18 ことりさんとクリスマスデート

ななは昨日、高校を退学した。

退学というか、転入と言った方が良いのかな。

私があの時、彼女に何かを言えたら、

高校をやめてなかったのだろうか。

そもそも、彼女はあたしから

遠くへ離れる運命だったのかもしれない。

昨日、言われたことがずっと心の隅にある。

やっぱり恋って、人を狂わすものなのかな。

恋は盲目っていうし…

一方的な想いは必ず報われるとは限らない。

つまり、あたしのことりさんへの片思いも

叶うとは限らない…

ああ、急に現実味が帯びてきた。


やめよう、こんな気持ちになるのは。

今日はことりさんと出かけるんだし。

こんな気持ちで出かけても、

ことりさんを不快な気持ちにさせるだけ。


あたしは気持ちを整え、靴を履き、扉を開ける。

今日こそはことりさんに告白しなければ。

ずっと躊躇っていてはダメだ。

あの子の想いを踏み躙りたくない。


熱狂的な想いを抱きつつ、

待ち合わせ場所に向かった。

「ことりさん、待たせちゃいましたか?」

「全然待ってないよ、行こう〜!」

ことりさんはニコニコしながら手を振った。

あたしは、やっぱりこの人の笑顔が好きだ。


「ことりさん、どこに向かうの?」

「綺麗なところ」

ことりさんが指を指しながら言った。

指を指した場所は真正面にあったものだった。

それは、沢山イルミネーションがある所だった。


雪が降りはじめ、

イルミネーションがもっと美しく見える。

黄色のLED電球が周りで光っている。

ロマンチックで幻想的だった。


ことりさんはあたしをずっと見つめる。

イルミネーションの光に照らされたことりさんが誰よりも、いや、世界一秀麗だった。

「…綺麗」


「りりあちゃん」

ことりさんはあたしの名前を呼ぶ。


「私、りりあちゃんが好きだよ」

ことりさんから死ぬほど聞きたかった言葉。

けど、ことりさんがあたしを好きだなんて

あり得ない。


「…それは恋愛的に?」

「恋愛的にりりあちゃんが好きだよ」

ことりさんは微笑む。

これは本当なんだ…


「あ、」

「落ち着いて」

「あたしも、」

緊張して、上手く話せない。体が熱い。

「あたしも、ことりさんが好き」

やっと言えた言葉。










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