第1話 つかんだのは1%の(un)ラッキー



「ただいまぁ」


 家に帰ってきたけれど、まだ両親は不在だった。


「二人とも今日は仕事で遅くなるんだっけ」


 僕はくつを脱ぐと、一度自分の部屋に行って勉強机の上に天使の石を置いた。それからリュックを下ろして洗面所に行く。


 手を洗うついでに、汗をかいてベトついていた顔もバシャバシャと勢いよく洗った。びしょ濡れの顔をタオルで乱暴にぬぐっていく。ようやく熱さが逃げていくのを感じた。


 台所に行って冷蔵庫の中の麦茶ポットからコップにお茶を注いでグッとひと息で飲むと、僕の部屋からゴロゴロガシャーン! と音がした。


「な、なんだなんだ?」


 僕は慌てて部屋にもどった。


「何が落ちたんだ? って、なにこれ――」


 勉強机から落ちていたのは〈全部〉だった。


 教科書、ペンスタンド、電子辞書、消しゴム、クリップ、絵の具道具のセット、それ以外にも細々といろいろ落ちている。


「いや〈全部〉じゃないぞ……」


 すっからかんになったつくえの上に一つだけ――天使の石だけが置かれている。逆に、天使の石と一緒に置いてあったつくえの上のものが全部落ちていた。


「なんで? 地震とかなかったけど」


 僕は恐る恐る天使の石を手にした。


〈頭がたかーい!〉


「ヒェッ!」


 僕は天使の石を放り投げた。すると石の方から「キャッ」と女の子の悲鳴が聞こえてきた。


「ちょっと! 何するのよ、もう。痛いじゃない!」


 カーペットに転がる天使の石が震えながら訴える。


「まったく。久しぶりの出番だっていうのに、これじゃあ格好がつかないわ!」


 そう言って天使の石から白い光が伸びると、小さな天使の女の子があらわれた。


「それにしても男の子なんて、はじめてだわ。よいしょっと……」


 僕はポカンとその子を見つめる。


 天使? 本物? 


 ……いやいや、デキの良いおもちゃだよな――。


「あんた、そうよ、そこの少年! 私はおもちゃとかそんなものじゃないわよ!」


 女の子は僕の目線まで飛び上がると、胸を張った。背中の天使の羽が優雅にはばたいている。


「私は正真正銘の天使! 天使ナンバー2810-R1K0、通称リコちゃんよ!」


 手のひらサイズの小さな天使は、はばたくたびに光の粉をユラユラと散らしている。それをキレイだと僕は思った。


「ふふん。キレイでしょ? 天使はね、キレイで美しいのよ!」


 ちょっと偉そうなのが気になるけど。


「ちょっとちょっと! 偉そうって言い方、ないんじゃない?」


 僕は憤慨したように反論する。


「キミこそ、いちいち僕の気持ちを読まないでくれよ」


 しかし天使――リコは、かわいらしく頬をプウッと膨らませると「残念だけど、そうはいかないわ」と答えた。


「あんたが私を選んだ。それはつまり、契約なのよ。契約者の思考ぐらい読めて仕方ないでしょ?」

「契約? いつ!」

「だから、あんたが店で私の意思を選んだでしょう? そのときにお互いの〈縁〉が生まれて契約が結ばれたの」


 縁とか契約と言われても、僕には自覚がないしまさか天使の石から本物の天使があらわれるなんて、まったく思っても見なかったんだ。


「でも、あんたは幸運よ? 天使の石から本物を選んだってこと。これはね、つまりあんたの恋が成就したようなものなのよ!」


 僕は目を見開いた。


「そ、それってどういうことなの!」


 リコは胸を張った。そして「ふふん」と自信満々に鼻を鳴らすと、どこからともなく小さな弓矢を取り出した。


「エンジェルアロー。これはね、人と人との縁を結ぶことができる、特殊な弓矢なの。私がこれをあんたとあんたの好きな――宇佐美さん? とを結ぶのに使えば、二人はカップルになるのよ」


 僕の心臓は急にドキンドキンと早鐘を打った。


(まさか、本当に? 恋の天使ってことか? それじゃあ、僕は宇佐美先輩と付き合えるってこと?)


