おや、作戦会議は終わったのかい?」
「あぁ、とても有意義だったよ。」
「俺は、足りないコストをライフで支払って!」
ヨクト&レイキ、ライフ十二
「"業火の雄叫び・ジャミングドラゴンをクリエート!」
ホログラムのバトルフィールドの天気がどんよりとした曇り空になり、そこから火の粉の雨が降り注ぐ。その雲間から姿を現したそれは、全身に火が宿り、凶暴性の増したジャミングドラゴンの姿だった。
バトル中にカードが強化されるのってよくあることだよね!(脳死)
「俺は!これから先も、ヨクトと一緒にいたいんだぁぁぁ!!!」
ジャミーの雄叫びとともに、バトルフィールドの地形が変わり、地面が明らかに熱そうだ。
「このカードはスピード状態のため、そのまま攻撃!その時、攻撃時の能力発動!相手のトラップカードを一枚、選んで使用することが出来る!」
「はぁ!?」
「ふざけんなよ!?」
マジか!?………おっと、雑魚と同じ反応をしちまうとは俺もまだまだだな。
「俺はそれを選ぶ!中身は……植林爆弾!効果により、俺の山札から順にトラップが出るまで捲る。そうして、トラップカードが出るまでに捲ったカードの枚数だけ、相手のライフを減らす!」
それは、この世界での大きな大会で、使用を禁止されたカードだった。
それを知っている観戦客たちは、ワルエモンとヨイゾウに非難の目を浴びせる。
「カードは五枚!それによりお前たちのライフは残り二だ!」
「く!ジュモックでプロテクト!」
ワルエモン&ヨイゾウ、ライフ二
「ターンエンドだ!」
ヨイゾウ六ターン
「俺のターン!ドロー、エレメントにカードを置いて、えーと……」
「おい!なにしてんだよ!このままじゃ負けちまうぞ!」
「だ、だけどよぉ!」
なんか仲間割れを始めたな。
「おい、早くしろ。」
「チッ!」
「うるせぇんだよ!てめぇ!ビンボーのくせに偉そうにしやがって!
俺はムニムニダケをクリエート…ターンエンドだ。」
クリエートしたのはバニラカードのムニムニダケ。さっきエレメントからトラップにカードを待っていきすぎて、行動出来なかったんだろうな。
レイキ六ターン
「ドロー、エレメント。"団結する集団無意識"をクリエート、からのデクレイション、"背後の溜め息"。このターン俺のファミリアは攻撃中にプロテクトされない。」
「ハッ!だとしてもライフは一残るぜ?六ターン目で俺の最強の切り札を……」
「悪いがそれは無理だな。」
「何?」
「トラップカード、妄執の輝き。俺のセメタリーにいるトビマルをコスト一、パワー一、ディフェンス一のファミリアとしてスピード状態で復活させる。」
「んな、馬鹿なぁ!!!」
「いやいや、まだ俺のトラップが待ってるぜぇ?」
「…ハッ!そうだったな!」
こいつら、さっき仲間割れしてたくせにもう同じ顔してるよ。考え方が似てんだろうな。
「シャイガールで攻撃。」
「よし、ここで俺のトラップを!」
「あぁ、待て待て。まだ余裕はあるし、手札を補充したい。」
「あ、それもそっすね。」
「で?」
さっさと宣言しろや………
「余裕そうだが、内心焦ってんじゃねぇか?ライフだ!」
まさか………こうもうまく行ってくれるたぁね。
「トビマルの亡霊で攻撃。」
「ふへ!こいつ馬鹿だぜ!トラップ発動、原点回帰!対象のファミリアを山札の一番下へ!」
ヨイゾウはどや顔をしているが、トビマルの亡霊はゆっくりと二人の下に近付いていく。
「………あれ?なんで山札にいかないんだ!?」
「ポカってくれてサンキューな。"団結する集団無意識"の効果発動。ファミリアの攻撃時、味方の能力を全てのファミリアに付与する。選択するのは、シャイガールの次の自分のターンの始めまでこの場から離れない、だ。」
「「そ、そんな馬鹿なァァァァァ!!!」」
大の大人二人の絶叫が響く。
「それって味方の時も出来たんだ?」
龍ヶ崎が素朴な疑問と言った感じに呟く。
「あぁ、ファミリアの攻撃時だから、俺のでも相手のでも関係ないんだ。」
「へぇ~!」
そんな話をしている間も、トビマルの亡霊は近付いていき、ついにあと少しまでとなった。
「お、おい!頼むから見逃してくれよ!親にこんなのバレたら………」
「ひぃい!」
「残念だが、無理だな。トビマルの亡霊でトドメだ!」
こうして、悪名高いワルエモン&ヨイゾウはこの町からいなくなったとさ。
いや別に悪名が広まってるかは知らんが。
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