17 羽川ななの失恋

side 羽川なな


あの人達と図書館を出た。


「羽ちゃんって何で帰るの?」

ソフィアさんは私に質問をした。

逆に、この人達は何で帰るんでしょうか。

徒歩?自転車?電車?タクシー?

そんなの全く考えられませんわ。


「リムジンですわ」

「私達も乗せて〜!羽ちゃん!!」

「図々しいですわね」

「ソフィア、いつもこんなのなんだよね。

ごめんね、羽川さん」

小鳥遊さんが申し訳なさそうに言った。

圧倒的に悪いのは、ソフィアさんなのに。

「こんなのってなんよ〜!」

「こんなのとはこんなのだと思われますわ」

「意味わかんないよ〜〜!」

ソフィアさんはまた叫んだ。

…やっぱり、七海北城高校の生徒ってやばいヤツしかいないんですの?


なんて考えていると、

駅に向かって歩いているあの子を見つけた。

私だけが瞬時に見つけたみたいだ。

こんな人達なんかどうでもいいから、

私はりりのところに向かって必死に走った。

「ちょ、どこにいくの〜?羽ちゃん!」

「そ、ソフィア!りりあちゃんが…」

後ろから、薄らとあの人達の声が聞こえる。

そんなことはどうでも良い。

私は、あの子に伝えなきゃいけないことがたくさんあるんだ。


「りり!」

「え?なな?

それと、ことりさん?」

りりが私の名前を呼ぶ。

どうやら、小鳥遊さんもついてきたようだ。

「りりあちゃん!お久しぶり!」

「お久しぶり!ことりさん!

りりが緊張しながら言った。

小鳥遊さんを愛おしそうに見つめている。

ああ、あの視線が羨ましい。

叶うはずないけど、私に向けてほしかった。


「いきなり走ってどうしたの〜?羽ちゃん!

わたしビックリしたんだからね〜!」

ソフィアさんが息遣い荒く言った。

「ソフィアさんもお久しぶりです」

「りりあちゃん!久しぶり」

りりがニコニコしながら言った。


「というか、なんでなながここに?

いつも電車とか使わないじゃん」

「あのね、りり。

二人で話したいことあるから

リムジン乗ってかない?」

「いや…でも」

りりが小鳥遊さんを見つめ、気まずそうにする。


私は、りりが小鳥遊さんを好きだと知っている。

でも、あの二人に繋がってほしくない。

そんなことを思ってはいけないとわかってる。

わかってるけど、やめれない。

私はりりが好きだから。


「最後の一生のお願い」

「ほんとにこの最後だけだよ」

りりが冷たく言い放った。

私は、あの二人の恋を邪魔してるんだ。

もうこれだけを伝えて、

私とりりの長年の関係も終わりだ。


「りりあちゃん、またね」

「はい!ことりさん!」

りりが元気よく言った。

私達はリムジンに乗り、椅子に座る。


「りり」

「なな」

「邪魔してごめん」

「…全然いいよ。それより、最後ってなぁに?」

りりが寂しそうな顔で言った。

こんなにも寂しそうにさせたのは私なんだ。

わたしがいなけりゃ、りりは今頃小鳥遊さんとわちゃわちゃ話してたのかなぁ。

「これから言うことに何も言わないで」

「うん」

「私はね、りりが好きだったの。小さい頃から。

けど、恋愛に一切興味ないりりが小鳥遊さんに一目惚れしたって言ったからさ、この恋を諦めようとしたんだ。けど、できなかった。

さっきみたいに、また無駄な嫉妬心で邪魔しちゃうだろうし、私は思ったんだ。

これで、りりと関わるのは最後にしようって」

「待って」

「好きだったよ、りり。」


私がそう言った瞬間、りりの家に着いた。

「ほら、早く帰らないと」

私がドアを開けようとすると、

りりはその手を止めた。

「邪魔なんかしてないよ、ななは。」

「さっきしてたじゃん。」

「してないよ、ななは自身の欲望に従っただけ。

決して、それは悪いことでも良いことでもない。」

「私にとっては、悪いことだと思ってるんだよ。

りりは小鳥遊さんが好きなのに、一緒にいられる時間を私が邪魔しちゃったんだ。

だから、もうこんなことやめちゃいたいの。

りりを想うことも。

そばにいればいるほど気持ちが高ぶるの。

尾場瀬みたいに、

友達としていられたらよかったのに。」


私はりりから視線を外しながら言った。

未だに、こうやって、りりと言い争う時間も

全てが愛おしく感じてしまう。

この恋は絶対に報われないのになぁ。

「…」

りりは無言になる。

私に呆れちゃったのかな。

「…もう会わないようにするから、

そんなに気にしないで。

今までありがとう。りり。」

私は全体重をかけてドアを開け、

りりを優しく車から追い出す。


「最後まで、ごめんね」









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