「ちょっと、まだ早合点しないでね? この弓矢が宇佐美先輩って人にちゃんと当たらないと付き合えないのよ。そして、天使が打てるエンジェルアローは一人の人間との契約で一回だけ。その意味、分かる?」


 僕はしばらく口を閉じて考えた。


 リコと言う天使と契約して、一回しかエンジェルアローという矢は射ることができない。つまりその矢がハズレてしまえば……。


「リコが矢をハズしたらカップルにはなれない?」

「少なくとも、私の力で付き合う、ということはできなくなっちゃうわね」

「それは困るよ! 僕はどうしても宇佐美先輩と付き合いたいんだ」


 リコは僕の不安をよそに、どこか楽観的に笑っている。


「大丈夫よ。二人っきりにでもなってくれれば、当たるはずだから」

「そ、そう。それならなんとかなると思う」


 そう言ってから僕は明日、委員会の終わりに宇佐美先輩を呼び止めて教室に二人っきりになるとリコに話した。


「そう。それなら大丈夫そうね。でも、忘れないでほしいの」

「なにを?」


 リコは少し顔を赤らめて恥ずかしそうに言った。


「私、百発一中のリコって言われているの。本番には強いと思うけどね」




 翌日の放課後、委員会の集まりで図書委員は一年一組の教室に集まっていた。


 僕はてっきり夏休みに集まりはないと思っていたけれど、急きょ図書室の在書整理で三日ほど集まることになってしまった。


 僕は習い事がないし帰宅部だから三日とも参加できると伝えた。


 半数以上の生徒が部活や習い事、旅行や帰省などで一日でも参加できるかどうかという中、宇佐美先輩も三日とも参加できると答えたときは、内心で力強いガッツポーズをかかげた。


「宇佐美さん、部活は? サッカー部は活動あるんじゃないの?」


 三年生が(余計なことを)尋ねた。


 僕はチラチラと宇佐美先輩の方をうかがっていると、「そうなんですけど、しょせんマネージャーですし。他にもマネさんいるから、私一人抜けても平気なんです」と答えていた。


(いやいや。宇佐美先輩がいるのといないのとではやる気に差が出ると思います……。僕としてはうれしいけど!)


 僕は小躍りしだしたい気持ちを抑えながら、三年生から話される夏休みの活動についての仔細をメモに取った。


「はい、じゃあ終わります。お疲れさまでした」


 三年生の号令で、一気に図書委員のみんなは立ち上がって駆けだした。


 もう部活がはじまっている時間だから、みんな急いでいるんだろう。


 そんな中、宇佐美先輩はのんびりとマイペースに筆記用具をカバンに仕舞ったりして残っていた。


 黒板の前に一人、チョークを使った場所を消している三年生がいるけれど、その人と宇佐美先輩、どっちが早いだろうか――ああ、宇佐美先輩が先に帰りそうだ。


「あの、宇佐美先輩」

「猪野くん、どうした?」

「えっと……」


 黒板の方をチラリと見る。するとその三年生も黒板消しを置いてさっさと教室を出て行ってしまった。


 やった、これで宇佐美先輩と二人っきりだ――。


「夏休み、仕事が入るとは思わなかったですね」

「そうね。でも図書室に入れるなら私はうれしいけど」


 宇佐美先輩はスクールカバンを肩に掛けながら僕の方を見た。


(帰っちゃう……急がなきゃ!)


