30 高嶺の花だったあなた
春休みが終わり、新学期が始まった。
「あおってどこの大学いくの?」
「それ前言ってなかったけ?ソフィアさんと同じところだよ」
「そうだっけ」
「寂しい?」
「いや、会おうとしたらいつでも会えるし…」
「羽川にも会えるよ」
「…気まずくない?」
「そうやって気まずいとか言ってウジウジしてるから余計気まずくなるんだろ」
「…確かに。」
あたしは、なな…いや羽川さんのことが嫌いでもなくて好きでもない。言い方は悪くなっちゃうけど、なんだか不思議な人間だなって初めて出会った時から思っていた。誰にもなさそうなところを全て補ってる人間。ちょっと羨ましかった。
そんな彼女があたしのことを好きだなんて、信じられなかった。中学からずうっと同じクラスで、生徒会で書記を務めていて、誰よりも頭が良くて賢くてみんなの高嶺の花だった。
そんな彼女を自ら中退するようなことをさせたきっかけはあたしだった。あたしのせいだった。
あたしがあのとき、あんなことを言わなきゃ、今だって彼女は、椎名華川学園高校の全校生徒の中で一番頭が良くて賢い人間としていてただろうに。
ただ、それだけがあたしの後悔。
彼女の経歴に傷をつけてしまったこと。彼女を避けたり傷つけるようなことを言ってしまったこと。いつか彼女に真正面で謝罪をできる日がきたらいいのに。
「…顔暗いけどなんかあったん?」
「いや、…なんでもないや」
「どーせ羽川となんかあって後悔してるんでしょ
そんな後悔しなくても大丈夫だよ。学校を中退したのは羽川の意思。りりあが無理やり中退させたわけじゃないし。」
「…」
「そんな後悔してんなら羽川と会ってきたらいいのに」
「いやでもさ」
「はぁ、もういいや。ついてきて」
「…え?」
あおがわたしの手を握り、早歩きをする。
あおの手は冷たい。ことりさんの手はしぬほど温かったのに。やっぱり、人によって手の温度って違うんだろうな。
_________歩き続けて5分後
「ここ」
「…ここって」
「うん。羽川の家やな。」
「なんで知ってるの?」
「感覚的に?」
「意味わかんないし…」
「意味がわからなくてよろしゅう!
さっさといくぞ」
「ピンポーン」
インターホンを鳴らす。
扉が開かれる。扉の隙間から髪がストレートで綺麗な女の人の姿が見える。
「尾場瀬?」
「久しぶりやな、羽川」
「なんでりりあもここに?」
「あ…えっとなんかごめんなさい」
「謝らないでくれるかな、りりあは何も悪いことしてないでしょ?」
「でも、あたしが酷いこと言っちゃってななのことを傷つけちゃったし中退させちゃったし…」
ななはあたしをみて微笑んだ。
なんで、そんなにわらうの?あたしがあなたの人生を崩壊させちゃったのに。
「まだそんなこと気にしてたんだ」
「だって…」
「りりあは何も悪いことしてない。多分、尾場瀬も言ってただろうけど、全て私の意思だから。
というか、高校中退して通信に変えただけだし、そんな重く考えなくていいよ。むしろ、高校にいてた時より少し楽しいかもしんない…。」
「そっか」
「ほらな、言っただろ?」
「あおの言う通りだったよ。ありがとう。」
「そういえば、小鳥遊さんとカフェで待ち合わせする約束あるんじゃなかったけ〜?」
「…忘れてた」
「私達のことはほっといてさ、行ってきておいで。りりあ」
「うん」
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