第19話 【影追いの洞窟】と【廃れた砦】

 翌日。

 俺はEランクダンジョン【影追かげおいの洞窟どうくつ】に足を踏み入れた。

 攻略推奨レベルは22。少し高めだが、俺にとっては丁度いい難易度だろう。


「さて、まずはかくれんぼだな」


 このダンジョン最大の特徴は、迷宮内に存在する数多の隠れ魔物モンスターたちだ。

 ただ攻略するだけなら無視すればいいのだが、それらを全て発見し討伐してからボスを倒すことで【かげ紋章もんしょう】のスキル【索敵】を継承できる。


 【影の紋章】とは、盗賊、暗殺者、忍といったジョブから連想されるスキルを使用できる優秀な紋章だ。

 隠密や弱点看破など、様々な場面で活用できる補助スキルの宝庫でもある。


「いずれは全て集めたいところだが……まずは一つずつだな」


 慎重に進みながら、俺は周囲に神経を集中させた。

 わずかな物音、かすかな気配……それらを頼りに、隠れたモンスターを次々と見つけ出し討伐していく。

 その後はボス戦も難なくクリアし、【索敵】スキルを無事に継承できた。



『継承を完了しました』

『スキル【索敵】を獲得しました』



――――――――――――――――――――


索敵さくてき】Lv.1

 ・影のスキル

 ・MPを消費することで、周囲の生命体・物を感知することができる。


――――――――――――――――――――



 ちなみに今回の攻略でレベルは2つ上がり、19→21になった。

 獲得した4つのステータスポイントは、それぞれ筋力と速度に1、持久力に2割り振っておく。




 そして、さらに翌日。

 今度はEランクダンジョン【すたれたとりで】へと向かった。攻略推奨レベルは25。

 実はこのダンジョンに継承祠グラント・ポイントは存在せず、スキルを獲得することはできない。


 じゃあ、なぜ攻略しに来たのか。

 それは、ボスがドロップするアイテムが目的だからだ。


 特に変わったギミックがあるわけではないので、俺はさっそく最深部にまで行きボスに挑戦する。

 中には重厚な存在感を醸し出す、全身を鎧に包まれた大きな剣士がいた。


――――――――――――――――――――


朽ちた守将ラストガード

 ・討伐推奨レベル:25

 ・ダンジョンボス:【廃れた砦】

 ・かつて砦が敵軍に襲われた際、最後の一人になってなお戦い続けた将軍。守りに特化した戦い方をする。


――――――――――――――――――――


 守りに特化した戦い方をするとあるように、このボスはとにかく硬い。

 さらに【パリィ】を有しているため、生半可な攻撃は全て弾かれてしまうのだ。


 ただ――


「そんなもの、俺には関係ない――スラッシュ!」


「――ッ!?」


 俺は連続でショートソードを振るい、斬撃の雨を降らせた。

 パリィでは、一振りにつき一つの攻撃しか弾くことはできない。

 物理的に対応を不可能にさせるのだ。


「――……!」


 斬撃の雨に呑み込まれ、身動き一つ取れなくなる朽ちた守将。

 そうして生まれた隙に懐へと接近し、俺はそのまま怒涛の斬撃を浴びせた。

 そして、


「これで、終わりだ!」


「ガァァァアアアアア!」


 渾身の一振りが強固な鎧を破壊し、朽ちた守将の胴体を両断する。

 見事、討伐に成功した。



『経験値獲得 レベルが3アップしました』

『ステータスポイントを6獲得しました』



 鳴り響くシステム音。

 これだけでも十分に嬉しいが、今回のメインは他にある。


「さあ、あとはドロップしてくれるかどうかだが……」


 シューッと、蒸気となり消滅する朽ちた守将。

 後には魔石と一振りの剣だけが残されていた。


「よし、一発でドロップ成功だ!」


 俺はガッツポーズしたのち、その剣を拾い上げる。


――――――――――――――――――――


守護者しゅごしゃ遺剣いけん

 ・朽ちた守将ラストガードが装備していた剣

 ・装備推奨レベル:25

 ・攻撃力+20

 ・【パリィ】発動時、斬撃の威力を15%加算したうえで判定を行う。


――――――――――――――――――――


守護者しゅごしゃ遺剣いけん

 説明にもある通り、攻撃力+20に加え、パリィ発動時の斬撃威力が15%上昇する優れものだ。


「序盤じゃ、これがかなり使えるんだよな」


 パリィは決して万能ではない。

 敵の威力が自分より高いほど難易度は上がり、一定以上の差だと技量など関係なく確定で失敗してしまう。

 その弱点を補ってくれるこの剣は、俺にとって願ってもない武器だった。


「元々2~3周するのは覚悟してたけど、一発で獲得できたのは運が良かった」


 これでまた一つ、俺は強くなれる。

 【守護者しゅごしゃ遺剣いけん】を強く握りしめ、満足感とともに力強く頷く。


「スキルも武器も、順調に揃ってきているな。このペースで成長できれば、最強になれる日も近いかもしれない!」


 そして、気分の上がったまま意気込みを口にするのだった。



 ――だが、この時の俺はまだ知らなかった。



 ここは『クレスト・オンライン』の世界だが、全てが同じわけではない。

 俺たちがプレイしていたあの頃からは1000年が経過し、さらに現実へと変化している。

 それが齎すことの本当の意味を、この時の俺はまだ理解しておらず……


 その翌日。

 俺は、を迫られることとなった。



――――――――――――――――――――


 ゼロス・シルフィード

 性別:男性

 年齢:15歳

 紋章:【無の紋章】


 レベル:24

 HP:240/240 MP:45/120

 筋 力:40

 持久力:32

 速 度:40

 知 力:24

 幸 運:24

 ステータスポイント:6


 スキル:【パリィ】Lv.1、【スラッシュ】Lv.1、【マジック・アロー】Lv.1、【索敵】Lv.1


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