 僕は右手をスラックスのポケットにつっこんで、中の天使の石をにぎった。これがリコと決めた合図だった。


「じゃーん、登場! さあ、行くわよ」


 僕の右肩のあたりにリコがあらわれた。


 もちろん、契約者の僕以外――つまり宇佐美先輩には彼女が見えないハズだ。


 その通りで、何の変化にも気づいていない宇佐美先輩は笑顔で手を振った。


「じゃあ、私部活だから――」

「待って」


 僕はなんとか宇佐美先輩を呼び止めようと右手をのばした。

 同時に、リコが弓を勢いよく引いた。


「狙いを定めてー、えいっ!」


 コロン――。


 リコの合図と同時に、僕の右手から、天使の石が落ちて転がってしまった。そこからスローモーションだった。


 僕の手から何かが落ちたのに気づいた宇佐美先輩が「あら?」と言ってそれを拾おうとかがんだ。


「委員会終わりました? 入りますね」


 一年一組の教室の、開いたままのとびらから根津が入ってくるのが見えた。僕は

「いや、今はダメ」と一歩前に出たけど――。

「あ、ヤバ……」


 リコがつぶやくのが聞こえた。


 僕も(ダメだ)と思った。


 小さな光の矢がまっすぐに宇佐美先輩が立っていたところを抜けて、根津の胸元に飛んでいく。


 その一秒にも満たない時間は、僕を幸福の絶頂一歩手前から、絶望の淵へと突き落とすのに十分だった……。


「キレイな石ね。猪野くんはこういうの、好きなのかな? はい」


 宇佐美先輩は僕の右手に透き通る透明の石を置くと、何事もなかったかのように教室を出て行ってしまった。


 教室には僕と根津が立っていた。


 根津は胸を押さえて息を整えている。


 僕は平然を装って声を掛けた。


「えっと、根津?」

「ひっ、い、猪野――」


 途端に根津は顔を真っ赤にして教室を出て行ってしまった。


「ま、マジかよ……」


 僕はふり返ってリコを見た。


 リコはそっと視線を反らす。


「もしかして、もしかする?」


 僕がしずかにゆっくりと尋ねると、リコは小さく「うん」とうなずいた。


 手のひらの石を見れば、黄色とピンクのマーブル模様がなくなり、水晶のような石になっている。


 つまり、石の効果があらわれていることなのだろう、と僕は直感で悟った。


「どうしよう」

「どうしましょうね」


 僕とリコは顔を見合わせる。するとリコはまた僕から顔を反らした。




 僕はリコに問い詰めたけど、リコも「どうしたら良いかわからない」と頼りない答えで、仕方なく昨日の石屋さんに行ってみようと思い立った。


 あの店の店主である怪しいおじさんになら、何かアドバイスをもらえるんじゃないかと思ったんだ。


 が。


〈店主の都合により、しばらく臨時休業とさせてもらいます〉


 ――と書かれた貼り紙が、降りたシャッターに貼ってあった。


「ウソだろ……」


 僕は店の前にしゃがみ込んだ。


 教室での根津の反応を見る限り、僕の矢は確実に根津を射てしまった。ということは、だ。根津は僕のことを――。


「いやいやいや、アリエナイ。信じられない!」

「そうは言っても、ねえ。矢の効力は最強だから」


 リコはどこか他人事のように言う。


 僕はキッと睨みつけた。


「どうしてくれるんだ。僕は宇佐美先輩と付き合えないどころか、好きでもない女子とくっつかないといけなくなるんだぞ」

「そんな言い方しなくてもいいじゃない」


 リコは頬を膨らませて不満そうだ。だが、不満なのは僕も同じだ。


「こうなったら、善次郎に相談するしかないか……」


 僕がシャッターを背に腰かけてつぶやくと、リコが慌てて「そ、それはダメよ!」と詰め寄った。


「天使のことは他言無用。昨日だってそう言ったじゃない!」

「だけど、こうなったのは誰のせい?」


 リコは「ぐぐっ」と唸った。


「で、でもでも! もしね、他の人に話しちゃったら、ルール違反で何が起こるか分かんないんだよ!」

「何がって、なんだよ」

「たとえば……天使の矢が無効になるとか?」


 頭をひねりながらリコがそう言う。


