第9話 【スラッシュ】
「“鋭き刃よ、我が手に宿れ。ここに真の剣士への道が開かれん”」
【新兵の鍛錬所】と同じように、【剣の紋章】用のキーワードを口にすると
その後も以前と同様に進めていくと、新たなスキルを継承することができた。
『継承を完了しました』
『スキル【スラッシュ】を獲得しました』
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【スラッシュ】Lv.1
・剣のスキル
・MPを消費することで、斬撃を飛ばすことができる。
限られた時間内に魔力を注ぐことにより、会心の斬撃が発生し威力が30%上昇する。
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「よし、これで二つ目だ」
【スラッシュ】。
このスキルもまた、剣を扱う者として重要なスキルであり、剣士が苦手な遠距離戦闘を補ってくれる。
ちなみに会心の斬撃に触れていくと、通常なら【スラッシュ】を発動する際、斬撃が発生する前の1秒間に魔力を注ぎきる必要がある。
これを直前の0.2秒間に圧縮して行うことで、威力を上昇させるという高等テクニックであり、クレオンの上位ランカーの7割近くが活用していた。
しかし逆に言うと、会心の斬撃は上位プレイヤーでも3割以上発動できない者がいるほどの難易度ということ。
失敗すれば発動自体がキャンセルされるということもあり、普段は一般的な斬撃だけを放つというプレイスタイルの者がほとんどだった。
「ま、俺はいつでも会心の斬撃を発動できたけどな」
ちなみに補足として、『クレスト・オンライン』はパーティーでの活動はもちろん、ソロでも楽しめるような仕様になっている。
剣士でありながら遠距離攻撃が可能となるこの【スラッシュ】もまた、それを象徴するスキルの一つだった。
他には魔法職でも、近距離格闘が可能となるスキルが存在したりもするのだが……それは追々集めていくとして。
「ひとまず、これで攻守のスキルが揃ったな」
【パリィ】と【スラッシュ】はどちらも強力かつ、汎用性に富んだスキル。
これらを序盤に習得できたのは大きい。
「それにこの二つがあれば、今後は剣以外の継承スキルがあるダンジョンも攻略しやすくなるだろうし……あとで計画を練り直さないとな」
そう呟いた後、俺は
その声が響いたのは、それから数十分後のことだった。
「うわぁぁぁあああああ!」
少年と思わしき者の叫び声が、迷宮いっぱいに木霊する。
響きからしてかなり近そうだ。
「……一応、様子を見に行くか」
声の様子からして、あまりよくない事態なのは間違いないだろう。
俺は脳内マップも駆使し、声がした場所まで最短距離で向かっていく。
最後の曲がり角を超えると、その光景が視界に飛び込んできた。
「くそっ、あっちにいけ!」
「キィー!」「シュー!」
まず中心にいるのが、盾を持った冒険者が一人。
蜂蜜色の髪と、中性的な容姿が特徴的な(恐らく)少年だ。
そして周囲には、ポイゾネスラビットやキラーマンティスを始めとした魔物が五体もいた。
まず間違いなく、彼は【盾の紋章】持ち。
……なのだが、俺はふと違和感を覚えた。
(まさか、ソロで攻略してるのか……?)
このダンジョンは状態異常を扱う魔物が多く、基本的にソロは推奨されていない。俺ですら前世の知識がなければ避けているだろう。
さらに彼は【盾の紋章】という、これまたソロ攻略には向かない紋章持ちである。
まさに違和感がアリアリの光景だった。
何はともあれ、見るからに状況は悪そうだ。
魔物たちに囲まれ、少年は身動き一つ取れなくなっている。
このままだと成すすべなく魔物たちに殺されるだろう。
(ここから見捨てるのも寝覚めが悪いしな)
本来なら、他の冒険者が戦闘中の魔物を横取りするのはタブーだが、この状況なら文句は言われないはず。
俺は援護に入る覚悟を決めた。
「キィー!」
「だ、誰か、助けてく――!」
魔物の猛攻が一層激しくなる。
少年は目を瞑り救援を求めていた。
ここから駆け寄る時間はないと判断し、俺はその場でショートソードを構える。
そして、
「スラッシュ」
連続でショートソードを振るうと、複数の斬撃が発生し空を駆けていく。
その全てが会心の斬撃であり、魔物たちを一撃で斬り伏せていった。
「……え?」
ゆっくりと目を開けた少年は、目の前で瘴気となって消えていく魔物たちを見て、戸惑ったようにキョロキョロと周囲を見渡す。
その途中、俺に視線が止まった。
俺はそんな彼のもとに歩みを進めながら尋ねる。
「大丈夫か?」
「き、君は……」
少年はまだ混乱しているみたいだった。
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ゼロス・シルフィード
性別:男性
年齢:15歳
紋章:【無の紋章】
レベル:16
HP:160/160 MP:55/80
筋 力:31
持久力:16
速 度:31
知 力:16
幸 運:16
ステータスポイント:0
スキル:【パリィ】Lv.1、【スラッシュ】Lv.1
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