第4話 高速レベルアップ

 俺はレベルアップ後のステータスを見て、前世の知識と齟齬がないことを確かめていた。

 クレオンでは1レベル上がるごとに、HPとMPが合計15、その他のパラメータが合計5上昇するのだが、それはこちらの世界でも同様のようだ。


 ちなみに前衛職ならHPや筋力が上がりやすく、魔法職ならMPや知力が上がりやすい仕様だった。

 その点【無の紋章】は万能型のためか、バランスよく配分されている。


 あとは備考として、HPとMP以外のパラメータに割り振れるステータスポイントが2与えられる。

 これをどう割り振るかはプレイヤーに委ねられており、クレオンの自由度を高めてくれる要因になっていた。


「ひとまず、しばらくは剣をメイン武器に使うつもりだし……筋力と速度に割り振っておくとするか」


 俺は筋力と速度がそれぞれ2から3に上昇したのを確認し、こくりと頷く。


「さあ、この調子でガンガン進んでいこう」



 ◇◆◇



『経験値獲得 レベルが1アップしました』

『ステータスポイントを2獲得しました』


『経験値獲得 レベルが1アップしました』

『ステータスポイントを2獲得しました』


『経験値獲得 レベルが1アップしました』

『ステータスポイントを2獲得――――



 その後も俺は、次々と現れる魔物を斬り伏せていった。

 時には数体に囲まれることもあったが、持ち前の技量により、一度も攻撃を受けることなく最深部にまでたどり着くことができた。


 約2時間後。ボス部屋前に到着した俺のステータスは以下のようになっていた。



――――――――――――――――――――


 ゼロス・シルフィード

 性別:男性

 年齢:15歳

 紋章:【無の紋章】


 レベル:9

 HP:90/90 MP:45/45

 筋 力:17

 持久力:9

 速 度:17

 知 力:9

 幸 運:9

 ステータスポイント:0


 スキル:なし


――――――――――――――――――――



 低レベル帯はレベルアップに必要な経験値が少ないということもあり、ここまではあっという間だった。

 この調子ならあと少しはレベルを上げられそうだったが、俺はあえてここで切り上げることにした。


「そうしないと、からな」


 継承祠グラント・ポイントの出現には、幾つかの条件を満たす必要があることがほとんどだ。

 ここ【新兵の鍛錬所】の場合、レベル一桁でボスに挑むのも条件の一つだった。


「さて、準備は万全。そろそろいくとするか」


 気合を入れた後、俺は大きな扉を開けて中に入る。

 中には大広間が存在しており、ボロボロになった剣や鎧が散らばっている。

 ほの暗い景色も相まって、少し異様な雰囲気が漂っていた。



 キィィィバタン!



 直後、背後の扉が大きな音を立て、ひとりでに閉じていく。


 それと同時に、部屋の奥から一つの人影が姿を現した。

 手には長剣を握り、歴戦の風格を纏っている。


「ステータス」


 唱えると、目の前に情報が現れる。


――――――――――――――――――――


軽鎧けいがい指導騎士しどうきし

 ・討伐推奨レベル:15

 ・ダンジョンボス:【新兵の鍛錬所】

 ・多くの新兵を育て上げた騎士。身軽な動きから繰り出される連撃を、全て躱し切れた者はいないと言われている。


――――――――――――――――――――


 討伐推奨レベルは15。今の俺より6も高い。

 さらにボス級の魔物は特殊なスキルを有していることも多く、レベル以上に厄介なことがほとんどだ。


 しかしそんな状況で、俺はにっと笑みを浮かべた。



「さあ、この世界では初めてのボス戦だ。失望させてくれるなよ」


「……ァァァアアアアア!」



 かくして、ダンジョンボス【軽鎧の指導騎士】との戦闘が始まった。

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