第4話 C子の怪談

最後は私か。

怖いっていうほどの怪談話はないから困る。

とりあえず、最近あったことにする。

本当にすぐ終わるから、期待しないよう。


先月、私が家で寝ていた時のこと。

夜寝てたら、何かの音で目が覚めて。

何か聞こえる、よく分からないけど、か細く。

かすかに聞こえてくる。


不思議だな、何かなって思って、ベットでじっとしてたけど、その音がまだずっと聞こえる。

外じゃなくて、廊下から聞こえてくる。

小さな音が、ずっとずっと。


気味が悪くなってきて、廊下をそっと覗くと。

音が、さらに聞こえる。

うめき声、なの。その音。

うーうー、って。

うめき声が、じとじと響いてる。


耳を澄ますと、そのうめき声、父親の部屋から響いてくる。

父親の部屋に近づくにつれて、うーうーって、うめき声が鮮明になる。

うー、うー。


部屋の前まできた。

そしたら、

そのうめき声が、

唸り声だと分かった。

ううー、ううーって苦しむ。


怖いけど、扉をゆっくりそっと開けた。

扉の先に、寝てる父親の髪が見えて。

更に開けたら、苦しむ顔が見えた。

それから、首が見えて。

首が見えたんだけど。


その首に、絡みついている。

手が、絡みついている。

両手が、締めるように首に絡みついている。


驚いて思わず、扉を一気に開けた。

そして、全部、見えてしまった。

首を絞める、男の姿が。

父親に跨って首を絞める、男の姿が。


その男が、私に振り向く。

絶句した。

えっ、そんな。


その顔、

その顔、

叔父の顔だったから。


遠くにある父親の実家で祖母と住んでる、

父親の弟の顔だから。

まだ生きてる叔父の顔だったから。


叔父は私に気づくと、そのまますーって消えた。

父親の唸り声も静かになった。

時計の針は、まもなく二時を指していた。


全然分からなかった。

なんで叔父の生霊が現れたのか。

なんで父親の首を絞めていたのか。


翌朝、祖母が電話してきた。

叔父が、実家で自殺したって。

父親が使ってた部屋で、首を吊ったって。


葬式の後、祖母が私に封筒を渡してきた。

「家に帰ったら一人で読め」と言って。

私にそっと、封筒を渡してきた。


家に帰ってから、その手紙を読んだ。

叔父の、遺書だった。

叔父が父親に宛てた、遺書だった。


子供の頃、散々に父親から虐められた恨み。

プールで溺れさせられた恨み。

そのトラウマで、大人になっても何もかもうまくいかなくなった恨み。

可愛がっていたモルモットを殺された恨み。

父親に対する、ありとあらゆる恨みが、書かれていた。

最後に、書いてあった。

――死ンデ オマエヲ ノロイ殺ス ズット


警察から知らされた検視結果だと、

叔父の死亡時刻は午前二時。

叔父をみた時間の、少し後……。


叔父は死ぬ前に、仕返しに、来たんだ。


生霊の話だったけど、怪談話ってことで良いよね?

そしたら、私の置いて、大きな正三角形が完成。

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