06 ことりさんのお友達?

あたしは、見てしまったんだ。

ことりさんがあたし以外の女の子に抱きつかれているところを。

別に、付き合ってる訳じゃないし、抱きついたことないし、ことりさんにとってあたしはただの常連さんだ。

でも、何故か心がむずむずする。

初めての感覚で戸惑ってしまう。

これが嫉妬というものなんだろうか?

分からない。


だから、このむずむずを解消するために

メイドに相談した。


「どうしたら、このむずむずを解消できるのかしら?」

『そうですね、それは小鳥遊さんに直接聞くべきだと思われます』

「なぜかしら?」

『小鳥遊さんに聞くことで、その悩みが全てなくなると私は思うんです。

しかも、その女の方を知れて一石二鳥ですよ。

ライバルは倒していきましょう。お嬢様。』

「そ、そうね!ライバルは張っ倒すべきね!

明日、ことりさんが電車に乗ってくる時間帯に電車に乗って話しかけてくる!」

『はい!頑張ってください!誰よりもずっと応援しています!お嬢様!』 


翌日、あたしはことりさんが電車に乗る時間帯に電車に乗り、ことりさんがいつも座る位置に近くに座った。

そうすれば、ことりさんは自然とあたしに話しかけてくれるだろう。

というか、話しかけようと思っているんですの。


「次は、黃波根駅〜黃波根駅です。」

運転士が言う。

黃波根駅きなみねえきは、ことりさんがいつもこの電車に乗ってくる駅だ。

あたしは、ことりさんがこの電車に乗っている姿を複数回、いや死ぬほどみている。

なんて心のなかで思っていると、なんだか眠たくなってきたの。

少し寝よう、どうせすぐ起きますし。




ここは、海?

あれ、さっきまで電車に乗っていたはずなんだけど。

あ、あの後ろ姿はことりさんだ!!

ことりさんも海に来てたんだ。

「ことりさんっ〜〜!!」

『りりあちゃん。久しぶりだね。』

「こんなところで会うなんて、運命ですね!!」

『そうだね〜私達運命だね』

「その服、どこに売ってるんですか!!」

『えへ、秘密。

これから話す、私の話をちゃんと聞いてくれたら教えてあげる』

「あたしは、ことりさんの話をいつもちゃんと聞いてますよ?」

『うん、りりあちゃんは私のことで頭がいっぱいで、私の顔を見ただけで顔を赤くして照れちゃうし、私のことを全部知ってるみたいだし、りりあちゃんが私の話をちゃんと全て聞いて覚えている子なのは知ってるよっ』

「じゃあ、なんでですか?」

『本当にちゃんと聞いて欲しい話だから』

「わかりました」

『私ね、りりあちゃんのことが………』


あ〜〜なんですか、ことりさん!!

って、これは夢だったの?

じゃあ、さっきの全部??


あたしは、夢から醒めて少し混乱していた。

だけど、あたしにはそんな暇もないのだ。

ことりさんに、あの女の話を聞かなければいけないのだ。

なんて、考えていると目の前にことりさんとこの前抱きついていた女が横に座っていた。

あたしは、躊躇いそうになったが、

緊張感も羞恥心も捨ててことりさんに話しかけた。


「ことりさん!」

『ああ、ことりちゃん。おはよ。

目の周りに目やにたくさんついてるよ。』

「ええっ」

『ふふ、目閉じて。

ティッシュで綺麗にとってあげる』

ことりさんがあたしの目の周りについている目やにをティッシュでとろうとした瞬間、隣にいる女が私に話しかけた。

「あなたが、井堂りりあちゃん?」

「あ、はい。そうです。

あなたはどちら様でしょうか?」

「みずきからよくりりあちゃんの話を聞いててね〜!

あ、私はみずきの長年の友達。

日野ソフィア。お母さんがアメリカ出身でお父さんが日本出身なんだよね〜!」

「め、珍しいですね…」

「あはは、でしょでしょ〜!!

よく珍しいって言われるのよ。」

「あの、ことりさんに抱きついてたのって…」

「あ〜見てたんだね。

あれは挨拶だと自分では思ってるんだけど、日本では違うみたいでね〜!」

『こらこら、りりあちゃんが混乱してるでしょ。

そんなに関わらない!』

「なに?嫉妬でもしてるの?みずき」

『嫉妬なんか…………』

「りりあちゃん可愛いからな〜!

好きになる気持ちも分かるよ」

『いや、そういうのじゃなくて………』 

「ん?好きなんでしょ?」

『…なんて言うんだろう、この気持ちは』


あたしを置いて、二人はまた話し始める。

ことりさんはまだ、あたしのことが恋愛的に好きではないみたいだ。

でも、まだチャンスはある。

ことりさんが誰かと付き合わない限り。


なんて考えていると、あたしがいつも降りる駅がきた。

何も言わず、音を立てずに、ことりさんと日野ソフィアさんの目の前から離れ、電車から出た。


複雑な気持ちだ。

きっと、これを嫉妬と言うんだろうな。


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