第3話 B子の怪談

私、そんな怖い話ないよー。

だから、小学校の野外学習であった話を簡単にしゃべるわ。

怖くないから、絶対に期待しないでね。


私がここに転向する前に住んでたとこではね、小学校五年の時に野外学習ってイベントがあったの。

一泊二日で山の中にある施設に行って、みんなでキャンプして、カレー作って。

飯盒炊飯だっけ?

それもしてさ。

そうそう、夜にはキャンプファイヤーもやって。

その時、トーチトワリングもするんだ。

火を点けた棒を、振り回すやつ。

あれ、選ばれた子しかさせてもらえないんだ。

楽しかったなー。


それで寝る前の夜のイベントに、肝試しがあったの。


その施設のそばに、自殺の名所で有名な池があったのね。

その池に飛び込むと、死体が浮き上がらないっていう。

その池の周りを、ぐるって一周する肝試しだけど。


その肝試しの前に、先生がみんなの前で怖い話をしたのね。

肝試し恒例の、怖さを増すための演出で。

それもこう、顔の下から懐中電灯を当ててね。

昭和かよってやつだけど。

それで、怖い話をし始めたのね。


その内容は、まったく覚えてないけど。

えっ?

いやだって、別にそこはメインじゃないから、いらないの。

ねえ、ちょっと黙っててよー。


どこまで話したっけ?

そう、で、その話の最後、怖いオチのところでね、ありきたりだけど、怖がらせるために、先生がわーって大声を出したの。

本当にありきたりすぎて笑えてきちゃうんだけどね。


でもさ、その時。

先生の顔の横に、バって現れたの。

見たことない顔が。


えっ、

あれっ、

もしかして、

ピエロの首⁉


髪が赤くて、肌が真っ白の、

ピエロの首が、

先生の隣に、いきなり飛び出してきたんだ。

それも、下から懐中電灯が当たった首が。


ITって映画あったじゃん。

あのキャラが出てきたんかと、びっくりしちゃったもん。

でも顔は、某ハンバーガーチェーンのキャラクターの方が似てたかも。


暗闇から突如出てくるピエロの顔って、凄く怖くって。

昼間にみるピエロと、全然違うんだよ。

ヤバいぐらい怖くって。

もうみんな泣き叫んじゃってね、ほんと大変だった。


でも先生はそのこと知らないから、みんなの反応に喜んじゃって。

懐中電灯を顔の下から当てたまま、げらげらげらげら笑ってんの。

その横にはさ、にったり笑うピエロの首があるのに。


先生は、馬鹿大きい声でまだげらげら笑ってんの。

それに混じって、他の笑い声も聞こえるの。

「……っ、び……、びへっ、……びっ、びへへへへへへへへへへへへ」

って。


その笑い声が、しっかり聞こえてきたんだ。

「げひぇ、びへへ、びへへへへへへ、びへ、びへへへへへへへへ、びへへ」


笑い声が。

懐中電灯のライトに照らされた、ピエロの首の笑い声が。

首だけ浮いた、ピエロの笑い声が。


こんな怪談で大丈夫かな。

って、反応薄すぎじゃない?


とりあえず、紙置くね。

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