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平日の放課後は、私の部屋かシオリの部屋のどちらかで過ごすのが日課だった。セーラー服に身を包む私と対照的に、シオリはブラウスに、緩めたネクタイ姿だ。幼稚園から一緒の私たちは、高校も一緒のとこに行こうね……と言っていたのだけど、シオリだけ受験に落ちてしまった。今はだいたいの場合、列車通学の私をシオリが駅まで迎えに来てくれている。たかが通う高校が別々になったからと言って、そのことが私たちが疎遠になる理由にはならなかった。
それだけ深く、長い時間を二人で過ごしてきたということの表れだろう。私はそれほど友達が多いわけじゃないから、素直に嬉しく感じている。
猫のようにじゃれあう私たちをテーブルの上で見つめる、色とりどりの琥珀糖たちに目が留まった。食べる宝石、という通り名は伊達じゃない。写真を撮るためだけに、食べきれないものをオーダーするほど馬鹿になった覚えはないけど、確かにこんなに可愛ければ写真に残したくなるのも頷ける。
部屋に上がらせてもらい、しばらく待っていたらシオリが持ってきたのが、あの琥珀糖。めっちゃ可愛いからティックトックに載せたんよ、と騒いでいた。
琥珀糖は、その一粒一粒がリゾート地の海みたいなうつくしい色をしているのに、表面は擦りガラスみたいにざらめいていて、中まで見透かすことはできない。初めて口にしたときは、見た目よりもシャリシャリした食感に驚いてしまった。
それでも私は平静を装い、上下の歯で粉々に、丹念に噛み砕いた。琥珀糖を……というより、もはや思い出したくもない記憶たちに対してそうするように、憎しみと忌々しさも込めて。
やがて、イチコすっごい力込めて噛むやん、と私を見てゲラゲラ笑い出したシオリに言ってやったのが、冒頭の台詞というわけである。
私が透き通っていない濁った琥珀糖だとすれば、シオリはいつも、まるで本物の宝石みたいに美しい子だ。周りからあてられた光をきらきらと反射させるという、自分自身がより輝く
なんて。
「――あたしはイチコとなら、地獄に堕ちてもいいよ」
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