第2話 教室

 夕方の教室、女子中学生三人が机を囲う。

怪談話を終えたA子が、正三角形の紙を机の真ん中に置く。

おまじないの儀式だ。


 先週、A子は学校の図書館でホラー小説を借りた。

もともとA子は読書家で、小さな頃から色々な本を読んでいた。

色々なジャンルの小説の中でも、中学校に入ってからは、ホラー小説やオカルト本がお気に入りのジャンルになった。

特に最近では、ホラー小説やオカルト本ばかり読むようになった。


借りた本のうち一冊に、紙切れが挟まれていた。

二つに折られた紙切れ。

紙は古くないから、最近挟まったよう。

その紙切れには、こう書いてあった。

親友三人がずっと一緒にいられる「友情のおまじない」。

どんな困難な上り坂でも、親友三人で越えられる「友情のおまじない」。


オカルト好きのA子にとっては、まさに天恵のようなメモだった。

確かに、小説とかだとよく見るようなありきたりの出来事だが、現実の、それも自分自身がこのようなことに遭遇するとは、A子は思ってもいなかった。

だからこの紙切れを見つけた時、A子は今までの人生の中で、最高の興奮を感じていた。


紙切れに書いてあったことは、簡単なおまじないだった。

内容は、次のようなことだった。


誰もいない夕方の教室で、友達三人が集まる。

真ん中に机を置き、その周りに三人座る。

正三角形の紙をそれぞれが持つ。

正三角形の紙を口に近づけ、ひとりずつ順に怪談話をする。

怪談話を終えたら、机の真ん中にその紙を置く。これを他の二人も順に続ける。

三人置き終えたら、三枚の正三角形で大きな正三角形をつくる。

三人で手をつなぎ、次の呪文を一緒に三回唱える。

「ばびるんだ、ほれいしょ」

「ばびるんだ、ほれいしょ」

「ばびるんだ、ほれいしょ」

翌朝起きた時から、三人は永遠に一緒になる。


 A子は、親友のB子とC子をこの儀式に誘った。

親友のB子もC子も、御多分に洩れずホラー小説好き、オカルト好きの少女だった。

同じ趣味をもつ同士だからこそ、この三人は親友になった。


 三人は、大喜びしながら紙切れを呼んだ。

そして、すぐに儀式を行う準備を始めた。

中学卒業後も、変わらぬ永遠の友情を誓い合うために。

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