 僕は「なんだよ! そんな方法があるのか!」と叫んだ。


「それならなおさら、善次郎に話した方が良いじゃないか。それでリコの失敗が無効になれば、僕もうれしい」


 リコはしばらく黙った末「なるほど、そうね。たしかにそういうのも手なのかも」とうなずいた。


 僕はさっそくカバンからスマホを取り出すと善次郎に連絡を取った。


〈どうした? 告白は上手くいったのか?〉


 開口そうそう、善次郎はそう言った。


 僕は小さくため息をつきながら「そのことで話があるんだ」と話す。


 善次郎は「ほおー、なんかあったのか?」と今ひとつピンと来ていないようすで応答した。


〈今、家なんだけど。そっちの家に行こうか?〉


「うん。僕の家に来てくれる?」


〈オッケー。すぐ向かう〉


「僕も……まだ下校途中だけど、すぐに帰るから」


 電話を切ると、僕は立ち上がった。


「じゃ、リコ。行くよ」

「はいはーい」


 リコはフワフワと飛びながら僕のあとを追う。


 鼻歌交じりの彼女からは反省とかやってしまった! という気持ちは感じられなかった。


 代わりに僕が盛大なため息をつくと、駆けだした。




 今日も僕の両親は仕事で帰りが遅くなるらしい。


 帰宅してすぐに顔と手を洗って、麦茶を二つのコップに注いだ。するとすぐにインターホンが鳴って善次郎が訪ねてきた。


「よ。元気そうじゃん」


 善次郎はビニール袋をかかげて笑った。中にはポテトチップスとジャムパンが入っていた。


「残念会するつもりで来たのに」

「残念会って、なんだよそれ」


 僕はギロッとにらみつけるが、善次郎は飄々としたままリビングのソファにどっかり座った。


「もしかして、宇佐美先輩に告白できなかったのか?」

「まあ、そういうことなんだけど……」


 善次郎は袋からジャムパンを出すと、かじりながら僕を見下ろした。


「なんだよ。意気地なし」

「うるさい! それどころじゃないんだって……とりあえず聞いてくれ」


 僕もソファに座ると、ポケットから天使の石を取り出した。


「あ、それってもしかして」

「うん。天使の石」

「へえ。なんかガラス玉みたいだな」


 透明になった天使の石はたしかにガラス玉のようだ。


 でも。


「実は、昨日買った時は、黄色とピンクのまだら模様だったんだ。もっと白っぽかったし……」

「は?」


 善次郎は僕の手から石を受け取ると、天井の照明に透かしてみた。


「色が抜けたのか? でもそういうことってあるもんなのか?」

「実は……」


 僕はさっきから横で黙って飛んでいたリコを見た。やっぱり善次郎にもリコのすがたは見えていないらしい。


「……天使の石って、百個に一個、本物の天使がいるんだって」

「へえ。で?」

「その一個に当たって。天使があらわれたんだ」


 そう言って僕は右肩のあたりを指さした。けれど善次郎はきょとんとしてしまっている。


 そりゃそうだろうな。


 僕だって姿が見えなければ天使なんて存在しないって言いきっていただろう。


「ウソだと思うだろう? でも、本当に今、ここにいるんだ」

「待て待て。天使の石に天使がいる? おまえにはその天使が視えているってこと?」

「うん」

「わかった。明日、学校休んで病院に行け」


 善次郎はジャムパンを食べることさえ忘れて僕の両肩を掴んだ。


「いいか? 天使なんて妖精とか魔法使いと一緒で、存在しないんだ」

「善次郎、それが存在するんだよ」

「信じられない。もしかしてヘンなもんでも食ったか?」


 善次郎はまったく信じようとしないで僕の周囲をキョロキョロと見回した。僕は小さくため息をつく。


「ウソだと思っても良い。とりあえず話の続きを聞いてくれないか?」

「あ、ああ」


 僕は善次郎から天使の石を受け取ると、今日の放課後に起きたことを事細かく話して聞かせた。


「宇佐美先輩を呼び止めたんだ。それで二人っきりになった。リコは――天使の名前なんだけど、僕が結ばれたいって思う相手に天使の矢を射るんだ。そうして矢が当たったらその人と付き合えるんだ。だから二人っきりになって矢を射った」

