第3話 元厚生労働事務次官 村木厚子さんの見た真実

拘置所における取り調べを通じ「検察官とは(私と同じ)公務員なんだ。」という事実を見た。

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  この一言に、彼女の怒りや悲しみが込められている、と私平栗雅人は思いました。


そして、村木厚子さんという非常に優秀な知性・優れた理性・豊かな感性の持ち主が、半年間の拘置所生活という、極限まで制約を受けた厳しい環境の中で至った、この悟りのような一言から、以下のような「公務員の真実」を私は見たのです。

○ 「すまじきものは宮仕え」 → 公務員とは「非コギト・エルゴ・スム」

民間人のように、自分の頭で考え、自分の意志で行動し、自分自身でその責任を取るという世界ではない。

腹を空かした野良犬が、目の前に投げられた骨にむしゃぶりつくのと同じく、上からの指示には絶対服従、どこまで上からの指示を全うしたかが評価の対象になるのであって、個人の理性・努力による達成感や、第三者の視点、更には神様が見てどう思うか、なんてことは一切気にしない。自分たちのいる公務員世界における価値観と論理・倫理のみで完結できる。

「障害者郵便制度悪用事件をでっち上げ、世間を騒がせろ」という指示を与えられれば、世界で最も優秀な公務員たちは、全知全能を振り絞り、彼らの手前勝手なストーリーを立て、無心の境地で実行する。

 → https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%9A%9C%E5%AE%B3%E8%80%85%E9%83%B5%E4%BE%BF%E5%88%B6%E5%BA%A6%E6%82%AA%E7%94%A8%E4%BA%8B%E4%BB%B6


拘留中、取り調べの席で検察官が村木厚子さんに告げた「僕の仕事は、あなたの供述を変えさせること」という言葉に、彼らの不条理性が表現されています(パーソナリティー和田明日香さんは「そんな、自分で勝手に調書を作り、はじめから結論ありき、みたいな人とは話したくないですよね。」という言葉で、村木厚子さんの示した検察官の真実に対して共感されていました。)

○ 公務員だからこそ、冤罪なんていう何ら生産的でない戦い方がまかり通る。

  民間企業では、他人や他社との対抗に於いて、相手よりも優れたものを作ろう・サービスを提供しようと努力する。

これが本来の切磋琢磨であり、競争であり、実利のある創造的な戦いというものなのですが、公務員の世界では、全くの非生産的行為が許される。

  それ以上に、相手の足を引っ張る・時間と労力の浪費・無駄さえもが許される。

  公然と公費を使いまくって人の嫌がることを行い、これを以て公務である、と給料をもらい、残業手当をはじめとする各種手当をもらい、出世し・栄転し・栄耀栄達の道を歩むことができる。このパラドックス(一般に通用している説や真理と認められる事柄に反する説。「貧しき者は幸いである」の類)こそが、公務員という異常な世界の根本原理となっている。

 障害者郵便制度悪用事件では、検事たちの悪行が明らかになり、逆に彼らが逮捕されるという結果になりました。

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%9A%9C%E5%AE%B3%E8%80%85%E9%83%B5%E4%BE%BF%E5%88%B6%E5%BA%A6%E6%82%AA%E7%94%A8%E4%BA%8B%E4%BB%B6

「人の迷惑かえりみず」とにかく「公務」という錦(にしき)の旗の下、その結果に対して一切の責任を負う必要も義務もない。これが公務員のモラルハザード。公務員は公務である以上、何をやっても個人的な責任を問われないという安心から、常識的にとんでもないことを平然と行う。

モラル‐ハザード【moral hazard】

①保険契約で、補償を手厚くすることで被保険者の危険意識が低下し、事故等のリスクがかえって高まること。

②経済学で、委託者が受託者の行動に関する情報を持たないために、受託者の行動に努力の低下等の歪みが生じ、資源の効率的配分が妨げられること。

③俗に、企業などが倫理性の欠如のため不正な利益追求に走ること。

小林多喜二を警察署内で殺した警察官は、その後、東京は板橋市の市長になりました。 → ウイッキペディア

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%B0%8F%E6%9E%97%E5%A4%9A%E5%96%9C%E4%BA%8C

これが公務員というモラルハザードの世界。

小林多喜二:

  小説家。秋田県生れ。小樽高商卒。プロレタリア文学の中心的存在。官憲の拷問によって虐殺された。作「蟹工船」「不在地主」「工場細胞」「党生活者」など。(1903~1933) 広辞苑 第七版 (C)2018 株式会社岩波書店)


  大切なことは、警察や検察にとっては、事件が事件として終結しようが、冤罪事件として社会に糾弾されようが、とにかく、「国家に逆らうと当人ばかりか親兄弟、妻や子供まで不幸になるぞ」という脅しが目的、ということです。

  冤罪事件として釈放されても、警察や検察のトップ・幹部は何の痛痒も感じない。かれらにとっては、自分たちの「恐怖という存在感」を世間に知らしめることが目的なのですから。


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