「天使の矢? 赤い糸とかそういう話?」

「うん。でも――」

「外したのか?」


 僕は「その方が良かったよ」とうなだれた。


「どういうことだ? 天使の矢が宇佐美先輩に当たらなかったのか?」

「そう」

「じゃあ、幸喜は誰とも結ばれず、ってこと?」

「それが……当たったんだ」

「だれに?」


 ひと呼吸おいてから僕は答えた。


「……根津……」


 善次郎は固まった。


 その顔は今にも笑いだしそうで、でも笑ったら失礼だと葛藤しているような顔だった。でも明らかに笑いたそうだ。


「笑いたきゃ笑えばい……」

「ぎゃはははははははははははっはははは」

「って! 笑いすぎだ!」


 ソファから転がり落ちた善次郎はお腹を抱えて笑っている。


「な、なんてこった! 根津が! 幸喜と! うひゃひゃひゃ」


 僕は善次郎を見下ろしながら、ポテトチップスの袋を開けてひたすらにムシャムシャと食べ始めた。


「で? 天使の矢が当たって、どうなった?」

「…………」


 答えたくないなあ、と思った。答えたら善次郎がまたお腹を抱えて笑い転げてしまうだろうから。


 でも、この件を一人で抱えることもできない……と僕はまさに〈背に腹は代えられぬ〉と苦渋の思いで答えた。


「真っ赤になって教室を出てったよ」

「うわっははははははははっははははははっ」


 やっぱり善次郎は笑い転げた。


「はあはあ……お腹が痛い。ジャムパンも食べられない」

「それはよっぽどだな」


 黙々とポテトチップスを食べる。


 無心に食べるようすに、さすがの善次郎も目尻の涙を拭って「幸喜、ごめんって」と謝った。


「でも、そんなこと俺に話しちゃってよかったの? 天使とかそういうの含めて」

「そこなんだよ」


 僕はポテトチップスの袋を善次郎にすすめながら話した。


「リコが言うには、他言すれば矢の効果がなくなるはずだ、って」

「やっぱり、そういう感じ? で、俺に話したことで根津に当たった矢の効力がなくなったら御の字だな」

「そういうこと」


 また小さなため息が僕の口からもれた。


「明日、根津と会ってどうかだよなぁ」

「どうなることかねえ」


 善次郎も首をすくめてジャムパンをほおばった。


「それより、どうすんの」

「だから、明日。根津に会って……」

「じゃなくて。宇佐美先輩の方だよ」

「え?」


 そう言って善次郎はジャムパンを一気に飲みこんだ。


「結局、告白してないんだろ?」

「あ、うん」

「で、天使の矢は使い切ったってことで良いんだよな?」

「そう」


 僕はガラス玉のように色の失われた天使の石をかかげてうなずいた。


「じゃあ、どうすんだよ。自力で告白? うまくいくの?」

「……そっちの方も考えないといけないんだよぉ」


 頭を抱える僕を、善次郎はポテトチップスを食べながら見守る。


「まずは根津の方が先か。このまま根津と付き合うことになったら、宇佐美先輩とはどっちみち付き合えないだろ?」

「おいおい、怖いこと言うなよ!」


 根津と付き合う?


 そんなの、考えられない。


 宇佐美先輩と付き合えない?


 そんなの、考えたくない!


 僕は頭を掻きむしりながら「どうすれば……どうしたら……」としばらく唸っていた。



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